【9割ココ】夜、足がつるのは○○が原因だ!を医師が検証【こむら返り 老化 老廃物 内臓リンパ洗浄??】
「足がつる原因の9割はここ?」
今回は、脚を温める?冷やす?がテーマです。
「夜、足がつるのは○○が原因だ!」を医師が検証いたします。
※このnoteでは、整形外科医:歌島大輔が医学的根拠をもとに、わかりやく、かつ実践的な医療健康情報をお届けします。
ときどき出てくる「ふんぞり男」とは、その名の通り、ふんぞり返って態度がデカい患者さんです。
足がつる原因の9割はココ!?
先日、YouTubeを寝っ転がりながら見ていると
「夜のこむら返りの原因の9割はこれです!」
って動画が結構たくさんあることに気づきました。
この話題に限らずですが、患者さんからすると
「おお、そうなのか!?」って思って、動画の通りに取り組んでみたくなるかもしれません。
そりゃ、9割ってことはないだろうけど、でも相当確信度が高いんだろうなって思いません?
でも、その動画通りに対処しても良くならない。
そして、次に似たような動画を見ると、そこでも
「原因の9割はこれです」って別の話が出て
「あれれ?もうこの時点で足したら18割になっちゃうぞ」ってなって、もう混乱しますよね。
それは、医師である僕も同じなんです(汗)
「いやいや、お前医者だろうがー」って言われると思うんですが、
僕ら医者もわからないこと、知らないことはたくさんあるんです。
そして、治療家さんが、さも「これが真実!」みたく自信満々におっしゃっているのを見ると、
「ん〜、何らかの根拠があるのかもしれないなぁ・・」って思うんです。
できれば、その根拠を示して欲しいんですけど、根拠が示された動画は異常に少ないです。
ならば、僕なりに調べてみればいいじゃないかってことで、検証してみました。
でも、どの動画を検証したとか、そういうことじゃないんです。
個人批判がしたいわけではありません。
ある治療家さんはこういう主張をされていたので、調べてみましたっていう「主張自体を検証する」ってことをやっていきます。
検証する方法をどのようにするかというと、これは世界中の論文をあさるしかないんですね。
治療家さんがおっしゃる主張の根拠が見つかれば、それをお伝えしますし、見つからなければ見つからなかったことをお伝えします。
そういうつもりで検証していくと、めっちゃくちゃ勉強になりました。
感謝感謝ですね。
確かに医者って治療家さんが主張されることを時に、
「適当なことを言っているよ」って批判しがちなんですが、
それを上から批判できるほど、僕は医学に精通しているのか?っていうことを考えるんですね。
だから、逆に治療家さんの主張をヒントに調べてみたら、僕が知らない論文にきっと出会えるだろうと思って、この検証シリーズは僕の勉強になりそうです。
しかし、そんな自己満足の動画を撮っても意味はありません。
なので今回は、こむら返りで悩んでいる患者さんが少しでも
「間違えないように」
「苦労しないように」
「迷わないように」
という手助けをすることが一番の目的です。
最後に、多くの論文を調べたなかで明らかになった、効果が期待できる最小限のストレッチを紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
夜のこむら返り、原因の9割はここという主張の検証
その1: 実は後脛骨筋と腓骨筋という2つの筋肉が原因?
これは斬新だなって思った主張です。
こむら返りが起こる最も多い筋肉はふくらはぎ、つまりスネの後ろ側の筋肉達ですね。
おもに「腓腹筋」と「ヒラメ筋」という2つの筋肉から構成されています。
そして、その内側と外側についている
「後脛骨筋」と「腓骨筋」
この2つがうまく使えてないから、夜につるんだ!っていう主張を拝見しました。
そんな説もあるんだなぁと思いながら、世界中の論文が集まる「PUBMED」で検索してみました。
夜のこむら返りは、英語では「nocturnal muscle cramp」と言います。
そして、後脛骨筋「tibialis posterior」を組み合わせた用語で検索してみます。
結果は‥‥
※注釈:PUBMEDの正式な検索法じゃないですが、Advanced検索でも同様でした。
だからと言って、この主張が間違いとは言い切れないんです。
だって、まだ論文になってないだけかもしれないわけですから。
そして、そもそも夜のこむら返りである「nocturnal muscle cramps」というキーワードで検索してみても230件くらいしかないので、研究があんまり進んでない分野とも言えそうです。
とは言え、そういう科学的根拠みたいなものをわれわれ医療者がないがしろに無視して良いわけもないので、検証を続けますね。
その2:足首が硬いのが原因?
この主張は多いかもしれませんね。
様々な足首を柔らかくするストレッチが紹介されていたりするんですね。
これはさすがに正しいんじゃないかなぁって思いますよね。
僕も何か論文あるんじゃないかなって思いました。
例えば、足首の可動域を測定して、硬い人の方がこむら返りが起こりやすいというデータとかですよね。
ということで「nocturnal muscle cramp」に足首を表す「ankle」を組み合わせて調べてみますと‥‥
2件ありました。
ですが、いずれも求める論文はゼロでした。
本当に研究は進んでない分野のようですね。
では、検証の最後です。
その3:脱水が原因?
