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八月の音楽室(コンサートやるやらないで右往左往の巻)

「9月のホールでのイベントはキャンセルか延期かご検討願えませんか?」

と子供達のコンサートを予定していた県の施設からの電話。

ホールとの打ち合わせと下見を13日にした時、このコンサートのために買ったいくつかの楽器とキーボードも持ち込んで、ホールに足を踏み入れ、久しぶりに味わうこの空間のこの空気、やっぱり計算された音響の場は、いい。
感覚が360度に広がっていく。
ここ一年の閉塞感の中、一日生徒たちに楽しい時間をプレゼントできること、生徒たちのピアノをじっくり味わえることが本当に嬉しくて、ワクワクして会場を後にしたのでしたが。その数日後にかかってきた電話は危惧していた通りのものでした。

「閉鎖ということではないのですか?」と尋ねると、
言葉を濁しながら、
「使えない、ということではないのですが…..」
いっそ、閉鎖と言ってくれたらこっちとしては楽なのに。

でも、ホールの人たちにとっても、これは苦しいんだろう、というのがその声のトーンから直に伝わってきました。キャンセル料は取らないので、全額返金します、と。
「大変申し訳ありません。」と電話の向こう側の人。
いや、ホールにはなんの落ち度もないのに。

即答ができず、少し考えてみます、と言って電話を切ったあと、
どんな可能性があるだろうか、と考えてみました。

その時にはまだ、低学年と高学年に分けて人数を減らして、とか
家族単位で時間割して、とか、
とにかくなんとかホールで演奏できる可能性を模索し
最後の手段として、オンラインで、ということも考えて
ホールを使う方法と、オンラインとどちらにでもいけるようにしながら最後までホールでの演奏ができる希望も捨てられない、と考え、
時間をかけて作ったプログラムを一旦バラバラにして、家族単位の時間割を作ったり、オンラインでする場合どうするか、ということも同時に考えて、保護者の皆さんに連絡の便りを書いたり消したり書いたり…..
とりあえず自分の中で可能性という情報は積み上げられたので、手伝いを申し出ていただいた友人に電話して、私の考えているところを聞いてもらいました。
うんうん、と聞いてもらいながら、
自分でもなんか無理があるなあと思っていると、それを察して友人が
「それさー、苦しくない〜?わたしやったらくるしい。」
わわ、その通りや。
どっちになるかわからん、というのをずっと持ち続けて当日を迎えるのか。
生徒たちだって、保護者さんだたちだって気を揉むだろう。
私の労力も倍かかる。
そもそも、この状況下で、ピリピリせずにできるか?
かかわってくれる友人やバイトくんなども一日リスクに晒すことになる、自分にできるか?それ。自分って無茶臆病やん。

それにそこまでやってまでするもんか?

瞬間、しがみついていたものがほろり、と取れました。
私がしたかったんやね。

去年から楽器を調達したり、アンサンブルの練習を始めていた生徒もいて。
素晴らしい出会いもあって、歌えないコンサートのために歌の代わりに見える歌を子供達とやってみたくて草木染の布も準備していて….
何より、ここまでの生徒たちの成長。基礎が多いうちの音楽室なのだけどやっぱり一曲に集中してやってくることでしか身につかないこともあるし、音楽への愛着も違ってくる。

あ、でも、そうだ、何があるかわからないから、多くの子たちは早めに曲を決めて練習を始めたのだった。だから、もうあらかた曲の準備はできてる。私、「なにがあるかわからないから」って考えてたんだ、その何が、が起こったわけで。
それに、そうだ、コンサートを企画したときにこう自分にいいきかせたではないか。
「演奏が完璧にできることを目的にするのではない、まずは自分の曲に愛着をもってずっとそれを温められることの嬉しさを伝えたい。その曲をどこまで解像度を上げていけるか。単に弾ける、ということをうんぬんするのではなく、一回一回のレッスンで解像度をあげていくことで、結果理解と体験によって演奏が温められること。大事にするのはそこだ。」
と。
これは、一人の無謀な音大受験生と戦ったときに彼(息子)から学んだことでした。ほんと、先のゴールを目指してっていうのではなく、一日一日を大事に、だな。もちろん、設計図は講師の側にはあります。設計図の方を大事にしたって、受験生は自分のペースを変えない、そこの足並みを揃えてやること、ゴールを目的にしない、一回一回をちゃんと音楽すること。逆に音楽じゃないことはしない。

大事なのは目的を遂行することじゃない、それぞれがコンサートの曲と向き合って、何を得られるか、それの道はまだ絶たれたわけじゃない。

やってみるか、オンライン。
しがみついて3時間かけて書いた計画書は即ゴミ箱行き。

ゲストとして「すばなし」出演していただく予定だった友人にも連絡、早速に録画に切り替え。翌日に録画に来てくれました。なかなかの迫力で。よかった。伸び伸びしてた。

翌日、ホールに電話してキャンセルを伝えました。
「ご協力ありがとうございます。」とホールの人。
胸が痛む。もう私は振り切ってるけど、それぞれの場で、経済の停滞がじわじわと運営を蝕んでいく。
花屋にもキャンセルの電話。
写真屋さんにも休日明けを待って、連絡しなければ。申し訳ない、は私の方。

木/金の保護者さんにはお便りを渡し、まだレッスンに来ていない他の保護者さんにもとりあえず、全員に通達。
こんな時にしかできないオンラインも楽しみ!とありがたい保護者のフォロー。

とはいえ、まだzoomの使い方がよくわかってないし、録音するためのインターフェースは壊れたままだし、どうやって、当日を迎えるのか。みんな参加できるのか。課題山積。

あ、でも、スッキリした。
これで演奏に集中できる。未練はもうないな。ありがたい。
きちっと自分の仕事しよう。





愛媛の片田舎でがんばってます。いつかまた、東京やどこかの街でワークショップできる日のために、とっておきます。その日が楽しみです!