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【詩】白い鳥の去った後

空と大地があった
空には雲があった
大地には畑があった
広大な
地平線が見えそうな
そこまで広い畑じゃない
だが家庭菜園のような
小さな畑でもなかった

そこに一羽の白い鳥がいる
少し薄汚れているだろうか
白鳥だと思ったら
鳥は折りたたんでいた首をのばした
ほっそりとした長い首
大きな翼を広げる
白い鷺だと思った

その鳥はゆっくり大きく羽ばたくと
後ろをふりかえることもなく
青い空へと旅立っていった
青い空に似合う
明るい日差しが畑にあたる
白い鳥が旅立った後
ふっくらとしたこげ茶の畑が残った

鳥が旅立ってしまったのを
幸運が飛び立っていったようで
寂しく思った
ただふっくらとした
水分を含んだ
こげ茶の畑だけが残っている

まるで種をうえる準備ができましたと言わんばかりに
まるで苗をうえる準備ができましたと言わんばかりに

どんな種をうえるのか
どんな苗をうえるのか
あとはそれを決めるだけ

旅立ってしまった白い鳥を
名残惜し気に
いつまでも眺めているよりも
よっぽど重要なことが待っている

収穫期に間に合うように
何の種を
どんな苗を
植えようか

ぽかりと空いた心の内に広がる

種をうえた後
苗を植えた後
芽を出し
成長し
花が開き
実をつける

どんな植物を畑にうえるのか
そればかりが胸の内に広がっていく

こげ茶の畑に
どんな植物が成長していくのか
そこで自分がどんな顔をしているのか
どんなきもちでいるのか
そればかりが広がっていく

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