【繊細図書室】サラバ!
こんにちは。繊細リーマンゆうたろうです。
繊細な働く皆さんが集う、繊細図書室へようこそ。
ここでは適応障害で休職と転職を繰り返す繊細リーマンが、
繊細リーマン&ウーマンの心に響く
そんな本を紹介させていただくシリーズです。
今回は「サラバ!」という、繊細さん必読の小説を紹介させてください。
information(本と著者について)
<内容 Amazonから引用>
僕はこの世界に左足から登場した―。圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。
<著者紹介 Amazonから引用>
西加奈子さん
1977年、イラン・テヘラン市生まれ。大阪育ち。『サラバ!』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
これはきっと、繊細さん専用のお話です(私の独断と偏見)。
恐らく非繊細さんは読んでも響いてくるものが少なく、唯々長く感じるだけではないか?そう心配してしまいます。
というのもこのお話は、全体を通して超絶繊細な主人公の歩(あゆむ)が遭遇する様々なハプニングを、歩の一人称で語られていくお話。
そのハプニングに対して、歩がどう受け止め、どのように振る舞い、そしてそのことが歩の将来に、どう影響してしまうのか。
これを、共感しながら、胸を締め付けられながら、涙を流しながら、歩の経験から何かを学び取っていく物語だからです。
そもそもポジティブモンスターで、毎日ハッピーライフハッピーホームな人なら特に共感できるポイントが無く、「ああ、そんな人もいるんだ」と思うには少し長編すぎる小説なのではないか、そう心配しちゃいます。
最初のページを立ち読みして即買い
私は書店でこの派手な装丁が目に留まり、好きな作家さんの新刊だというのもあって、ほぼ条件反射的に手に取りました。
あんまりお金の手持ちもなかったので、今すぐ買うつもりはなく、数ページ立ち読みするつもりだったのですが、最初のページでKOされました。
その文章の引用が次の通り。
ぼくはこの世界に、左足から登場した。母の体外にそっと、本当にそっと左足から突き出して、ついでにおずおずと、右足を出したそうだ。
両足を出してから、速やかに全身を現すことはしなかった。
しばらくその状態でいたのは、恐らく、新しい空気との距離を、測っていたのだろう。医師が、僕の腹をしっかりつかんでから始めて、安心したように全身を現したそうだ。
~中略~
とても僕らしい、登場の仕方だと思う。
ああ、これは自分のための話だ。
自分の中にずっと大切にとっておく話なんだ。そう思いました。
何かをするときにも必ず様子を見ながら、少しずつ。
少ない行動の中から、多くの情報を引き出そうと一生懸命。
誰かがそっと背中を押してくれると安心する。そうしてやっと、後からゆっくりと、他人が既に進んだ道を歩むことが出来る。
主人公らしいし、何より繊細リーマンらしい、何とも愛おしい所作ではないでしょうか。
物語の最初のページの、この文章。もう、引力が強すぎて強すぎて、単行本の新刊上下巻一気に買っちゃった。
クレジットカードで。
自分軸の無い歩、芯が強い姉、個人主義の両親
妥協できるお互いの最大公約数を求めることなく、摩擦が起こらない生き方が染みついている主人公。
そんな主人公、歩(あゆむ)本人の思考と、世の中の捉え方をロールプレイできます。
繊細さを存分に発揮する主人公が、何に傷付き、嫉妬し、どこに優越を感じるのか。
これらをすべて、目が文字を読み取って、それを直接脳内に送り込んできます(普通)ので、我々繊細さんには容易に疑似体験が可能でしょう。
一方、歩の家族は個性的な人物ばかりで、キャラクターがただただ面白い。
容姿のことでいじめられるも、芯の強い姉。
裕福だけど、それぞれが自分のことで精一杯な両親。
強い個性を持った人に囲まれたせいなのか、主人公の歩は他人を観察し、人の期待にあわせてしまう人生を、自分でも気がつかずに生きていきます。
序盤で笑い、中盤で共感し、終盤で泣くから。
物語のはじめは主人公の歩の、幼少期から話が始まります。
父の転勤先であるイランで生まれ、少しずつ育ち、可愛がられ、日本へ帰国。
日本では大阪で育ち、また父の仕事の都合でエジプトへ。。
この腰の落ち着かなさが面白くて、それに重ねて破天荒な姉の行動が、さらに笑いを引き起こしてくれます。
歩が小学生になったあたりからは、自分にふりかかる問題の大きさも変わっていき、それを繊細さんならではの視点で物事を受け止めて、摩擦がおこらないようにすり抜けていく。
この感じは共感の嵐だと思います。
そして、、、
そんな「自分軸のない人間」が成長し、大人になっていく。。。
どんな苦悩が待っていて、どんな精神的な試練がやってくるのか。
考えるだけで震えます。(;゚Д゚)ガクガク
そしてもう、若いというだけでは乗り越えられなくなっていく現実。
自分を受容するって?
人間関係ってなんなんだろうか?
信頼とはなにか?
これまで分かっていたつもりだった自分が、もうよくわからなくなっていく。。。
歩くんが私たちの代理で悩んでくれています。
覗きましょう。
そこから私たちも何か学び取れるものがあるかも知れません。
まとめ 自分探しのヒントを貰える話です
私はグッときた文章があるとメモる習性があるのですが、このサラバ!では次の文を書き留めていました。
「私が、私を連れてきたのよ。今まで私が信じてきたものは、私がいたから信じたの。他の誰かと比べてはだめ。あなたはあなたでしかないのよ。あなたが信じているものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」
「あなたが誰かと自分を比べて、ずっと揺れていたのよ。」
誰が誰へのといった場面は省略しますが、これには当時30歳半ばだった私の脳天を直撃。
読むのを中断して、天を仰いでいたのを記憶しています。
(・・・そうです、その通りです、すんません、なんかすんません。)
なんかそんなことを思いながら、これまで自分だと思っていたことが、実はそうでは無かったと気付かされました。
自分軸を持て!
他人を軸に行動すると不幸になる!
これって、頭では分かっていることじゃないですか。
でも、具体例として、こういうことをすると、こうなるんだぜ。そしてそれが、他人軸で行動してきたってことなんだぜ。
そうやってストーリーで優しく教えてくれるのが、本。
読書ってこういう物語に出会えるから、本当に大好きです。
これを世に出してくれて、ありがとうございます。
以上、皆さんもおすすめの本があったら、是非コメントなどで教えてください!
最後まで目を通していただき、ありがとうございます。
これを読んでいただいたあなたを、前向きとまではいかなくても、横向きくらいにはしたい。
繊細リーマンのゆうたろうでした。
ではまた!