鉄下駄【詩】
靴がない
誰かが間違えて
私の靴を履いていったらしい
とにもかくにも
私は靴を履いて帰らねばならない
待っていれば
似たような靴が残るはず
そう推測したのだけれど
皆が出ていって
残った一足は
鉄下駄だった
私が履いてきたのは
オレンジ色のスニーカー
鉄下駄を履いてきた者が
間違えてスニーカーを履くだろうか
否、そんなことはありえない
スニーカーと鉄下駄をつなぐ
他の履き物が存在するはずだ
底の厚いランニングシューズと間違えて
私のスニーカーを履いていった者がいて
パンプスと間違えて
厚底ランニングシューズを履いていった者がいて
ハイヒールと間違えて
パンプスを履いていった者がいて
鉄下駄と間違えて
ハイヒールを履いていった者がいたとしたら
鉄下駄が残されていることの説明がつく
今はまだ
誰も気付いていないかもしれないが
足に合わない履き物で
豆を作ったり、靴擦れに苦しむ者が
何人も出てくるかもしれない
そしてなにより
私はこの重い鉄下駄を履いて
家にたどり着けるだろうか
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