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9月の間にアンナチュラルMIU404ラストマイルを駆け抜けたオタクの感想と考察

良かった!!!!!!!
シリーズ通して個人的に感じた野木脚本の肝みたいなところについて喋りたくなったので何かそんな感じの記事です。

普段アニメ!漫画!Vtuber!ってレイヤーのオタクなもんで、実写メディア(とりわけ邦画)に対する免疫低くてなかなか腰が上がらなかったけど、やっと再生したアンナチュラル1話の情報量に圧倒されてあーーーこれ流石に劇場で見届けたいか…に火がついたおかげでようやく重い腰が上がった 上がって良かった…本当に良かった……


アンナチュラル・MIU404 感想

不条理な死という絶望に抗う「アンナチュラル」と誰かが最悪の事態になる前に間に合わせる「MIU404」。
どっっっっっっっちも良かったっっっっっっっっ!!!!!!(大声

強いて言うなら個人的な好みとして纏う空気が好きだったのはアンナチュラル。
(「誰かの死」が起点にあるからこそのミコトさん始めとした主要人物に一定の諦観性がベースにあって諦観の先の諦めきれない感情との向き合い方、みたいなコンセプトが邦画連続ドラマでは珍しい陰気な質感をまとってて肌に合った)
(いやでもMIUの404組はオタクは皆大体大好き(諸説はある)な凸凹構成なので志摩さんが「俺はあいつのことを意外と買ってる」とか言った辺りとかでヘッヒヒって破顔してたくらいにはずっとしっかり好きだったことは伝えておきたい…太陽と月の男2人はいつ何時も美しいって古事記にも書いてるし)

アンナチュラル 各話で特に好きだった回

第4話 アンナチュラル「謎の交通事故死!?ブラック企業に殺された夫!」
ミコト(石原さとみ)は、母で弁護士の夏代(薬師丸ひろ子)からバイク事故で亡くなった男性の解剖依頼を受ける。夏代は、事故の原因は過労による居眠り運転だと疑い、男性の勤務先に賠償金を請求することを考えていた。解剖の結果、死因はくも膜下出血と判明し、ミコトらは過労との関係を調べ始める。

WEB ザ テレビジョン

綺麗な花火を同じ空の下眺めて傷だらけで帰路につく父親のシーンでわんわん泣いた
不条理の中でも父親として子という希望のために頑張るぞ…ってその果ての不条理な結末から物語が展開されていくだけに子のため奮起する切なる思いと温かい景色がもう戻らない現在に対するやるせなさで何かもうわんわん泣いた
血も涙もない嫌なやつだと思われた工場長が更にその上に対して反旗を翻して下請け従業員が総出で事故現場特定に協力する展開の熱さもたまらなかった
何か知らんけど多分アンナチュラルで好きな回で4話挙げる人絶対多いよなという気がするし、何なら野木さんもこの回の手応えをラストマイルに託しているような何かそんな印象もちょっと受けた 何にしても本当にね何かね良い回だったよ…

第8話 アンナチュラル「謎のビル火災!焼死体が語る最後のメッセージ」
ラボに、ビル火災で亡くなった身元不明の遺体が10体運ばれてくる。ミコト(石原さとみ)らが調べると、ある遺体に縛られた痕や焼死する前に殴られたとみられる外傷を発見する。警察は、唯一の生存者が入院している病院に協力を依頼。すると、病院の教授である六郎(窪田正孝)の父親がラボに現れる。

