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レンタル博士されてみた話 クエスト2



 前回、初めて「レンタル博士(ポスドク)」されてみた話をNoteにまとめてアップしたところ、大きな反響がありビックリした。ニュースになったり、新たな依頼が来たり、似たようなことを考えていた人に共感されたり、レンタル博士の世の中の需要を確かに感じた。

 博士の知識を借りて知的好奇心を満たしたい人が世の中には少なからずいることを実感した。レンタル博士という言葉が広まったことで、この活動のイメージや価値に対する議論が巻き起こったが、否定的な意見よりも「レンタルしてみたい!」という肯定的な意見が多かったのは嬉しい限りである。気になったポスドクの方は以下の意見を参照し、始めてみてはどうだろうか?

 レンタル博士の議論が白熱する中、早くも2件目のレンタル博士依頼が来て、レンタルされてきたのでその体験談をここでお話ししたいと思う。


【レンタルされた博士の自己紹介】

 3ヶ月後に無職になる予定の、生活費を稼ぎつつマンボウ研究を続けるにはどんな方法がいいか人生迷走中の求職中のポスドク。未発表データの論文化を進めたいと考えているが、ついつい新しい情報の論文化に手を出してしまう。レンタル博士を始めたが、次の依頼は果たして来るのだろうか?と思っていた矢先、かなり早く依頼が来てビックリ。詳しいプロフィールは以下。


【依頼者の紹介】

 移動販売車(キッチンカー)のクレープ屋・神奈川県在住・40代の男性(仮称「セカンドさん」)。マンボウが好きというよりも生き物全般が好き。魚釣りはしない。以前からインターネット上で噂になっているマンボウの都市伝説やそれにまつわる死因の話を信じていたが、実際はどうなのかが気になっていた(特に「マンボウは3億個の卵を産む」)。レンタル博士の話を知り、面白そうと思い、今回依頼した。
 

【レンタルされるまでの経緯】

 レンタル博士の話を知ったセカンドさんが、2020年11月6日にレンタルしたいと私のツイートにリプする →リプに依頼が来るとは思っていなかったので私は驚いた。



 DMで詳細や予定について打ち合わせする。
・フォロワーの方だったので私のことはご存じと思い、自己紹介は省略。どんなことを知りたいのか質問 →マンボウの都市伝説やそれにまつわる死因の真偽・生態に関する話(特にマンボウは3億個の卵を産む)を聞きたい →私承諾。


・オンラインではなく直接会って話を聞きたい →私承諾。


・場所はどこでもいいとのことだったので、標本や同人グッズなどを持っていきやすい+今回は魚市場でマンボウ探しをしようと思い、駅前集合を提案 →セカンドさん承諾。


・日程はセカンドさんの都合の良い日に合わせて週末の2020年11月28日に決定。時間は10時頃集合を提案 →セカンドさん承諾。


・レンタル費はtwitterやtogetterでネットの方々で協議され、アンケート「博士を丸一日レンタルするならいくらまで個人的に支払えるか?」を取った結果、1.5万円の票が多かったので、その値段で打診 →セカンドさん承諾。

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当日初対面。


【レンタル当日の様子】

 レンタル当日、朝10時。予定通りにバスが駅前に着く。しかし、私の心は朝見た横浜のラーメン屋のツイートに少し心を揺さぶられていた。その店はマンボウが入荷された時だけ、日替わりメニューで「マンボウ蕎麦」なる料理を出すのだ!


 この日の朝、日替わり限定メニューの煮干蕎麦にマンボウが使われることが告知されていたが、マンボウ蕎麦とは明言されていなかった。私はマンボウ蕎麦を食べたかったので、このメニューがマンボウ蕎麦に該当するのか店にリプで質問した。もしマンボウ蕎麦という返答が来れば、急遽、レンタル博士の舞台を横浜に変えることも考えていた(事前にセカンドさんに提案して了承を得ていた)。

 この時は新型コロナの感染者数が再び増加傾向だったので、事前に体温を測り問題なしと確認。今回は予防策として、市販の手指消毒アルコールを持参し、マスクに加え、メガネの上からでも掛けられるというフェイスシールドも着用した。

