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脱力は逆から考えてみる

脱力して弾きたいと思う。その時、邪魔になるのが頭の中にある「弾く」ことの自分なりのイメージだ。これくらい力を入れて、こんな動きをしないと弾けない。そういうイメージがあるので、なかなか力が抜けないのだ。

「力を抜く」ということを目標に定めるなら、一旦完全に力を抜いてみる。

特に、チェロの左手は、脱力というのは言葉のニュアンスが少し違っている。

チェロの左手を押さえないという場合、腕を浮かせる。腕を宙に持ち上げて弦に重みを乗せないということになる。これは腕を維持するために力を使っているのだ。

そこからすこしずつ、腕の重みを乗せていく。脱力していく。
力は、押さえるためではなく、腕や肩のコントロールのために使う。
それで、どれくらい腕の重みを乗せると弦は指板につくだろう。
そして、どれくらいの加減になった時に初めて、いい音が鳴るだろうか。

一度、いい音を出すための最小限の腕の重みはどれくらいなのかを体感する。それを見つけたら、安定してその最小限の力でスケールや簡単な曲が弾けるようにしてみる。思ったよりも軽い重みで弾けるはずだし、これでいいのかと分かれば軽やかに動かせる。

押さえるというより、載せるイメージだ。音の歯切れをよくするためにはパシっと叩くとよい。

この最小限の左手の押さえ具合が馴染むと、速いパッセージが大変弾きやすくなる。

もちろん、いつもこれで弾くということではなく、豊かなビブラートのために指の腹で押さえたり、ブリブリフォルテッシモのためにしっかりと押さえることもあってよい。

要は、最小限の力でいい音を出せる極限を見定めておくと、幅が生まれるということだ。


これは、習いたては難しいのかもしれない。音程やボーイングがある程度安定してきたころにやるといいのかな。

弦は押さえるというより、ともかく指の触れている所で振動が止まっていればいいのである。指が触れて、重みが乗っている。
シュタルケルとかトゥルトゥリエとかは、パシパシと指板を叩いている割には、そのあと力が抜けているので軽やかなのだ。叩かないですごく滑らかジェントルに押さえるタイプの人もいる。それは好みだ。
力を入れているように見える人もいるが、上手い人は抜けている。必要な分の重みしか指には載っていない。
何事も実験。

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