中華文人食物語感想
表紙にはつやつやとした豚の角煮の絵が描かれている。中華というからこれ中華角煮、いわゆるトンポーローなのだろう。
本屋でこの文庫本を見た瞬間に高校時代の担任を思い出した。その担任は、自己紹介で「僕のことはせーさんと呼んでください」と言うような、あまり教師らしからぬ人だった。
ある時せーさんは
「僕はトンポーローの作り方を話して教員採用試験に受かったんですよ」
と話し始めた。
トンポーローと日本式角煮の違い、皮をつけたままの下ごしらえから始まり、八角で香りをつける事まで詳細に説明して面接試験は終わったと言う。どうしてトンポーローの話になったのかは、聞いたが忘れてしまった。面接官も通り一遍の志望動機に飽きていたのかもしれない。
それで試験に合格したのだから結果オーライである。
さて、そのトンポーローだが、トンポー(東坡)さんの作った豚の煮物である。麻婆豆腐みたいなもんである。
東坡さんは豚肉が大好物だったらしく中国各地に様々な東坡肉があるとのこと。
役人だったが政権闘争に巻き込まれて何度も僻地に左遷されたらしい。しかしその土地土地で美味しいものを見つけては舌鼓を打っていたようである。
転んでもただでは起きないタイプのようだ。
肉だけでなく、東坡魚、東坡豆腐等、名前の付くレシピが色々ある。
東坡さんは飲食に関する詩を大量に作っており、そのため名前の付くレシピが多く残っているのだ。
台所に五香粉が余っているけど、五香粉でトンポーローになるかな。