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morning glory

夏の朝の匂いがする。

6月下旬の土曜日の午前4時のこと。
宅配ボックスに入れたままの荷物の引き上げと、ゴミ捨てに薄明るくなり始めた外へ出た。
夏至が3日ほど前に過ぎたところだ。4時になるともう明るい。ここから先は日が短くなるばかりだ。
虫の声も聞こえない時間帯、外に出て、まだ陽のあがらない薄明の空を見ると夏の朝の匂いがした。

匂いの種類で言うならば、朝露の匂いだ。土草アスファルト、地面に近いところが湿り気を帯びている匂い。肌寒いとは言わないけど風がなくともひやりと涼しい気温で、露が落ちるような匂い。

日が昇り始めてしまうとこの匂いは消えてしまう。
温度が上がると地面はからっとしてしまう。夏の短い時間だけ感じるあの匂い。

私はその匂いによく覚えがあって、懐かしい気持ちになる。

盆休みに母方の親戚を訪ねる時は、私が小さい頃から必ず(もしかしたら私が生まれる前からそうだったのかもしれないけれど)深夜に高速道路で数時間かけて向かう。父が運転する車は、夜遅くに高速道路のゲートを潜り、祖父母が朝起きる時間より少し後くらいに到着するように、深夜から明け方、早朝までに何度かサービスエリアに停まる。
小さい頃は最初の一回か二回くらいしか起きていられなかったが、年齢が上がるにつれて夜更かしばかり得意になってしまったが為に、移動の半分近くを基本的に起きたまま過ごすことが増えた。
朝の4時5時頃、北陸に近いサービスエリアに停まって薄明るい空を見上げながら、営業時間外のカフェや食堂みたいな建物の周りを歩くと周りに生える雑草の匂いと、朝露の匂いが混じって肺に入ってくる。長い夏を、日本で、実家で、親戚の家で、どこで過ごしてもこの匂いがするのは、ほんの短い時間だけで、その時間に外に出ていることが希少だった。
でも、確実にこれが夏の朝の匂いだとわかっているから、好きだった。

梅雨の最中、まだ明ける日は遠いけれど、もうすでに夏を感じる。
今年は仕事で到底盆休み取れないけど、気持ちだけいつも同じような朝を思い出せることがわかってよかった。

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