【書評】サッカー戦術本「サッカーとは何か」の解説と所感 Vol.7
浦和レッズ分析担当コーチ・林舞輝さんのサッカーの本質を問う書籍「サッカーとは何か」
Vol.1-4では、戦術的ピリオダイゼーションの「戦術的」の部分を解説してきた
Vol.5では「ピリオダイゼーション」の部分の入り口である意味や方法を解説した
Vol.6ではそれらをサッカーに落とし込む為の考え方などにスポットをあてた
そしてVol.7ではそれらの考え方を踏まえて、実践する為に重要なポイントを押さえていく
「モルフォサイクル」という概念
戦術的ピリオダイゼーションでは「モルフォサイクル」という1週間のサイクルでトレーニングをピリオダイズする
この1週間サイクルの繰り返しによって得られるものは、ゲームモデルとプレー原則の習得と、パフォーマンスレベルの維持である
ここにも、従来の「ピリオダイゼーション」やフィットネストレーニングやコンディショニング方法との大きな違いがある
いわゆる、「ピークを持ってくる」という概念が戦術的ピリオダイゼーションにはない
最も重要なのは、パフォーマンスとコンディションの「維持」である
なぜならサッカーとは、長期間のプレシーズンと短期間のインシーズンではなく、短期間のプレシーズンと長期間のインシーズンであるからだ
サッカーの長いシーズンを戦い抜くには100%のピークをどこかで作るよりも、常に80%のコンディションとパフォーマンスをシーズンを通して維持できるように期分けすることが重要となる
それこそが、戦術的ピリオダイゼーションの期分けの目的なのだ
「戦術的ピリオダイゼーションのロジックとは『ゲームモデルとプレー原則』と『トレーニングの法則』に基づいてモルフォサイクルを作ることだ」
ーヴィトール・フラーデー
筋肉への負荷の種類
戦術的ピリオダイゼーションのモルフォサイクルの中では、前述の「バリエーションの法則」の通り、曜日によってフィジカル面での筋肉の負荷の掛け方が違う
筋肉の動かし方は3つあり「ストレングス」「持久力」「パワー」である
先ずは「ストレングス」と「パワー」の違いから説明しよう
ストレングス:何か働きかけてくる力に対して耐える「強さ」である
例)1. 自分にぶつかってきた相手に対して倒れないようにバランスを維持して耐える「強さ」
例)2. 猛スピードで走っている時に急に止まる時の「強さ」
パワー:何かに対して自ら働きかけて動かす「強さ」である
例)1. 自分から相手にぶつかっていく時の「強さ」
例)2. 止まっている状態から走り出す「スピード」
「持久力」は以下の通りである
持久力:筋肉を長時間動かし続けるために、繰り返し、または持続的に筋収縮を繰り返すための力(いわゆる筋持久力と呼ばれるもの)
戦術的ピリオダイゼーションでは、上記の3つの筋肉の動かし方を以下の言葉を用いて使用する
「テンション(Tension)」 「持続性(Duration)」 「速さ(Velocity)」
それは、フィジカル的な負荷である筋収縮の話だけに留まることは出来ないということから言葉が違うのである
では、筋収縮以外にはそれぞれどのような要素があるのかみていこう
テンション:そもそもメンタルの「テンション」もコントロールできていなければならない
持続性:身体を長い時間動かすためには、そもそも集中力も長く維持できなければならない
速さ:単にフィジカル的な速さだけではなく、当然、頭の回転の速さ、判断の速さ、脳から筋肉に信号を送る速さを、事前に予測していることが求められる
従って、フィジカル的には「ストレングス・持久力・パワー」で良いのだが、身体と頭と心は繋がっているからこそ、戦術的ピリオダイゼーションでは「テンション・持続性・速さ」と呼んでいるのだ
また、Vol.8では前述したモルフォサイクルの詳細について、筋肉の動かし方を含蓄した中で、曜日毎のトレーニングの内容を解説していく