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遮断機の。

夫の自死後、鬱発症。

そこから8年。一家の大黒柱になり、看護師として働いている。

地域医療の発展と在宅医療、在宅介護の重要性が増していっている中、私は訪問看護師として働いてた。

そう、過去形。

寛解しつつあった鬱が悪化したので、現在は訪問看護師ではない。

「金曜日の14時訪問」

私の働いていた訪問看護は、看護計画などの担当はあったが、訪問は基本的に全員がどの患者にも訪問できるようになっている。

主に難病の患者、患児が多い中、少数ではありますが高齢者の訪問も。

その中で、諸事情で、私しか訪問していない患者がいた。

金曜日の14時から。60分もしくは90分の訪問。

車移動がメインの職場。訪問先の近くのコインパーキングに駐車。毎週毎週通い続けた。

駐車して徒歩5分強。

その途中に小さな踏切。

普通や特急列車が走り、近くに小さな駅、小さな公園。

日中は人通りもそこそこ。

初めての訪問から半年過ぎた頃にふと思ってしまった。

黄色と黒で彩られたバーの向こう側。

くぐれば、タイミングが合えば、辛い日々が終わる。夫の元にいける。

どうせ行くなら、思い切り苦痛がある方がいい。

私はそれくらいの罪を背負っている。


くぐらずには居られなくなった気持ちを、遮断機のギリギリで、立って抑える。

その日から毎週金曜は、自分の希死念慮との戦いになった。

ほんの数分なのに。ほんの数歩先なのに。

それから3ヶ月後、とうとうかかりつけ医から、入院もしくは休職、退職を言い渡され。

今は違う場所で、施設内で働いている。

あの場所は、意図しないと行かない場所になったけど。

遮断機の向こうの世界に、時々行きたくなるんだ。

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