【自主ゼミ】 新規事業・スタートアップのよくある失敗を学ぶ 【産学官共創デリジェントゼミ第12回】 2024/7/1
産学官共創デリジェントゼミ第12回が開催されました!気が付けば後2回です。
今回は、一般社団法人イノベーションハブの理事をされており、本ゼミの講師である井野孝紀先生にお話を伺いました。その内容をお伝えしたいと思います!
産学官共創デリジェントゼミは学生団体東京大学Diligentが主催する、東京大学学生自治会から認定を受けた自主ゼミです。
本ゼミの初回ガイダンスをまとめたものがあります↓ので、ゼミに興味を持たれた方はぜひご覧ください!
本ゼミの講師である井野孝紀先生は、東大法学部をご卒業後、NTTデータにご就職されたのちに、15年間で18社もの会社を設立された連続起業家です。
そんな井野先生のご経験をもとに、「新規事業・スタートアップのよくある失敗」を学び、どう対策すれば良いのか、お話を伺いました!
数々の失敗…とそれから得た学び
たくさんの会社を起業されてきた華々しい経歴を持つ井野先生ですが、その裏には数々の失敗がありました。その失敗と、それから得た学びをみていきましょう!
①サプリメント事業の失敗
井野先生は、医師と一緒にNMNという若返り成分が入ったサプリを開発し、販売する事業を始めました。
既に帝人株式会社などの大企業も参入していましたが、より安く、より成分量を多く、そして医師が効果を認めている、という3点で差別化しようと考えたそうです。
結果は…
ほとんど売れませんでした。。。
その要因は、商品を開発している間にさらに多くの企業が参入し、サプリが出来上がった頃には価格崩壊が起きていたから。大量に残ってしまった在庫も、消費期限が2年と短く、期限内に売り捌くことが出来なかったのです。
この失敗から、井野先生はいくつかの学びを得ます。
まずは、自分達でも簡単に作れるサプリのような、参入障壁の低いビジネスには手を出さないということです。そのようなビジネスは、最初は差別化できても、資金力がある大企業が次々と参入してくるので、長期的な差別化は非常に困難です。
そして、商品開発より先に販路を確保すること。
商品を作ってから売るのではなく、先に売ってから作る。つまり受注生産や予約販売のような方式が、新規事業では効果的だということです。
先にファンを作ってしまうという点では、フリーミアムと共通していますね!
②遺伝子検査キット販売の失敗
コロナ禍で暇を持て余していた井野先生は、趣味の一環として、肥満遺伝子検査キットを販売するビジネスを始めました。
肥満遺伝子検査とは、自分にとって太りやすい食べ物や、太り方の特徴を「りんご型」「洋梨型」などの型で診断できるものです。
このビジネスの戦略としては、価格を相場の半分近くまで抑えることと、ギフティングで宣伝することでした。ギフティングとは、インフルエンサーに商品を提供するのと引き換えに、SNSで紹介してもらう手法です。
結果は…
NMNサプリよりは売れたものの、またもやかなりの数の在庫が残ってしまいました。。
その一番の要因は、ニーズがなかったということ。タダならいいけど、お金がかかるのはちょっと…という声もあったそうです。Wants(あったらいいな)とNeeds(ないと困る)には大きな差があると感じました!
この失敗から得た学びは、本格的に販売する前に、売れるかどうかテストすべきということです。いわゆるテストマーケティングですね!
さらに、安価な検査キットを購入してくれた顧客に対して提供する、自社の最も価値が高い製品、つまりバックエンドもしっかり用意する必要がありました。
ここまで二つの失敗と学びをみてきて、お気づきの方も多いと思いますが、
意外と基本的な失敗が多い!
と感じました。ですが、いざ自分で事業を起こそうとすると、基本的なこと全てを守ることは非常に大変なのだと思います。そのときに大事なのが、自分一人で抱え込まないこと。これは後ほど紹介する、新規事業を起こすときに大切な姿勢の一つです!
③ビデオメッセージ事業の失敗
みなさんはCameoというアプリをご存知でしょうか?