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 セカンドさんと駅で無事合流。セカンドさんにマンボウ蕎麦と店からリプが来た場合、横浜に舞台を変えてもいいかと聞くと、そちら方面から来たという。これはミスった~~と私は思ったが、セカンドさんも食べてみたいとのことで、快諾して頂いた。せっかく地方に来て頂いたのに何もせずとんぼ帰りは避けたい。せめて魚市場は見てもらおうと思い、急いで魚市場へと歩いていく。この魚市場はかつてクサビフグが売られていたことがあるらしい。

 セカンドさんと魚市場を見て回る。そんなに大きな魚市場ではないが、普段海産物を見る機会がなく、水族館も特に行かないというセカンドさんの目には新鮮に映っていたことと思う。地元のおススメのお土産や普段目にしない海産物の話をしながら魚市場を見て回るが、残念ながらマンボウ類は売られていなかった。

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 魚市場の探索が終わり、店からの返事もなく、どうしようか考えあぐねていたが、マンボウ蕎麦のリプが来た場合のお腹の具合を考えて、少し早いが、11時頃に食べ物屋が開いていたので、食べに行くことにした。

 魚市場の食堂を一通り見て回る。セカンドさんから特に要望がなかったので、私が一度食べたいと思っていた「マグロ丼にストップと言うまでマグロ載せ放題」のお店に行ってみることに。朝一なので人がまだ全然いない。広いテーブルがある端っこの席を希望した。

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 早速二人で噂のマグロ丼を頼むと、店員がやって来て、気持ち程度にマグロを載せたマグロ丼にお玉でマグロを盛り始める。ネットではマグロ丼からマグロがこぼれるほどたくさん盛られた画像がたくさん出回っているが・・・インスタ映えのために食べ物を残すのは良心が痛むので、自分が食べられそうな限界の量をそれぞれ盛ってもらった。セカンドさんは2杯でストップをかけ、私は3杯でストップをかけた。その時の様子がこちらである(動画はミスって2杯目からの映像)。

 ビフォーアフターも載せておこう。まずは注文したままのノーマルの量。

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 そして、3杯盛られた時の私の丼の量。

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 おわかり頂けたであろうか。3杯盛られただけで、最早ご飯は見えない。これで1000円とは、マグロをたくさん食べたい人にはハッピーかつかなりリーズナブルなお店だ。ご飯は酢飯だったのでプチお寿司気分。しかし、ここから盛り盛りマグロ丼を食すおっさん二人の孤独なフードファイトが始まった・・・

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 ・・・という訳ではなく、マンボウトークしながら楽しく食事をした。まず取り出したアイテムは、マンボウ肝油である。最近、近くのスーパーでマンボウの肝臓を入手し、それを炒めて出てきた油を瓶で保存したもの。マンボウ肝油は漁師の間では塗り薬や飲み薬として重宝されてきた伝統的な代物だ。


 マンボウ肝油の実物を見てもらい、結構サラサラしていること。ニオイを嗅いでもらい、魚のニオイはするが、そこまで臭くはないことを体験してもらった。

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 食べても食べてもマグロは減っている気がしない……という幻覚に惑わされながらもマンボウトークに花を咲かせる。続いて取り出したアイテムは、最近もらったマンボウ属の脊椎骨。マンボウ属の骨は柔らかい。包丁で簡単に切れる。マンボウ属の体はほぼ水分でできていると言っても過言ではなく、水分が抜けて乾燥すると、骨は本当で手で簡単に粉々にできるほど脆い。軟骨魚類であるサメやエイなどよりもマンボウ属の方が骨の強度は低いのだが、ちゃんと硬骨魚類である。セカンドさんもマンボウ属の乾燥した脊椎骨を実際に触って、軽いことに驚いていた。

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 セカンドさんが先にマグロ丼を完食するも、私のフードファイトはまだまだ終わる気配がない。ので、食べ終わるまでの間、著書「マンボウのひみつ」と「マンボウは上を向いてねむるのか」を見てマンボウの知識を入れて頂く。実はセカンドさんが一番気になっていた「マンボウは3億個の卵を産む」に関する話は「マンボウのひみつ」に既に書いており、私が話をする前に解答を知ってしまうことになってしまった。

