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#詩
オンライン・マザーズ
わたしがまだ血だらけの母で
我が子が赤子だった頃
恐る恐る 乳を含ませ
噛まれる痛みと吸われる不快は感じながらも捨て置いて
目を瞑り ちいさな口を懸命に動かす生き物の温もりに
この子を 守らなくてはならないと 一層強く 腹を決め
体から ごくごくと 力が抜けて行くことに慄き
守れるだろうか 育てられるだろうかと
泣きそうな焦りに 身をやつしていた
その頃スマホがあったなら
わたしは片腕に赤子をの
気をつけて気をつけて
速い車に気をつけて
はねとばしたりしてくるから
バイク飛ばすの気をつけて
転ぶと首をやられるから
ラグビー スクラムに気をつけて
意外と人の身体は重い
ねえ気をつけて気をつけて
落ちてくる岩に気をつけて
降ってくる看板に気をつけて
滑る雨上がりに気をつけて
台風の夜に気をつけて
不慮の事故にも病気にも
気をつけ気をつけ
生きていても
空からサメが降るようなことで
人はいきなり 死んだりする