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戦争容認、ヒトラーは良い人……ほんとかよ?

日経新聞に奇妙な記事が載っていた。

正直、私の観測範囲にそのような人物はいないので、思わず「アベする」と似たようなフェイク記事ではないかと疑ってしまう。何しろ、この手の記事は、「マックの女子高生」と同じで、ソースがないので幾らでも捏造できてしまう。

それはともかく、実在するかどうかもわからない「戦争を容認する若者」とやらの意見にも考えさせられる部分がいくつかあったので、色々突っ込みを入れていこうと思う。

「いくらユダヤ人を殺したと言われていても、ヒトラーにも人の心があった」

これはイエスかノーかで言うなら、イエスだろう。教える側としては「ヒトラーは人間の心を持たない悪魔」としたほうが教えやすいのかもしれないが、それだと却って、自分とは無関係な話だと捉えてしまい、教育的効果は期待できないのではないだろうか。

それよりも、普通の人だって、みんなヒトラーや植松聖みたいな狂気を内在していて、何かのはずみでタガが外れて、狂気が顕在化する危険性はあるんだよ、ってことを教えたほうが、よっぽど意味があると思う。それが真の意味での「反省」ではないのか。

あいつは悪魔だ、俺たちとは違う、人間じゃない、叩き斬ってやる、じゃ何の学びにもならない。あ、もちろん「叩き斬ってやる」は首相の母校で教授を務めてらっしゃるあの人の言葉ですが。

それに、ポル・ポトのことを「アジア的優しさを持つ」って書いたのはどこの新聞でしたっけ。まあ、日経ではないのでブーメランにはならんけど。たしか、スターリンも子供好きの優しいおじさん、だったよね。

もちろん、大人が積極的に「ヒトラーは実は優しいおじさんだったんだよ」と子供に教える必要はない。しかし、子供が「ヒトラーって実は優しいおじさんだったんだ」って気付いちゃったとき、それを日経新聞の記事のように頭ごなしに否定するのは教育上も良くないと思う。いったん肯定した上で「そんな優しいおじさんが、どうしてあんなひどいことをしちゃったんだろう」って一緒に考えるのが良いのではないでしょうか。

ただ、もう1つ指摘するなら、先日の日本学術会議の松宮孝明氏の発言じゃないけど「ヒトラー」って言葉もずいぶん軽くなったよね。そりゃ、菅義偉がヒトラーなら、きっとヒトラーも菅首相みたいに優しいおじさんだったのかもしれない、って子供が勘違いしても無理ないわ。あ、松宮孝明氏は日本学術会議の人ではなかったね、日本学術会議を落ちた人だった(笑)。

日本学術会議落ちた、日本死ね。

ってか(笑)。

太平洋戦争を遂行した旧日本陸海軍の幹部に関しても、真偽の定かでないエピソードや人物像などを基に「真面目でいい人」などと安易に投稿する例が少なくない。

これ、多分、東條英機のことだよね。名前を出すと「真偽の定かでない」って主張が崩れちゃうから名前出せなかったんだね。いい人がどうかは別として、融通の利かない堅物であったのは事実でしょ。

一次史料だからすべて真実と思い込むのも間違い。時代背景などを知らず分かった気になり、ウソが拡散されてしまう

一次資料すら存在しない731部隊の人体実験とか、一次資料すら存在しない南京大虐殺とか、一次資料すら存在しない慰安婦強制連行とか、そういう怪しげな情報を拡散してるのはどこのどいつだよ。

クリックひとつの「いいね」や「リツイート」を通じて情報が広がり、大木氏は「影響力はフォロワー数で決まり、発信者のキャリアや研究歴は関係ない。ネットをはじめ単一の媒体にしか触れない人も多く、戦後培ってきた反戦や平和への意識が安易な投稿によって局所的に崩れてきている」と危機感を示す。

その危惧は理解できないでもないが、そもそも我々は、ネットが普及する前はそれこそ「単一の媒体にしか触れない」人が圧倒的大多数だったんですよ。新聞を2紙購読して読み比べてる人なんて、多分1%もいなかったはず。「朝日新聞を読めば受験に有利になる」なんて言って朝日新聞の購読を半ば強要したり、酷い学校になると天声人語を書き写させられた、なんて話も聞く。私はさすがにそんな経験はないが、「入試に出る」は普通に言われてた。

「戦後培ってきた反戦や平和への意識」が崩れてきたのは、ネットメディアやユーザーの投稿のせいじゃないだろう。最近はあまり聞かなくなったが4~5年前は盛んに聞いた「自民党は徴兵制を復活させようと企んでいる」みたいな陰謀論も、韓国じゃ普通に徴兵制やってるし、フランスやスウェーデンでも徴兵制が復活した、スイスでも国民投票で徴兵制が存続することになった、なんてニュースを見てたら、徴兵制に対する恐怖心なんて薄れてきても仕方ないのでは。これはむしろ「単一の媒体にしか触れてない」からではなく、むしろ「海外の媒体に触れるようになった」結果だろう。

それでなくても「軍事研究反対」「防衛予算増額反対」「憲法改正反対」みたいな、外を見ないで国内だけしか見てないオールド左派は、例えば「中国が攻めてきたらどうする」みたいな、簡単な質問にも全く答えられない状況が何十年も続いているわけで、そういう思考回路の人が説く反戦平和とやらに今の若い人が説得力を感じないのはむしろ当然だろう。

松宮孝明氏の「ヒトラー」発言が嘲笑されるのは、その意味でとても良い傾向だと思う。

教育現場からも不安の声が上がっている。「戦争は絶対悪という意識が薄らいでいる」。

仮に戦争が絶対悪だとするならば、ベトナムやインドネシアが蜂起して独立戦争を戦ったことも悪になってしまいます。彼らはベトナムやインドネシアは永久に欧米の植民地のままでいるべきだったと言いたいのでしょうか。

あるいは、ベトナムはアメリカに対しても最大限の抵抗をしてアメリカを追い返したわけですが、この時もベトナムはおとなしくアメリカに降伏するべきだったと考えておられるのでしょうか。

「自衛戦争は戦争じゃない」みたいな詭弁を弄するのは、やめたほうがいいと思う。

「皆で仲良くし、和を乱すべきではないと学んできた最近の大学生は『批判は良くない』と嫌う風潮がある」という

「徒競走はみんなで手をつないで同時にゴール」みたいな教育を受けてたら、そりゃそうなるだろうな(笑)。まあ、これは実話ではないらしいが、こういう話に象徴されてしまうような酷い教育が行われてきたってのはおそらく事実なんじゃないでしょうか。

あるいは、「菅はヒトラー」「安倍は戦犯の孫」「菅は低学歴」「安倍は人間じゃない」「ユーミンは夭折すべきだった」みたいな、批判と悪口の区別もつかないような人たちが権威をかさに着て威張り散らしているようでは、そりゃ「ああいう大人にはなりたくない」って思われて当然じゃないかな?

そういう若者を見て「なぜ彼らは権力に従順なんだ」と嘆く前に、おまえたちが若者にとっての反抗のメルクマールになってることに気付けよ。

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