Cameoとは、メッセージ動画を好きな俳優やミュージシャンに依頼して、スマホなどで受け取ることができるサービスです。アメリカでは人気でしたが、日本ではそうしたサービスがまだありませんでした。
井野さんはそこに着目し、「Cameoの日本版」を立ち上げました。
しかし、結果は…失敗。
日本独自の芸能文化と、Cameoのようなビデオメッセージ事業は相性が悪かったそうです。継続した収益を見込むためにサブスク型にしたものの、日本には既にファンクラブという似たような文化があり、差別化できませんでした。
さらに顧客の要望に応えるため、アプリにさまざまな機能をつけましたが、その分余計な開発費と時間がかかっただけで、収益は生まれませんでした。。
このことから、MVP(Minimum Viable Product)をまずリリースすることが重要であることに気づきます。「あったらいいな」という顧客の要望にいちいち答えていては、途轍もない時間と労力がかかりますし、いざ商品ができてもその顧客が購入してくれるかは分かりません。
それよりもまず顧客のニーズを満たす最低限のプロダクト(MVP)を開発し、フィードバックを得て、後から機能を追加したり改善すれば良いということですね!
残り二つは少し毛色が違う失敗談です。
④チャットボット事業の失敗
チャットボットとは、ユーザーからの質問に自動で返答してくれるプログラムです。井野先生は、日本で初めて国産のチャットボットを開発・販売しました。
この事業は参入が早かったこともあり、業界一位となるなど成功し、最終的に上場会社に売却することとなりました。
側から見ると、何も失敗などはないようですが、会社の経営体制が終盤うまくいっていなかったそうです。プログラムを開発していた、営業があまり得意ではないCTOにCEOも任せたところ、営業力が強い人の意見ばかりが通るようになってしまいました。
このように、事業そのものは上手くいっていても、社内の人間関係でトラブルが起きることもあるのがビジネスの難しいことろ。。
井野先生はこの失敗から、「欠点は利益を生まない」というドラッカーの言葉を改めて強く意識するようになりました。欠点は中和できても、利益を生むまでには至らない。ならば強みを爆発的に伸ばしたほうが良いという考え方ですね!
⑤海外取引の失敗
こちらはサクッと紹介しますが、井野先生が日本の商品を中国に送る事業をやられていたときの話です。
法律やコネクションなど、現地のスタッフに任せっきりにしていたところ、そのスタッフの横領が発覚したそうです。
ビジネスに金銭絡みの問題はつきものですが、この失敗から、社員を守るためにも、横領できないように社内体制を確固たるものにする必要性を学んだといいます。
以上、たくさんの失敗がありましたが、改めて分類すると、①〜③は事業そのもの、④は人間関係、⑤は金銭の失敗といえそうですね!
新規事業を起こすときに大切な姿勢
事業そのもの以外にも、人間関係や金銭絡みでたくさん失敗をしてきたと語る井野先生。それらの失敗から学んだ、新規事業を起こすときに大切なのは、
1人で考えこまず、周りの人に積極的に相談して、
思考の漏れや偏り(思い込み)に気づいて、対策を打つ
姿勢だそうです!
自分の事業がうまくいかないと、ついつい一人で抱え込みがちですが、同じ会社などの信頼できる人に悩みを打ち明けることは大事ですね!
最近だと MBTI なる性格診断が流行っていますが、そうしたツールを活用して、自分とは異なる性格や考え方を持つ人に相談することで、思考の漏れや思い込みに気付けるかもしれません。
最後に
今回は、井野孝紀先生に、新規事業・スタートアップによくある失敗とその対策をお聞きしました。
井野先生の体験談を聞いて、失敗をただ失敗で終わらすのではなく、そこから次につながる何かを得ようとする姿勢こそが、連続起業家として成功されている秘訣だと感じました!
これでSセメスターでの、井野先生による講義は最後でした。
井野先生、幾度にわたって、興味深いお話をしてくださり、本当にありがとうございました!
ゼミは毎週月曜日6限から、駒場キャンパス1号館159教室で行われています!
ゼミに興味を持っていただいた方は、ぜひ下記のリンクからご応募ください。(セメスターの途中からの参加も大歓迎です!)
また、本ゼミを運営している東京大学Diligentに興味を持ってくださった方は、ぜひホームページをチェックしてみてください!
文責:大崎智仁
#スタートアップ #新規事業 #東京大学 #東京大学Diligent #ベンチャー #起業
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?