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:0274 中学生の満州敗戦日記/今井和也 感想

文人家庭で育った大日本帝国の忠良なる少兵士の体験記

読みやすいですね。お父様は哈爾浜(ハルビン)工業大学の建築科長だったようです。お父様の器用さや人脈の豊富さに驚かされました。

お父様も「軍人が嫌い」ですが、戦後のあるシーンでは「天皇陛下には責任はないよ。バカな軍人どもが天皇陛下をだまして利用しただけだ。天皇陛下も被害者なんだ。」と天皇陛下は嫌いません。そこに、同じ大学で勤務した縁で家に転がり込んできた25歳のI講師は反論します。

お父様「天皇陛下は日本という一家の父親だ。天皇制を否定しては日本がなくなっちゃう」
I講師「父親でも間違うことはあるでしょう」

著者はI講師の方が正しいと判断しています。お父様はかなり賢くて頼りになるタイプではありますが、著者にはお父様の判断を疑う思考能力があります。こんな議論が成立するのは、居候のI講師も含めて知的水準が高い家庭だからだと思います。


他の満州体験記も引用されていて次の本の参考になる

金森誠也さんの『「満州国」見聞録』からは満州のハルビン市街の雰囲気について。赤松トヨコさんの『我が子に捧ぐ』からは、著者も滞在していたソ連に近い王栄廟開拓団に残り続けた人たちの運命のついて。

体験者によって同じ満州内でも全く違う捉え方をしているとわかります。
個人的には、軍人や警察官の関係者の体験談も読みたいのですが、この本を読んだ印象ですと口が固そうな方々です。ですが、諦めずに探してみます。


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