「煙たい話」紹介感想文
懇意にしている人を紹介する時に、いつもその関係性の名前を気にしてしまう。
親友というと厚かましい気がするし、悪友とは表立って呼ぶもんじゃない。友人と呼ぶと薄さと軽さが気になるし、同僚と呼ぶと難しい。
大人になるまではよかった。同期とか同じクラスの、とか何が共通点かで表すことが沢山できたのに。友達だ知人だと、深度が違う相手を全部ひっくるめて同じカテゴリーに入れるのに今でも少し違和感がある。
そもそも、私の人間関係なんて大きなグループで一括りにする以外はその人は私に取って唯一無二だ。
「誰とでも仲良いよね」と言われるけど、結局私の持ち得るもので寄り添ってるだけで、みんな親友だし、みんなただの友人でもあるだろう。
でもそれ以前に私は彼らをカテゴライズせずに「この人はこの人」とノートに名前のシールを貼って、色分けしたり属性のラベルを貼ってるみたいにして人間関係を作っている。
「でぃーちゃん」中学からの友人、〇〇大学の〇〇学部出身、中国人、同郷の市外の人、私と同じ獅子座のO型、長いこと連絡とる仲、気が合う、みたいに。
人と一緒にいるのに理由なんていらない。
恋愛が友情よりも強くて偉いとは思わない。恋愛じゃなくたって誰かを唯一無二と認識しちゃだめだろうか。特別と思う人は一人じゃなきゃダメだろうか。
そういうところで正直人には言ってないし社会とは合わない部分が多くあると思って生きてきた。
そういう孤独と向き合ってから、たまたまオリジナル創作の漫画を読んだ。
林史也先生の「煙たい話」という漫画だ。
現在光文社様で連載中
二人の元クラスメートが、偶然の導きで再会して学生の頃にあった相手への気持ちを解きながら落とし込んで二人で生活を始める話だ。孤独と関係性と倫理の価値観と。そういう話をぐるっと包み込んで全く明るさがない、柔らかな自然光だけで見える世界みたいなお話だ。
二人の男性は、林史也先生が「BLのつもりはない」とお話ししているので、あくまで特別な関係性であるが恋愛感情はないと明言しておこう。
私はこの二人の関係が結構好きだ。
恋愛かどうか、特別とは何か、そういう迷いを通った後「自分たちが思いたいように思う」自然な形になる二人に何だかとても心が落ち着いた。
決して型にはまらなくても良いし、それが何か絶対に特別なものでなければならないという、私の中にある「この世にありふれた感情」や「関係性」に感じる孤独感に寄り添ってくれている気がしたのだ。
そして、私自身、この物語に出てくる有田にひどく共感するところがあった。優しさを蔑ろにされたり、見て見ぬふりをする自分自身にだったり憤りを感じたり、違和感を感じているのに動けないことがあることに。
同じように彼が怒ってくれることも、そんな有田に寄り添ってくれる武田がいてくれることもなんだか嬉しかった。ちゃんとぶつかったり、自分の中で腑に落ちるまでちゃんとその感情を分解していくところが、私には心地よかった。
そういう二つの孤独の融解点を探すみたいな漫画だ。
私はその寂しさと温かさがひどく好きだと思ったので、この漫画が大好きになった。
私にとってもそうだったけれど、誰かの心の支えになるといいと思った。
ちなみに、商業誌として連載が始まる前の「煙たい話」は林史也先生のpixivで読める。細かな設定が違ったりするので、商業とはパラレルで大まかな話の筋をよんでみたいという方におすすめする。
そして、この創作版の「煙たい話」を読んだ上で商業誌の方の読了もおすすめしたい。何故なら、その微々たる差異がきっと先生の表現したい何かや、何かを話す上で些細に変化させたい小さな誤差のはずだからだ。
また、史也さんのpixiv FANBOXでも商業化にあたり雑記と称して無料で記事が公開されています。設定が変わってしまうことへ私は少し違和感を覚えたところもありました(元の有田くんが美容師だったの、私は結構好きでした。お年寄りが出てくるところも。なので少しばかり名残惜しいですが)こうして言葉にしてくださったことで寂しい気持ちがなかったわけではないけれど、創作の「煙たい話」も商業の「煙たい話」も一つ一つの作品として受け入れたいと思えました。
まだまだ連載中で、つい先日一巻発売したばかりの漫画なので是非、王道ラブストーリーじゃない漫画をお探しの方は試し読みからでいいのでよんでみて欲しい。
#読書の秋2022 #漫画感想文
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