【読書】「海底二万海里」~深海の冒険は心の奥底の探索なのかもしれない~
ずっと気になっていました。
気になっていたいけども、なかなか手に取れませんでした。
本の厚さからして、相当な冒険だろうと思っていました。
福音館古典童話シリーズ、11番目の作品、『海底二万海里』。
少しでも読みやすいものをと思い、子ども向けの本棚から選びましたが、甘かったようです。
「童話シリーズに入るんだね」
700ページを超える冒険は、1冊の本にまとめられていますが、手に重く、内容も読みごたえがあります。
ネモ艦長が住まうノーチラス号は、深海のあちこちを旅します。食料を調達するとき、新鮮な空気を入れ替えるとき、ほかにもネモ艦長が必要だと判断したら、ノーチラス号は海上に姿を現します。
地上の生活とは縁を切った、モネ艦長とその乗組員の海中生活は、なかなか快適なようです。
海を愛し、目を見張るほどの技術と知識をもつネモ艦長ですが、本当に快適に過ごせているのでしょうか。海を愛しているのは本当です。海の中の様々な場所を訪れ、研究をするのが好きなのも本当です。ですが、陸から離れて生きることが、陸やそこに住まうひとと縁遠くなることが、はたして幸せなことなのでしょうか。
この物語は、ネモ艦長の視点から描かれたものではありません。ノーチラス号に滞在する羽目になった、アロナックス教授の物語です。
海の中に出てくる生物、ネモ艦長しか知らない海底の神秘。本を読んでいると、ネモ艦長に導かれ、アロナックス教授とともに大冒険をした気分になります。
アロナックス教授は探求心のある学者です。そのため、ノーチラス号での生活を楽しんでいるんですよね。少年が冒険を楽しんでいるようにも見えました。
快適な生活を送れるノーチラス号ですが、完全に安全というわけではありません。もう少しで、窒息死しそうになったこともあります。
アロナックス教授の冒険を楽しむように、海底の神秘を疑似体験しつつも、ネモ艦長や乗組員は、ときに不穏な空気をかもしだします。
同じ空間で生活を共にしていれば、なにもかも秘密にできるわけがありません。奇妙な言動の奥底には、ネモ艦長の暗く燃える炎がありました。
アロナックス教授の視点から、私たち読者はネモ艦長のことを推し量るしかありません。
知的で、高い技術力をもち、常に紳士で、勇気と判断力、仲間に対する思いやりももつネモ艦長。なぜ、彼が陸から離れることになったのか、詳しく知りたくなりました。
ネモ艦長は、『神秘の島』でも登場するようですね。読んでみたいと思います。
ミステリアスなネモ艦長も気になりますが、海底の神秘を堪能できる1冊ですよ。