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漫画で古典!

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平安時代の古典文学とそれにまつわるアレコレを漫画と記事で紹介します^ ^
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記事一覧

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 「宇治十帖」で語られる“身代わりの恋“の意味

光源氏の死後の世界を描く「宇治十帖」。 宇治の大君、中の君、浮舟といった新たなヒロインたちが登場しますが、どの人も皆誰かの”人形”、つまり身代わりの女性です。 誰かの代わりに愛されるのは辛いことと思われますが…紫式部は一体どうしてそのようなモチーフを繰り返したのでしょう? (※いつもより少し長い記事なので、試みに後半部分を有料記事にしてみました…!値段は初めてなので100円で。もしご興味のある方がいらっしゃいましたら最後までご覧いただけるとうれしいです!) 光源氏一族の

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【漫画】「望月の歌」ってどんな意味? ー 藤原道長は傲慢な歌を詠んだわけではなかった!?

平安時代の有名人、藤原道長の和歌 ー この世をば 我が世とぞ思ふ望月の かけたることもなしと思へば ー。 摂関政治の絶頂を極めた彼が、「この世は自分のものである。望月に欠けたところがないように私にも欠けたところがないのだから…」と自らの栄華を誇りに詠んだ傲慢な歌と言われてきましたが、果たしてそうなのでしょうか? 近年この和歌に新しい解釈がなされ、私たちにこれまでと異なる道長像を見せてくれています。 この「望月の歌」の新釈は、当時の政治状況とそこに関わるキーパーソン・藤原実

【漫画】11月1日は「古典の日」! ー 『紫式部日記』からくる由来とは?

11月1日は「古典の日」!今回はその由来となった『紫式部日記』の記述をご紹介します!(番外編のつもりなのでいつもよりちょっと短め。気軽にたのしんでくださいね) 「古典の日」の由来となった『紫式部日記』公任のセリフ このとき生まれた敦成親王は、のちの後一条天皇。 紫式部の主人である中宮彰子やその父・藤原道長にとって、入内以後9年間待ち望んだ男の子です。 その誕生50日目の五十日の祝は大変おめでたい席でした。 当時最大権力者のもとに生まれた未来の天皇のお祝いですので、身内だ

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 源氏を苦しめた「女三の宮」というキャラクター

「『源氏物語』は「若菜」からー」と言ったのは、故・国文学者で歌人の折口信夫氏だそう。 『源氏物語』は第34帖「若菜」から第二部に入るわけですが…そこでは中年となった光源氏の人生の苦みや悲哀が色濃く描かれ、キーパーソンとして女三の宮という人物が登場します。 藤壺まで紹介した前回の記事から少し話がとんでしまうので(後でまた戻りたいと思っていますが)まずは「若菜」までの『源氏物語』のあらすじをざっくり確認いたしましょう。 『源氏物語』の第1部は、栄華の物語です。 葵の上や藤壺と

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 藤壺は源氏を愛していたか

源氏の初恋の人にして生涯の想い人であった藤壺。彼女は源氏のことをどう思っていたのでしょう? 藤壺は源氏の5歳年上の継母。源氏の母・桐壺更衣が亡くなった後、源氏の父・桐壺帝に入内した人です。 源氏との二度の密通の上妊娠し、不義の子(のちの冷泉帝《れいぜいてい》)を産みました。 度々忍んでくる源氏に冷たい態度を取り、源氏との不倫の関係を断つため出家までした彼女ですが、それは源氏を嫌ってのことだったのでしょうか? 藤壺と源氏の関係 ー 継母への禁断の行為 源氏と藤壺の出会い

【漫画】平安時代の出産って? ー 大音響の中命を懸けて ー

医療のない平安時代、出産はまさに命懸け! 当時の人々にとって出産はどのようなものだったのでしょうか? 平安時代、出産で亡くなる女性も多く、母親の5人に1人が命を失ったと言われています。 また子が流れてしまうこと、産まれても幼くして亡くなってしまうことも少なくなく、母子とも健康は50%以下という説もあるようです。 当時、病気や死は物怪の仕業だと考えられており、邪気を祓うため数多くの儀式が行われました。 そうした儀式の中行われる出産はどのようなものだったのか、まずは上級貴族の

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 身代わりとして求められた少女・若紫 ー

『源氏物語』の女主人公とも言える紫の上。 少女の頃若紫と呼ばれた彼女は、藤壺の代わりとして連れられた、心細い立場の人でした。 源氏が若紫と出会ったのは18歳のとき。 この頃の源氏は、正妻・葵の上や六条の御息所ら恋人がいながら、義理の母・藤壺女御への叶わぬ恋に苦しんでおりました。 そうした中思いがけず発見した藤壺に似た少女・若紫に源氏は執着していきます。 10歳のときに源氏に見初められ、人生の大半を源氏と共に歩んだ若紫。 彼女の人生は源氏と出会ってどのように変化したのでしょ

