知らないふりの黄昏
空の色は水色なのに雲の色は夕陽の色に染まって濃い橙色で
大地に近い空は確かに橙色だけど大地から離れるとまだ水色なのに
どうして雲は空の色には染まらないんだろうって
それじゃ空がひとりぼっちみたいだって
大地のそばで夕陽に染まっているのもやっぱり空なのにどうしてって
君はそう言って目を伏せた
雲の色はその間にも夕陽の色を忘れて夜の色に移っていって
風に乗って流れていって
僕らが見ている四角い窓で切り取った空は水色のままひとりきりになる
この四角い窓で切り取らなければ空は果てがなくて自由なのに
僕たちはこの窓の中に空を閉じ込めて空を孤独にさせるんだ
それなのに僕たちは気まぐれに窓のそばから離れていって
ひとりぼっちの空のことなんか忘れてしまう
君が寂しいと思ったのは空じゃなくて君の心
四角い窓で切り取らなければ空を空だと認識できない僕たちは
すべてに自分を重ねているだけなのにわかったような気持ちになる
だから空をひとりぼっちにさせても平気なんだ
君の寂しささえ埋めてしまえば
君が美しいと呟くのは君の家の窓で切り取った空
僕の家の窓から見える空は向かいのビルのガラスの中
本当の空を誰も知らない
だから空はひとりぼっち
果てがなさすぎて広すぎて誰も掴もうとしない
空が泣けば窓を閉めてカーテンを閉めて空を追い出す僕たちが
孤独の何を知っているのだろう
空は寂しいと言って泣く君の涙は空を映さず君だけを映す
自分の家の窓から見える空だけを空だと思っている君が
自分の家の窓から見える空だけを綺麗だと思っている君が
綺麗だと呟くその空は
いったいどこに在る空なの
きっと空にもその声は届かないし届かないから意味はない
空をひとりぼっちにさせたのは僕たちなのに
君も僕もいつまで知らないふりをするの
君のためにしか泣かない君は
僕が空に吸い込まれてどこに在るかわからなくなったら
きっと自分の家の窓から見える空の中だけで探そうとするから
君が空に吸い込まれても僕は君を探さない
君の涙が落ちてきたら僕たちは窓を閉めるだろう
空に吸い込まれた君はどこにでも行けるのに
本当の空も本当の美しさもすぐそばにあるのに
あの四角い窓の中だけをまだ空だと思っている
だから君の寂しさなんて空にも僕にもわからない
夜の色に染まる雲は気まぐれな風に乗って
君の窓の中は君ひとりだけ
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