入れ歯を入れて体重が戻った話し。
【本人の情報】
女性90才のかた。杖歩行。身だしなみをとても綺麗にされている。
デイサービスのお迎え時、家族からこんな相談があった。 最近作った入れ歯が合わないようで入れようとしない。 食事を普通に出すと、入れ歯がないから噛みきれないって怒るし、かといって柔らかいご飯を出すと、なんで自分だけこんなものを食べさせられるんだと怒る。説明しても納得しないし、だからといって入れ歯もいれない。 歯医者さんに相談したら、慣れるまで痛いし、この状況で入れ歯を作りなおせるかわからない。作り直したとしても使用するか保証できませんよと言われた。そんな状況でご飯食べないこともあって体重も減ってきているし、どうしたらいいでしょうか?私たちが言っても全く聞いてもらえなくて。 との相談。
家族以外の他人が言えば使ってくれるんじゃないかと思ってとのことで、
「わかりました。使用できるようになるかは本人次第ですが、つけるための方法を考えてみます。必ずうまくいくとは限りませんが、ご本人が疲れないようであれば、今週一週間デイに来ることは可能ですか?」
と尋ねると是非お願いします!との返事であった。
さてここからが大変。
どうやれば本人が納得して入れ歯をつけてくれるだろうか?
本人にもわかりやすくメリットのある声掛けはどういう声かけなのか?
家族は入れ歯がないとご飯食べれないよ!
入れ歯がないと柔らかいご飯だよ!と声をかけているとのこと。
確かにご飯を食べないと命に関わるし、入れ歯がないと窒息の危険も高い。
でも本人にとっては脅されているように感じてしまっているかもしれない。。
では違うアプローチをしてみようということで、
その方の普段の様子を見ていると、いつもちゃんと化粧をしてくる。そしてデイに来るとまず入り口にある鏡で身だしなみを整える。
そして行動経済学の研究によると人間は遠い未来の利益よりも、目先の利益の方を選びやすい
そこでこのように声を掛けた。
【入れ歯入れた方が化粧のりが良いですよ!】
本人が気に掛けている事ですぐに結果が出るこえかけ。
「あら、そう!」
と言って入れ歯を着けようとしてくれました。
ただここで新たな問題が。
新しい入れ歯(ブリッジ)は馴染んでないためか、痛くて入らないと言う。
そこで、少しお手伝いして良いですか?最初なので少しだけ痛いかもしれませんが、着けてしまえば大丈夫です。
と言うと、本当?と不安げながら手伝わさてくれる。
カチッとはまると、痛い!と言うが、
もう大丈夫です、やっぱり入れ歯がある方が素敵ですね!
と伝えると、
「あらそう、ありがとう」
と言ってそのまま着けている。
本人も職員も家族も大喜び。
家でも同様の声かけをすることで入れ歯をつけられるようになり、めでたくご飯も食べられるようになって体重も元通り。
声掛けのポイントとしては、
○行動心理学の人間はすぐ結果が出る(得られる)ものを選びやすいと言うことを意識。
○入れ歯を着ける際に、痛くないですと言ってウソを着かないこと。
痛くないですからと言って入れ歯を着けて、痛い、嘘つきとなってしまうともう信用して貰えない。
認知症についてだけでなく、人間の心理について学んだことが役に立った出来事でした。
ちなみにこの本で学びました。
とても勉強になる本です。
【予想通りに不合理】 ダン・アリエリー
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