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 「桐壺」は”100年前”の物語!? ー

紫式部が書いた『源氏物語』の第一帖「桐壺」。 その物語の時代が、彼女の生きていた頃よりさらに100年も前に設定されているということはご存知でしょうか? 「桐壺」巻では、桐壺帝と桐壺更衣の恋、光源氏の誕生、藤壺女御の入内など、物語の進行において重要なポイントが次々と語られてゆきます。と同時に、物語の舞台がどのような世界なのか、具体的に示されている巻でもあるのです。 ですがその示し方が、1000年後の私たちにはちょっとわかりづらい…! そこで今回の記事では「桐壺」のあらすじ

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 「いづれの御時にか」の革新性! ー

古文の授業で必ず触れる、『源氏物語』の冒頭「いづれの御時にか…」。 実はこの一節、それまでの物語とは一線を画す、革新的なフレーズだったのです…! 『源氏物語』は世界最古の長編小説であり、千年も前に一人の女性の手によってこのスケールの物語が書かれたというだけでも評価されるべき存在です。しかし、『源氏物語』のすごさは”長さ”だけではありません。 『源氏物語』は、その冒頭で、全く新しいジャンルの文学を生み出したといってもいいくらい革新的なものでした。 当時のほかの物語等と比較し

【漫画】和泉式部ってどんな人? ー 恋多き女性の隠れた魅力 ー

平安時代中期の歌人・和泉式部。 2人の夫をもち、2人の親王と恋仲になった”情熱的”な女性と評されますが、それだけでない、隠れた魅力がありました。 実を言うと、私は和泉式部がかなり好き。 彼女の人生をたどり『和泉式部日記』を眺めることで、華やかな恋愛遍歴の奥にある人間的な魅力に迫りたいと思います。 為尊親王との出会いで花開く、和泉式部の和歌の才 和泉式部といえば、まずその和歌の才に目がいきます。 『源氏物語』の作者であり、和泉式部の先輩女房であった紫式部も彼女の才能に一目

【漫画】『枕草子』ってどんな話? ー 定子の最期と清少納言が残したかったもの ー

辛く悲しいことには触れず、中宮(のち皇后)定子さまとの華やかな日々を描いた『枕草子』。当然、定子の最期の瞬間は記されてはおらず、亡くなる7ヶ月前の端午の節句について書いた「三条の宮におはします頃」という章段が最後の姿となっています。 この頃定子は、一条天皇との3人目の子・媄子を妊娠中(長保2年(西暦1000)年の2月、長男・敦康親王の百日の儀のために参内しているので、そのとき身籠ったのでしょう)。 この章段で清少納言が「籬越しに」と言って”青ざし“を出したのは、つわりで食の

七夕の夜は水面に星を映して ー 平安時代の七夕と男女を結ぶカササギの羽根 ー

7月7日は七夕の日。いまでは願い事を書いた短冊を笹に吊るすのが一般的ですが、昔の人々はどのようにこの日を過ごしたのでしょう。 今回はいつもの古典シリーズの番外編として七夕についてお話ししたいと思います。 日本の七夕の由来 ー 三つの行事が合わさった 七夕、七夕と言いますが、そもそもなぜ「七夕」と書いて「たなばた」と読むのでしょうか。 その理由は諸説あるうようですが、日本の七夕は、中国の乞巧奠と日本の棚機が合わさってできたためと言われています。 乞巧奠は、女性達が機織りや

【漫画】『枕草子』ってどんな話? ー 雪山の賭けと定子の復帰 ー

内裏を退出してから1年後、中宮職の御曹司に住むこととなった定子。 中宮職の御曹司というのは中宮に関わる公務を司る役所のことで、内裏の外・大内裏の内にありました。長徳の変で髪を落とした定子は、倫理的・政治宗教的な理由で内裏に戻ることが許されず、不安定な立場に置かれます。 史実では夫である一条天皇も定子のもとに通うことはなかったようで…公卿たちから厳しい批判があったのでしょう。 しかしそのような中でも定子サロンは華やかさ保ちつづけ、ある”賭け“を始めました。その様子を描いた「

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 唐物に囲まれた醜女・末摘花 ー

長く垂れた鼻先が赤いことから”末摘花”と呼ばれたこの女性。 『源氏物語』随一の醜女として有名ですが、実際どんな人なのでしょう? 醜女で不器量だった末摘花 『源氏物語』では登場人物の要望が詳細に書かれていることがあまりないのですが、末摘花に関してはかなり詳しく描写されています。 第6帖「末摘花」より該当部分を抜き出してみましょう。 源氏は、前年に夕顔を亡くして以来、「どうかしてたいそうな身分のない女で、可憐で、そして世間的にあまり恥ずかしくもないような恋人を見つけたい」と