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 何とか完食するも、お腹の中はマグロだらけ。急には動けないと悟り、私はしばらく放心状態でお腹を撫でて癒していた。セカンドさんはそんな私を見て笑い、本に目を通して楽しまれていた。

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 もしかしたら今日はマンボウ蕎麦のワンチャンがあるかもしれない。お腹はいっぱいであるが、マンボウ蕎麦は別腹。店からのリプがないかtwitterを時々チェックする。セカンドさんは本を読み進める。結局、マンボウの話を交えながら食べ終わるのに1時間ほどかかっていた。

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 著書を2冊とも購入して頂けることになったので、私はサインを描き、その間、セカンドさんには私が頼んだマンボウの絵を描いてもらう。著書を購入して(もしくは持参してもらって)目の前でサインを描いてもらえるのはレンタル博士の大きなメリットと私は考えている。

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 セカンドさんに描いて頂いたマンボウの絵。描いてもらった絵は一人ひとり違ってなかなか味がある。

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 私が描いたサイン。こちらも毎回同じようには描けないので、その時その時の味が出る。

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 12時半になり、コロナ禍と言えど、Gotoで休日の店内には人がたくさん入ってきていた。お昼はセカンドさんにご馳走になり、店から外に出た。

 この日はとても良い天気で、セカンドさんは最近、全然海に行っていないとのことだったので、漁港の周りを話をしながら適当にブラブラすることにした。移動販売車のクレープ屋をやっているセカンドさんの話も聞く。今年はコロナで基本的にあちこちの祭りが中止になってしまったため、今は別の仕事をしているそうだ。移動販売車でマンボウ料理が出せたらいいなと夢を語る。

 歩いていると、船のバルバスバウ(どこのことかわからなかったらググってね)が目に付いた。これはウシマンボウの大型個体の下顎下の形状とよく似ているとセカンドさんに説明する。町の中にあるものとマンボウを結び付けて話をするのもなかなか面白いかもしれないと思った。

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 さらに歩いていると、2尾の魚が一緒に泳いでいるのを発見! ハコフグだ! ハコフグはマンボウと同じフグ目の仲間。ハコフグには尾鰭があるがこれはあまり使わず、マンボウと同じく背鰭と臀鰭を同じように動かして主な推進力を得ている(ハコフグは胸鰭も推進力に寄与している)と、セカンドさんに解説。水族館でもないのに、マンボウの泳ぎ方を解説するネタが外で見付かるとは何だかラッキー。

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 それにしてもこの2尾は雌雄のペアなのだろうか? マンボウも2尾で泳いでいることがあると漁師から聞いたことがあり、漁師曰くそれは雌雄のペアだと言う・・・が、私はあまり信じていない。そう言えば、マンボウはペア産卵なのか集団産卵なのか、繁殖方法は未だ謎に包まれている。


 富士山をバックにハコフグが泳いでいる写真なんて他に撮ったことがある人はいないのではなかろうか。なかなかレアな光景を見られて今日は外を歩いていてラッキーだった。

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 アラフォーのおっさん二人で漁港をブラブラ歩いて休日デート。傍から見ると渋い顔をされるかもしれないが、これはこれでなかなか楽しい。私はマンボウについてあれこれ話し、セカンドさんはそれを楽しそうに聞く。悪くない、まるでブラタモリみたいだ。

 漁港周りをブラブラと30分ほど歩いて少しお腹も引っ込ませたので、駅前に戻り商店街も少し散歩する。その後、ドリンクバーのあるサイゼリヤへ。


 13時半過ぎ。お昼の最盛期を過ぎたサイゼリヤで広いテーブルの席を確保し、持ってきていたマンボウ同人誌やグッズを展開する。この時点でもうマンボウ蕎麦のことは諦めていた。

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 ここではイタリアンプリン(固いプリン好きです)を食べながら同人誌やグッズの一つ一つを解説していく。

