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読書感想文『システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」』
現実は答えのない問題がたくさんあり、それに向き合うための方法として注目されている「デザイン思考」。その実践方法について具体的に学びたくて読んでみた。
1.本の情報
タイトル:システム×デザイン思考で世界を変える
慶應SDM「イノベーションのつくり方」
著者 :前野隆司、保井俊之、白坂成功、富田欣和、
石橋金徳、岩田徹、八木田寛之
出版社 :日経BP出版
出版時期:2014年3月17日
2.要約
本書は、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)流のイノベーション創出プロセスとして、システム思考とデザイン思考を掛け合わせた「システム×デザイン思考」についての教科書である。
本書はPart1からPart3までの3部構成となっており、各Partには以下のようなタイトルがついている。
Part1 イノベーションとは何か?
Part2 システム×デザイン思考の技法と活用事例
Part3 「武器」としてのシステム×デザイン思考の活用術
それぞれのPartについての具体的な要約は以下の通り。
Part1
組織やプロセスなど、従来の方法や既存の枠の中で考えていても、革新的なアイディアというのは生まれない。既存の枠の外に飛び出し、イノベーションを起こすための方法や習慣が「デザイン思考」である。
「デザイン思考」という言葉の意味について、本書の中では以下の様に述べられているように見える。
・試行錯誤の連続
・協力と協創
・観察と発想
・ポジティブシンキング
また、「デザイン思考」と対になる考え方として、「システム思考」についても紹介されている。本書の中での「システム思考」とは、
・ロジカルシンキング
・俯瞰
・評価と検証
といった言葉で説明されている。
そしてその感性や実践の「デザイン思考」と論理の「システム思考」を掛け合わせ、相乗効果を発揮させたものが、本書のタイトルにも記載されている「システム×デザイン思考」である。
Part2
システム×デザイン思考を実践する上でのツールやフレームワークといったものが、どういったシーンでどのように使用できるのか、実例を交えて紹介されている。一部を紹介すると以下の通り。
・ブレインストーミング
・親和図法
・二軸図
・フィールドワーク
・イネーブラ・フレームワーク
・プロトタイピング
・etc...
Part3
不確実で答えの見えない問題への取り組むための、システム×デザイン思考を実践する上でのマインドセットや習慣などをここではまとめている。
特に現代のビジネスパーソンにとっては、
・「気がつく」能力
・協創的コミュニケーション
・行動重視/試行錯誤的アプローチ
・上位の目的重視
といったスキルや習慣が重要であると述べられている。
また、上記を実践する上で乗り越えなければいけない壁として、
・正解を一発で出す
・失敗=悪い
・「まじめ」や「客観的」が正しい
・範囲・枠にこだわる
といった壁を取り払って考えることが大切であると述べられている。
3.学んだこと
自分自身はまさしくシステム×デザイン思考を阻む4つの壁に囚われ、現代のビジネスパーソンに求められるスキルや習慣が実践できていないと改めて感じた。もはや感動するぐらいそっくりそのまま悪い事例である。。。
Part3の中でも述べられているが、この本の中で最も重要なことは以下の2つの言葉に集約されると感じた。
・遠くへ行くなら、仲間とともに
・すべては行動から始まる
「遠くへ行くなら、仲間とともに」という言葉は、アフリカに伝わる諺を引用して説明されている。
If You Want To Go Fast, Go Alone. If You Want To Go Far, Go Together.
(速く行きたいなら、一人で行きなさい。遠くへ行きたいなら、みんなで行きなさい)
まさしく協力と協創、Co-Creationについて述べられた格言である。
そして「すべては行動から始まる」という言葉についても、やってみなければ成功するかわからないし、失敗してもそこから得られるものは行動しなければまたわからない。つまり、「成果を得るのは自ら行動した人間だけ」ということである。
本書の中ではたくさんの手法が記載されているが、重要なことはそれらを使いこなすテクニックではなく、試行錯誤しながら臨機応変に活用し、様々な観点で問題を分析するところにあると思う。
つまり、机上で覚えるだけでは何も意味がない。実践し、実感あるのみ。