毎日の生き方
昔、キャバリアという種類の犬を飼っていた。
正式名称は、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルという呪文みたいに長くて、やたら偉そうな名前。
品種改良を愛玩犬としてされてきたという犬だけあって、とにかく見た目はとてもよろしい。かわいい。耳が長くて、ふわふわの毛。しっぽもふわふわ。常にヒラヒラしている。愛想がよくて、いつもご機嫌。食い意地がはっていて、食べ物をみると、我慢できない。飛びついて食べたくて仕方がない。
「キャバリア」とYouTubeで検索すると、世の中のキャバリア犬を飼う人達の犬動画がたくさんでてくる。
その動画を見ていて、私が飼っていたころと犬の愛し方や、時代は変わったものだなと思う。
でも、私にも今の人たちとも共通しているのは、みんな自分の飼い犬のキャバリアに、メロメロで、かわいくて仕方がない様子なこと。
そのキャバリア犬動画を最近よく見る。
テレビもネットも、暗いニュースが多く、気持ちが沈む。最初は「怒り」を感じていたウクライナの戦争も、「悲しみ」「苦しみ」の方が上回って、気持ちの平衡が保てなくなっている。
テレビのニュースをつけるのをやめて、ネットも問題のニュース記事を避ける。
もっと知らなくてはならないと思う。何があったか日本のメディアでは、偏りのあるニュースしか得られないとしても、できる限りの努力をするべきだと思う。でも(本来の自分の気持ちとは反するのだけども)、意図的に篩にかけて見るニュース、読むニュースを選ばないと、安定したメンタルで日常生活がおくれない。
苦しみを現実のものとして生きている人たちと、連帯意識を持つことはとても大事なんだけど、自分が破綻してしまう。自分と他者との境目が曖昧になっていって、自分の不安感が日ごとに増していく。
そういうときによく見るのが、キャバリア犬動画。
平和ゆえにある騒動や日常。
キャバリア犬の多頭飼いを始めた飼い主が、実に楽しそうにカメラをまわしている。先輩わんこにちょっかいを出しまくる、子犬の後輩わんこ。元気いっぱいの子犬は、先輩わんこにかまって欲しくてたまらず、周りをちょろちょろ、耳を引っ張ってふがふが、のしのしと乗っかりと、一時も大人しくしていない。
先輩わんこが、ストレスでおかしくなるのではないかと、見ていて心配になるほどだ。
こんな光景は、平和であれば、どこの国でも、どんな地域でも、どんな人でも楽しいのに。
なんだか余計に寂しく、虚しくなることもある。
一服の清涼飲料水的な存在として、キャバリア犬動画を見る。
また一呼吸をして、毎日を生きる。
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