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 セカンドさんが知りたいと思っていたマンボウの都市伝説の真偽については既に同人誌にまとめていたので、それを読んで頂き、さらに気になることは私に聞いて頂いた。都市伝説の厄介なところは、完全な作り話ではなく、本当の科学知見も織り交ぜて、いかにもありそうな話に仕立て上げられているところである。例えば、「マンボウは寄生虫を落とすためにジャンプした後、着水した衝撃で死ぬ」という知見は、「マンボウは寄生虫を落とすためにジャンプ」は科学的にも推測されている仮説であるが、「着水した衝撃で死ぬ」は全くのデマである。

 同様に「マンボウは一度に3億個の卵を産むが、生き残るのは2匹」という話も真実と偽りが混在して都市伝説化している。科学的に正しい知見は「マンボウは3億個の卵を卵巣内に持つ」であり、それが改変され、付け加えられている他の部分は根も葉もないデマである。マンボウはたくさんの卵を産んでも生き残るの数は少ないというイメージは確かに正しいと思うが、生存する具体的な数字は全くわからない。

 同人誌の内容で話は弾んだ。今年は同人イベントで全く販売することができなかったが、セカンドさんはいくつか気に入った同人誌を買いたいと購入して頂けた。

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 続いて出したのは恒例となるマンボウの干物である。水族館でマンボウは見ることはできても、実物はなかなか触ることはできない。思う存分実物のマンボウを体感してもらう。この干物からわかる、マンボウと同定できる形態的特徴をセカンドさんにわかりやすく教える。マンボウ型魚類はすべてマンボウMola molaだと同定する人は、まだまだ世の中にたくさんいる。セカンドさんがマンボウと触れ合う機会はもうないかもしれないが、こうして地道に正確に分類できるポイントを人に伝えていくことは大切だと私は考えている。

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 同人誌やグッズの話を終えると、今度はパソコンで今まであちこちで講演してきたプレゼンや秘蔵の動画をセカンドさんに見てもらう。この動画は未発表であるため、見せるのはレンタルして下さった方限定だ。マンボウの連続ジャンプする映像にセカンドさんのテンションも上がる。

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 この時、先週マンボウ蕎麦を我慢して書いていた、ちょうど投稿中の最新の論文もお見せした。ちなみにこの論文は2020年12月1日に出版された。


 13日半から16時までマンボウの話をあれこれお話しして、セカンドさんの頭がマンボウで満たされた頃、今回は特別なものを持ってきていた。それはマンボウとヤリマンボウの食べられる干物だ! もう一度言おう

マンボウとヤリマンボウの食べられる干物だ!

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 最近入手する機会があったマンボウとヤリマンボウの肉に塩コショウをかけ、ひたすら部屋干しして乾燥させた代物。もしカビとかが生えていた場合でもお腹を壊さないよう、家を出る直前にレンジでチンしてきた。魚肉とは思えないほど、乾燥していてものすごく固い。水で戻しながら食べることをおススメした。今回初めて作ったのでどんな味かはわからないが、早速一緒に試食する・・・

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 ・・・うん、失敗だ。私は料理に自信がない。塩コショウをかけ過ぎたようで、水で戻しながら食べても塩コショウの味しかしない。食感的にはスナック菓子?というくらいパサパサしていて、硬くて肉感が全くない。マンボウとヤリマンボウ本来の肉の味が完全に失われていた。全然美味しくないですねと二人で笑い合った。しかし、セカンドさんはマンボウとヤリマンボウの肉を食べたことがある!と人に自慢できると私は力説した。

 楽しい時間はあっという間に過ぎてゆく。夕陽が沈み、外が暗くなってきた16時過ぎ。セカンドさんからの質問もなくなったので、ここで今回のレンタル博士は終了とすることにした。セカンドさんも満足したと満面の笑みだ。カフェ代はおごって頂き、レンタル料と往復交通費を合わせてありがたくレンタル博士料をいただく・・・あれ? 金額が多い・・・「研究に役立てて下さい」とセカンドさん。チップだ。上乗せ大歓迎とは言っていたものの、まさか本当にチップを頂けるとは・・・私は支えられている・・・思わず胸が熱くなった。無職なろうとも、マンボウ研究に興味を持ち、支援して下さる方がいる限り、私はマンボウの研究を進め、論文を書きまくろうと改めて心の中で誓った。

