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考える人

村人らは、口々にその人の事を馬鹿にした。

その人は村で何かしら事が起こると、まず自分の頭で考える癖があった。

「あいつはいつも、何か考えようとする。学者気取りの馬鹿な農民だよまったく。ろくに畑仕事をしないんだから?」

「きっと考える事に精一杯で、畑仕事をする時間もないのだ。だからあの歳になっても結婚すら出来ない。最後は1人、寂しく死んでいくに違いないね。」

「我々の様な農民は、領主の言う事だけを聞き働いていればいいのだ。何を生意気に。あいつはいつも、考えようとする。扱いにくいったらありゃしない…」

すると突然、その人が村人らの後ろに姿を現した。

驚いた村人は、次々と口を噤んだ。その瞬間、人間は村人たちにこの様に言った。

「何も考えていませんよ?ただ、考えるフリをしているだけです。そうするとね、他人を馬鹿にする事でしか会話出来ない人が誰か、炙り出せるんですよ。」




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