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2021年5月の記事一覧
ラジオから孫娘の声がする
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
https://shimonomori.art.blog/2020/10/01/haox/
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老人が買ったラジオから、
亡くなった孫の声がすると言うのだ。
話を聞くと、その孫娘は
数年前に亡くなったそうだ。
老後の蓄えで最新機種のラジオを買った。
外見はアナログのレトロなデザインの
安物ラジオだが、液晶モニ
網妖怪
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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このオバケには名前がまだ無い。
――悪霊である。
キツネのように獲物を執拗に狙い、
時には野犬のように同類に紛れ、群れをなす。
個であり群であるが、特定の形を持たない。
――神出鬼没である。
縁もゆかりも無いヒトのう
化けネコ
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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「バレてしまいましたか。」
我が家のネコである『たま』がそう喋った。
テレビを見ていた。
普段与えている高齢ネコ用の(不評な)
キャットフードではなく、
戸棚に入れていた高い缶詰を開け
(堂々と)隠れて食べている現場
送り狼・迎え犬
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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俺は今夜、オオカミになる。
狙いは可愛い子ヒツジだ。
大学の合コンに来たハーフの子は、
明朗快活で積極的に男に接近する。
「イヌ、好きですか?」
可愛らしい声の彼女で尋ねられ俺はうなずく。
「キミみたいな子イヌち
海なし寺とカニ坊主
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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かつて甲斐の国(山梨)に、
連続殺人事件が発生した。
現場はいずれも寺であり、
被害者はその寺の住職であった。
死因は撲殺。
事件の夜には、巨体の僧侶が
その寺を訪れたという証言があった。
住職は遠くから来た僧侶
化けタヌキ
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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山奥の小さな村里に
朗報が舞いこんだのは秋頃であった。
農作物の収穫を終えて冷害にあった
今年の不作を嘆いていたところ、
山のような腹の巨漢が村にやってきた。
目の周りには濃いクマがあり
タヌキの焼き物を思わせる風貌
事故物件
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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足音がする。
破裂音がする。
女の笑い声がする。
まぶたを閉じているのに、
目の覚める閃光を時折感じる。
地震も無いのに本棚の物が落ちる。
テレビが点いてチャンネルが変わる。
それから蛇口が開いている。
鈍感な男が借り
怖がりな私
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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夏期休講にサークルで催された合宿で、
肝試しがあってから私は怖がりになった。
夜道や電話の音、暗い部屋でさえ
恐怖を感じて何度も友人に相談した。
「小学生じゃないんだから。」と笑われたが、
そんな彼女は肝試しの時に怖
あなたの気のせい
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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夜闇に浮かぶ、白い影に
あなたはさぞかし驚いたでしょう。
大きさはヒトの大人ほどのものや、
赤子サイズのものまであり様々です。
ヒトの大きさだからといって、
オバケが全員あなたを待って、目の前で
じっと立っているわけ
私は憑かれている
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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私はオバケが苦手です。
中学校では女子たちの間で
怪談話が密かなブームだったので、
私は耳をふさいで恐怖に耐えました。
学校のトイレにある一番奥の個室、
近くの裏山にある無縁墓地の人影、
病院の地下にある霊安所のうめ
忙しすぎて死にそうだ。
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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私が入った会社は忙しすぎた。
業務内容を確認した時に、
右から来た案件を左へ流すだけの
単純な仕事かと思っていた。
『自由な気風を大切に。』
という標語が貼られているのを空虚に眺め、
死相の出ていた前任者の顔を思い出
波乱万丈転生
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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オレはしがない普通の高校生で、
ごくごく平凡な日々を過ごしていた。
ある日、自分が勇者の記憶を覚醒させると、
元の世界に戻るためにある魔術を見つけた。
オレの新たな物語が今、幕を開ける。
駆け出しの冒険者で魔族との
死んでみた
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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一念発起して死んでみた。
記憶はおぼろげではあるが、
自分が自殺に及んだことを理解するのは早かった。
薄っすらとした霊体? とやらになったものの、
自分が何をすれば良いのか分からず
路上をさまようのみであったところに
自縄自縛の例
掌篇シリーズ『今夜12時、誰かが眠る。』
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ヒトはそれを地縛霊と呼ぶ。
地縛霊という言葉は近年できた造語であるが、
その存在は世界的に古くから知られている。
突然訪れた自身の不幸を受け入れられずに
死んだ者や、恨みや憎しみなどの感情が死後、
オバケになってもな