わかりやすく見えるものと見えないその奥のこと
土いじりとピアノの両立の無理さに関わらず、
私が必要としているのはその両方、なぜなら・・
音楽というものを生業にし、少し変わったワークショプをしながら、その中でであっていくもの、関わっていくものがあります。
もう一方で、実家の荒れた土地に関わりを持ち、2年かけて少しづつ自然とやりとりしているもの。
音楽するということと、農地で作業するということは全く違うものなので、身体的な面から言うと、かなり無茶なのかも。草刈りのあとの手のむくみはしばらく確実に演奏の細やかさを奪っていきます。
それでも、得るものがあるんです、たしかに。
自然に触れたその手応えで、ピアノを弾く。人を教える。
音楽を理解するその手立てで自然の根底の流れを読む。
自分の中で、二つは交流をしているので、
どちらもがこの人生でもし中途半端におわったとしても、関わらないではいられない。
それは表面を通っては容易に結びつかないものが根底でつながっているから。
結局私の今世はその根底で繋がっているものへのどうしようもない偏愛と衝動でできてるんだと、どっかもう、それでもいいやという気になっています。
ある種、覚悟。天職。
世界の表皮と内奥
表面、”容易に分かる”ものは物事の一部であって、それぞれはバラバラに点在します。
けれども、その表皮を裂いて、その奥にめをこらせば、違った世界が広がっていて、そこはまるで分け隔てなく地続き。
世界というのは本来地続きだと思うんです。
多分、そこを感じる人はたくさんいるし、でもそれを言い当てる言葉はないし、日々の暮らしは飛ぶように過ぎていくから、飛石を跨ぐようにして、そこをすっ飛ばしていかざるを得ない。
”容易に分かるもの”は、当然のようであるのに、何かがとてもそれはいびつに歪んでいて、それはそこ「あいだ」がどこかへ消失していて。
でも、それをねじ伏せて、物事は進む。
ひっくり返してみた時に沸き立つ情報をねじ伏せているのではないか。
はじけそうに溢れている情報を網の目からこぼしながら、掬ったもので判断してこれは正しい、これは間違っている、と。
とにかく時は急ぐのだから。
でも、深さの度合いに応じて、ねじ伏せているそれらは、こちらをみかえしてくる。
「自分が世界を覗く時、世界も自分をみている」
なぜ、今だけの効果や成果や勝ちをもとめるのだろうか?
そうやってたちどまってしまっているのが自分なんだと思います。
ならば、ふとそこに惹かれてしまった自分は、変人でよいから、そこを繋いでみたい。
植物の表層と音楽の表層、そしてその奥
草の、土から上の部分は容易に見えるものですが、その土の中の出来事は目にはみえません。
花が咲いている、というのは表面的に「花」であっても、そこにその花が咲いているためのプロセスがあってこその結果だし、その先のプロセスもあります。生きているその時間を追ってみる。そして花たちは群れる、何万何億の生きているものたちとのプロセス。私は実家の農地を関わるようになってそういう時間軸が少し見えるようになってきました。
よく集中できている時の音楽も
形というものが生きていて、形が形を成していくのを
一緒に生きてるような、
不思議な感覚になる時があります。
間違わない、ということが一つの答えであることは正しいと思います。
でも、そこに結晶化されていくには、生なまと生きたプロセスがあり、それはいつまでも生きている。そして、それは答えの一つ、であって、唯一ではない。
それは雑草が生えてないのは美しい、という見方においても。
容易に見える、分かるものは、その表面の内にもともとは「それら」を内包していたはずなのに、どこでどうひっくりかえるのかな。
骸だけが残っているものを、人は価値、と呼ぶ。
どのくらいのスパンで筋を追うのか、どのくらい分岐点を見落としていくのか。
私の袖をそっと引っ張って、
じっとそれはみつめる。
それはなかなか見返られないもので、「価値」として評価されにくいものかもしれない。でも、
ここにいる、ここにいる、と。
その声を頼りに、彫ってみる。
この、彫ってみる、ことが
世界にとってどれだけ忘れられていて、
またどれだけ世界にとって、復活を意味するか。
人でなければできないこと。
音楽を編むこと。
音楽を生かすこと。
それらは、楽器を奏する、というだけの狭義ではなく人の営みの隅々にまで行き渡る、人の世界と関わる仕草。
多分(まだ解答を得たわけではないけれども)
土を触り、一個の植物というより、ひとまとまりの土地のプロセスの中に私自身が組みまれながら生きていくことが、
相当に長いスパンの音楽(世界)の響きを聞くチャンスに恵まれたということで、
そしてまだまだ届かないものたちにむかって
掘り下げるのだと思います。
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