コロナ渦で潰れない京都のお店が守る「3割の原則」
コロナで全世界中が大変な中、観光客が多い京都ももちろん大きな影響を受けている。資金繰りが間に合わず、閉店する店舗も出てきているが、それでも多くの店はなんとか持ち堪えて経営を続けている。そして、こうやって生き残っている店には共通点がある。
それは「3割の原則」を守っている事である。
これは、お店のお客さんの割合のことで、海外の観光客が3割、日本の観光客が3割、地元のお客さんが3割という意味である。
円高やインフルエンザなど、観光地の商売には様々なリスクがああるけれど、お客さんが分散してついていれば売上が全くのゼロになることはないという、観光客の多い京都ならではの考え方だが、実は3つの3割の中でも、地元のお客さんが3割であることが特に重要だ。
当たり前だろうか。実はそうでもない。ぼくも店を出すのなら普通、地元のお客さんを見込むものだと思うけれど、ここ数年の観光バブルの中で、京都では、観光客向けの店がどんどんと増えていたのだ。
もちろん、観光客向けの店ができることは構わないけれど、最近は明らかに地元のお客さんを、はなから相手にしていないような店も多かった。こういったお店は、そのほとんどの場合が、いわゆる京都以外が資本のお店である。
ちょっと言い方は悪いが、京都が好きということではなくて「今京都が儲かるから」という理由で店を構えているような人が多かったようにすら思う。
そして、当然そういったお店は、今回の騒動でお客さんがゼロになった。かと言って、地元のお客さんはこれまで全く相手にしていない。今から地元向けにプロモーションをしても、新規開店したのと同じ状況で、このコロナ渦に新規で来てくれるわけもない。
一方で、3割の原則を守っているお店は、緊急事態宣言が出た当初は流石に苦しかったものの、徐々に地元のお客さんが戻ってきて、そのお客さんにつられて、新規の地元のお客さんも来るようになった。それでなんとか耐えているうちに、GoToキャンペーンも始まって、日本各地のお客さんが来てくれるようになっている。
外国のお客さんはまだ来ないけど、日本人のお客さんは最近結構増えてきているから、大変ではあるけど、なんとかなっているのだ。
そもそも、このコロナ渦で経営者にとってなによりもつらいのは、資金繰りよりも、お客さんがいないこと。「自分がしていることの意味がない」と思うことが一番つらいのだ。だから、いつもの3割であってもお客さんが来るなら、なんとか店を続けようと努力できるのだ。
これって、資産を現金とか株とか債権とか分散してリスクの平準化を図る「分散投資」と似ているなと思う。お店にとってお客さんはまさに一番の資産なのだから。
そしてその中でも一番大切な資産は「地元のお客さん」なのだ。その街で商売をするなら、その街の人に愛されないといけない、それが「3割の原則」持つ意味なのである。
だから京都では、これまで「地元のお客さんを大切にしていたかどうか」がこのコロナ渦におけるお店の明暗を分けているということだ。