これは流石に正しいだろうと思いますよね。
脱水は「dehydration」なので、組み合わせで検索してみると・・・
2つだけ見つかりました。
そのうち1つは「むずむず脚症候群」の話だったので、それは除外するしかないですが、もう1つはこちらです。
これは夜間のこむら返りじゃなくて、運動時のこむら返り(筋痙攣)の研究(*1)でした。
マラソンによる「こむら返り」のあり・なしの違いを調べた研究です。
結果としては脱水(体重変化)や血液中のナトリウム・カリウムの値はあまり関係ないとのことでした。
「CK」と「LDH」という筋肉のダメージを反映する値が関係していたという結果なんですね。
そうなると、運動時のこむら返りは脱水よりも筋肉のダメージの影響が大きそうというのが、論文からわかりますね。
でも、それは運動時ですからね。
ここまで3つの主張を検証してきましたが、残念ながら、この分野は特に研究が進んでいないようで、主張をサポートするような論文は見つかりませんでした。
でも、これはとても大事なことなんです。
だって、こういう検証をしなければ、治療家さんが「9割ココ」って自信満々に主張しているのを見た患者さんは、信じ込んでしまうかもしれないですよね。
繰り返しますが、今回の検証でそれぞれの主張が間違っているなんて言えません。
ただ、証明する研究も見つからなかったと言えます。
ですから、常に疑ってみるっていうことが大事ってことになっちゃいますね。
足がつる原因とストレッチによる対策法!
「じゃあ、原因ってなんなのよ?」ってことじゃないですか。
確信度高く言えるのは、原因は1つじゃないってことです。
少なくとも「9割ここ」ってことはなさそうだというのは、
ココまででだいぶご理解いただけましたよね。
そして、実際に論文を読んでも、まだまだ原因は医学的に明かじゃないという結論になっています。
それでも大事にしたいのは、病気や身体の問題が潜んでいて、その結果こむら返りが起こっているっていうケースを見逃さないってことです。
それは、こちらの論文(*2)で示されているんですが、
こちらにリストアップしたような病気が潜んでいることがあるんですね。
ですから、毎晩こむら返りに悩んでいて良くならないって時は、一度は受診いただくのがいいと思います。
何科にかかるかが難しいんですが、まずは内科の開業医さんが基本になるかなと思います。
脚のしびれや「間欠性跛行」と呼ばれる長く歩けない症状などがあれば、脊柱管狭窄症も考えて整形外科から検討していただいてもいいと思います。
ふんぞり男「原因が難しいのはわかった!でも、こっちはこむら返りをどうにかしたいんだ!」
ってことですよね。
こちらの動画もぜひご覧いただきたいんですが、
こむら返りの予防に効くのは「ふくらはぎ+ハムストリングス(もも裏)」のストレッチの可能性がありそうです。
こちらの論文(*3)では、ふくらはぎとハムストリングのストレッチを毎日6週間組み合わせることで、55歳以上の夜間の下肢筋痙攣の重症度を軽減する可能性があり、逆にふくらはぎのストレッチだけ3ヶ月続けても、効果ははっきりしなかったと報告しています。
そう考えると、僕のオススメとしては、いろんなマッサージやストレッチを何種目もやるよりも、シンプルにこれだけ!っていうのが良いんじゃないかなって思います。
これは、寝る前に仰向けでタオルさえあればできちゃいますから、習慣化するにもうってつけです。
ポイントもシンプルで、
・足首をタオルを使って反らし、膝はちゃんと伸ばす
・痛みが出ない程度に、足の位置を頭の方に近づける
っていうことですね。
有名なストレッチです。
ふくらはぎともも裏が伸びている感覚を感じながら、30秒伸ばすだけ。
両脚やって、1分ですね。
もっと、いろんなストレッチを組み合わせることで予防に繋がりそうっていう研究があれば増やすのもいいと思うんですが、現状僕は見つけられていないので、オススメはこれだけです。
時間は有限ですし、習慣化するためにも、その行動は最小限がいいと思いますので、ぜひお試しください。
本日の一言
夜のこむら返りの原因は1つじゃない!
背後に隠れているかもしれない病気に注意しよう!
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参考論文
(*1)Muscle Cramping in the Marathon: Dehydration and Electrolyte Depletion vs. Muscle DamageMartínez-Navarro, Ignacio et al. Journal of Strength and Conditioning Research. 2022
(*2)Richard E Allen et al. Am Fam Physician. 2012Nocturnal leg cramps
(*3)Fiona Hawke et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021Non-drug therapies for the secondary prevention of lower limb muscle cramps