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日々の営み

懐かしい店が立ち並ぶ通りを歩いた。

ボロボロの外観の中で、変わらずその商売を続けている様々なお店の佇まいに凛とした強さを感じた。私の生きる世界は思ったよりもたくましい。そんな風に想えた。文字と言う情報だけを追って生きていくには心細く、不安は簡単に作られる。無意識にそんな世界に浸り過ぎてしまう時がある。そんな時はこうやって太陽の温度を感じながら、街を歩くのだ。

変わらない機械で仕上げるクリーニング屋。その土地を良く知るであろう昔ながらの不動産屋。変わらぬスタイルで売り続けているお米屋、八百屋。レトロなカメラ機器が並ぶディスプレイの店の中にフィルムという文字が見え隠れする。そこに立ち店番をいているのは決して若い人ではない。生きる力を持ち、この時代を長く生きてきた人達だ。

彼らはきっと何も変わらずただそこにいる気がした。いや、きっとそこに居続けていたし、これからもいるのだろう。こんな状況で、実はとてもきついのかも知れない。実はもう店閉まいを考えているかも知れない。けれども、この少しずつ戻りつつある日常の中で、昔から変わらないであろうその光景にひどく私は心をつかまれたのだ。あぁ私は生きていく世界があるのだと思わされた。決して裕福でもない。不安も隣り合わせだけれど、こうやってみんなそれぞれの場所に立っていること。その事実はどれほど励みになるだろうか。

ないものねだり。欲を出せばキリがない。隣の芝生は青い。不安はいつでも勝手に作られる。でも負けてはいけない。こんな時代だからこそ、シンプルにフォーカスしていくべきだ。何が大切で何を捨てるべきか。

街を歩いてみよう。空を見上げてみよう。人の声を聞いてみよう。交流してみよう。そこには私たちがいるべき世界がある。社会がある。それも自分で選べる。

日々の営みほど、尊いものはない。

積み上げてきた変わらないものほど強いものはない。

そういう人でありたい。

そういう世界でありたい。

日々の営みを抱きしめよう。

本当の豊かさを求めて。


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