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「このうえない喜びも、出口の見えぬ悲しみも」 ドラマ『大奥』名言メモ
お正月かと思ったら、もう1月も後半。
年始は、仕事のエンジンがかからないまま、ぼんやりしていましたが、そろそろ現実世界に戻らねば、と思った今週でした。
さて、2024年すら振り返るのに間の抜けたこの時期に、2023年を振り返りたくなってしまいました。お付き合いくださいませ。
2024年に観たうさみみ的ドラマ・映画ランキング1位は、何と言っても『マンダロリアン』ですが、2023年にみたドラマ・映画ランキング1位は、NHKで放送した『大奥』なのでした。
よしながふみさん原作のこの作品。原作・ドラマともにファンが多い作品なので、説明不用かもしれませんが、ひとことでいうと、男女逆転した大奥の世界のお話です。
つまり、女将軍に仕える美男揃いの大奥ということ。
過去には、TBSのドラマ版でも放映されましたし、男女逆転してないタイプの大奥もフジテレビ版が存在しますが、私はこのNHKのシリーズが好きです。
で、2024年の年始にこの『大奥』の再放送がやっていたので観たら、やはり心を持って行かれてしまったのでした。
ドラマでは、家光、綱吉、吉宗と各将軍が主役のお話を3話くらいずつで展開していきます。
どの将軍の回も素晴らしかったですが、やはり家光編が特別に好きですね。
ここからは、家光編のあらすじです。
徳川の3代将軍家光の時代に、謎の奇病「赤面疱瘡」が流行ります。
この奇病は、若い男性だけにかかり、死に至る病気です。
家光がこの「赤面疱瘡」で亡くなったとき、世継ぎになる者がいませんでした。春日の局は、家光の死を隠すため、実の息子の正勝を死んだことにして家光の身代わりとさせます。
そして、市中である女児をさらい、大奥に連れてきたのでした。
それが、後に女将軍家光になるちえです。
実は、家光は男色でした。ちえは、家光が市中で気まぐれに強姦した女性の間に出来た子です。
ちえは目の前で母親を殺され、無理やり大奥に連れてこられて、男装をさせられています。
春日の局は、家光の死を隠している間に、このちえに世継ぎを産ませようとしていたのでした。
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女性としての尊厳は奪われているのに、子を産むための腹をかせ、な状況
つらすぎる…
春日の局の命で、世継ぎのための種の1人としてさらわれてきたのが、見目麗しい僧侶、万里小路有功です。
有功は、修行中の身の上であることを理由に大奥入りをやんわりと断ろうとしますが、春日の局が与えたのは、還俗して大奥入りしなければ、有功も連れも命はないという、選択肢もない条件でした。
大奥入りし、最初は、ちえに辛く当たられていた有功でしたが、ちえの悲しい運命を理解し寄り添います。
やがて2人は愛しあうように…。
と、ここでやっとハッピーエンドになったかと思いきや、逢瀬を重ねて1年たっても2人には子ができなかったのです。
ちえは春日の局の命で、他の男と夜を共にし、子どもができたのでした。
つまり、不妊の原因は有功にあったことがわかってしまったのです。有功は種なしだ、と大奥の男たちに噂されます。
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平気なようにふるまいながらも、有功の心は穏やかではありません。
一方、ちえの方は
できてしまえば、我が子はかわいい。
お楽(子の父親)のことは、好きとも思わないが憎くはない。
思えば、戦乱の世の女たちは、夫と死に別れたらまた別の男と子をなしたのだ。
と有功に語るのです。
有功は、部屋子の玉栄にだけ、弱音を吐きます。
「上様のお相手は有功様しかいない」
と慰める玉栄に対し、
「上様は変わられた。母になったからだ」
と有功は言うのでした。
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母親になった者だけが知る強さ。
母になったことがない私には、とってもまぶしいです。
非道にみえる春日の局も、家光の母としての強さからくる行動なのでしょう。彼女にとっては、再び乱世の世にせぬための行動なのでした。
春日の局が亡くなったとき、実の息子、正勝がこう言います。
「母でございましょう。鬼にも仏にもなる者は」
さて、ちえと有功の関係に話を戻します。
ちえとしては、別の男と子をなしても有功をパートナーとして考えていました。妊娠したので、ミッションの第一関門突破。やっと有功と逢瀬がかなう!と有功を床に誘います。
しかし、有功は「どうか、男女の業から私を解放してください」と言うのでした。
有功にとっては、「子をなすことはできなくても、心は通い合ったパートナー」として大奥で存在するのは酷なことなのでした。
涙を流しながらも、「わかった、少し時間をくれ」とちえは言います。
そして、有功を大奥総取締役に任命したのでした。
その大奥総取締役就任の挨拶で、有功は皆にこう言うのです。
私の恥ばかりの人生、皆もよく知っておることと思う。
ここにきて、さまざまな思いを味わった。
このうえない喜びも、出口の見えぬ悲しみも。
嫉妬、羨望、孤独
それはここにおる限り、皆が味わうものであると思う。
その思いに寄り添い、乾きを癒し、
涙を洗い、ときに四季をうつし、慰め、
水の流れのように、ここにありたいと望んでおる。
いささかぼんやりとしておるが、皆、受け入れてくれるか。
このシーンは、何度観ても涙が出てしまいます。
「このうえない喜びも、出口の見えぬ悲しみも」
この言葉はシーズン2で最後の大奥取締役となった瀧山の口からも出てくる言葉です。
大奥取締役になった有功は、大奥の男たちにそれぞれの役目を与えました。
大奥にいる男たちのうち、上様の寵愛を受けられるのは、ほんの一部の人間です。
己には子をなすことだけではなく、果たすべき役割がある。
それがどれだけ大奥の男たちの心を救うのか、有功は痛いほどわかっていたのでしょう。
そして、学問や行事の場も設けました。それは、大奥の男たちだけでなく、ちえの心も和ませるのでした。
学問、娯楽、それは人生の慰めなのですよね。
この頃には、ちえは名実ともに家光公として存在しています。女が家督を継げるようにもしました。有功は、大奥取締役として、家光公となったちえを支えていくのでした。
生き物である以上、子孫を残すことは大事な使命のうちのひとつ。
しかし、子産みという呪縛を抱えているのは人間だけかもしれませんね。
他の動物たちは、子をなせない個体が何を思うのか。聞いてみたい気もします。
人間も、ただ、ひたすらに自分が生き残ることに集中できたらいいのに。そんな風にも思います。
【おまけ】
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かっこよすぎ
ここ、ランウェイですか!って