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海を知りたい

わたしにとっての海は一体なんだろう。


ほんとうに、少し触れたくらいだけど、
わたしは海を知っている。

押し寄せるその波は、ブランコやシーソーのように
すぐには止められない、力学的なものだ。

ましてやわたしの力などでは遠く及ばず、
とまって!と思っても、
波はくるだけ。

それが面白かった。

まるでにんげんみたいだった。

ただ、わたしはかなりの人見知りで、
いつも海に行くときは、遠くから眺めるか、
指一本、触れるだけ。

その波の温度に。

わたしとは違って、
冷たくて、
得体が知れなくて、

とても興味がわいたけれど、
一人だけはしゃぐのも変だなと、
いつも遠慮する。

ほんとうは、
もっと触れてみたかったし、
とおくまで泳いでみたかったし、
海水のなか、もぐり、めをひらいてみたかったの。

でも勇気がなかったんだ。

だからやっぱり、
わたしが海を語れることは、
ないだろう。

海を語れるというのは、
海を知り、会いにいき、
触れ合うことの実感を、
知っていることだから。

わたしは海を知らないんだ。

あなたは海を知っている?


もう大人になってしまったけど、
ときおりその海原に、身を任せてみたいと思う。

どんな感覚なんだろう?って
知りたいと思ってしまうことが、
まだわたしにとっての海であり、
この夏の衝動なんだ。


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