 店の外に出て、これからはどうするのかとセカンドさんに聞いたところ、もう少し駅前を見て回りたいとのことだったので、近場のスーパーに案内してローカル品を紹介した。魚売り場で一応マンボウを探してみたが、やはり売っていなかった。マンボウを食べられる機会なんて早々あるものではない。商店街を二人で見て回る。夕飯をどこかで食べても良かったが、セカンドさんに聞くとまだお昼のマグロがお腹の中にいるとのことだったので、歩き回るだけにした。地下通路に差し掛かった時、偶然にも壁にマンボウの絵が描かれていることに気付く。背鰭と臀鰭が普通のマンボウよりも少し長いように見えたので、これはどっちかと言うとウシマンボウの未成魚ぽいですねと解説する。ウシマンボウの未成魚はまだ頭部と下顎下の隆起が発達していないのだ。

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 17時過ぎ。商店街を一通り歩き終え、すっかり夜になってきたので、セカンドさんを見送りに駅の改札へと向かう。「またいつか会いましょう」とセカンドさん。Twitterではいつでも会えるが、近場に住んでいないのでリアルで会うことはなかなか難しい。貴重な休日を楽しんで頂けたのなら、私はそれ以上言うことは何もない。10時~17時半の7時間。今回もたっぷりマンボウのことを語ることができて私も楽しかった。かくして、2件目のレンタル博士のクエストは完了した。

【感想】

 前回の初めてのレンタル博士からちょうど1ヶ月後に実施した2件目のレンタル博士。まさかこんなに早く次の依頼が来るとは思ってもいなかった。レンタル博士が続けられるのは非常に嬉しい限りである。今回、初対面のおっさん二人のデートだったが、趣味の合う人と話をするのは普通に楽しい。私は老若男女問わず依頼を受け付ける。私は小市民なので、ついついプライベートマネーでおごって頂くことに若干の後ろめたさを感じてしまうが、潔く「ありがとうございます!」とおごって頂いた方が依頼者の方も気持ち良く推して頂けるのではないかと今回実感した。今回、コロナ対策として、マスクに加えて、フェイスシールドもして街中を歩いたり、店に入ったりしていたが、特に周りから変な目で見られることはなかった。コロナ禍はまだしばらく続くと思われるので、お互いに感染しないよう注意しながらレンタル博士を実施しなければならない。今回、飲食店で油断しがちになったので、今後はフェイスシールドをしながら食べた方がいいかなと少し反省した。

 最後に、企業の依頼を受けることと勘違いしている人も多かったので、ここで改めて私の考えるレンタル博士の概要を提示したい。自由にアレンジしてレンタル博士をやって頂ければと思う。現世を彷徨うポスドクの参考になれば幸いである。

・「レンタル〇〇する人」は調べるとたくさんいることがわかったが、「レンタル博士を名乗ることができるのは博士号取得者のみ」。博士課程の学生や特定の分野に詳しい人も博士号を取得していないのであれば、レンタル博士と名乗ることはできない(他の名称にして欲しい)。これにより他の「レンタル〇〇する人」と差別化し、博士(ポスドク)の価値を高める。
・知を求める者同士のやりとりなので、依頼のことは「クエスト」と呼ぶ(カッコいいから)。
・レンタル博士は基本的に1対1(~多くても5人程度まで)を対象する個人的な有償レンタルサービスであって、企業や組織からの依頼はレンタル博士とは言わない。実験の手伝いなど雇用が発生する「The仕事」という場合はレンタル博士の範疇を超えるため、別種の依頼として扱って欲しい。
・もう少しネットの皆様と協議したいが、今のところレンタル料の相場は日給1.5万円(交通費・食費などレンタル中に発生するお金は別)になりそうだ。さらに推したければ上乗せでチップを渡せば喜ぶ(少なくとも私は)。
・場所や内容は博士と依頼者の間で相談して決めるが、基本的にはブラタモリみたいなおしゃべりしながら楽しくデートという感覚でいきたい。無理なく気軽に、お互いに楽しくやるのが一番重要。

 この活動をより多くの人に知ってもらいたいので、面白いと思った方は是非広めてくれると私は嬉しい。

 こんな感じで、私を個人レンタルしてみたいという方がいれば、twitterかホームページからご依頼お待ちしていまーす! 



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