WEB ザ テレビジョン

前科持ちの放浪息子が最後父の背中を見て人を助けていたとかさ……「ただいま」って言える場所だから皆を助けたかったとかさ……いつでも帰ってきて良かったのにね…とかさ…… さ……(大の字
サブエピで展開される屋敷さんと亡くなった奥さんの話もさ…帰してあげたい所長の気持ちもさ…………(横になる
自分が家族ものに弱いとこもあるし、実際野木さんの描写で特に筆のノリを感じてより鋭利に刺さるような気もしてる。とにかく文脈の交錯具合が圧倒的で畳みかけ方エグくて構成的には個人的にいちばん唸った回だった…
ミコトママのお節介が「ただいま」って安心して言える場所に我が家がなれているのか不安だってことに繋がってたり、六郎の父親との確執と向き合ってみたけど「ただいま」とは言わせてもらえなくなったけどUDIの皆から「ただいま」って迎えられる流れだったり、四方八方の家があって血縁があったりなかったりするけど誰しも帰れる場所があって欲しいねって願いみたいな…そういうものが特に詰まった珠玉の名作回だったと思うんだなあ…

アンナチュラル シリーズ全体の所感

中堂さんの過去を軸に恋人殺しの連続殺人犯の行方を追うっていう物語をベースにミコトの過去だったり、六郎の暗躍とその帰結だったり各位のドラマが交錯してうごめく全体構成も良かった〜〜〜〜〜〜
中堂系とかいう男、1話で嫌な奴嫌な奴嫌な奴!ってファーストインプレッション与えて2話の水質から爆速事件現場特定してふーん…かっこいいじゃん…ってさせて3話の男尊女卑検事を前にぶつけてきてスカっとジャパンさせてく痛快さを持って確実に好きにさせてく流れが盤石すぎて、後半ややギャグ要因になって茶目っけ出してくとこにしても存在が狡い男なんですけど、その傍らで久部六郎とかいう男もなんかずっと六郎…六郎さあ………って感じで目が離せなかったし最終回を見届けたときには「うちの六郎はやるやつだって俺は知ってるんだ」って顔をしてしまう力があって双方罪深かったな……
ちなみに自分は中堂さんと坂本さんの関係がほのぼのしてて大好きなので最後元鞘戻ってくれて本当に嬉しかったです。
物語全体をミコトさんというプレーンだけど確かな自我と譲れない意志を持つパーソナルを介して見れたことも本当に大きかったなと感じるし、東海林さんは良い女だし所長は良い上司すぎるしUDI本当に箱推しなんです…ラストマイルであの職場でわちゃつくラボメン見れたのまっじで嬉しかった……

一方でコンセプト的な話になると不条理な死という絶望に抗う物語としての一貫性も強くてそれが何より良かった……
キャラクターの性質上自ずとミコトvs中堂の構図となる流れも想定できたんだけど、その過程と行く末の見せ方もずっと良かった……
最終話の「私が嫌なんです!見たくないんです!不条理な事件に巻き込まれた人間が自分の人生を手放して、同じように不条理な事をしてしまったら、負けなんじゃないですか?中堂さんが負けるのなんて見たくないんです!私を絶望させないでください!」は何か2人の関係地の総決算としても美しい殴り合いで本当に本当に良かった…
「誰かの死」が起点になる物語性だからこそある程度の絶望とやるせなさと寂寥感がベースにはあって、UDIの誰もが一定した諦観がある故に初期の六郎はドン引きしてたり、それでいて六郎父が言い捨てたように「死体と向き合うことに意味はない」と即物的な話をしてしまえばそれはそうなのかもなんだけども、「今を生きる人たちが過去に囚われたままでなく納得して前を向くために蹴りをつけにいく人達」でもあるからこそ理性的なロジックで袋小路の感情論をこじ開けていく独特の熱さがあって、アンナチュラル全体に漂うそんな空気が本当にたまらなく好きだった…
この先心に残って離れないコンセプトだったなあ…


 MIU404 各話で特に好きだった回

#02 切なる願い
ある日の密行中、伊吹は隣の車に乗る夫妻の様子がおかしいと気付く。車内に隠れる別の人間が、殺人容疑で逃走中の容疑者・加々見崇(演 - 松下洸平)で夫妻を監禁しているのではないかと伊吹は言い、志摩はそれを受け入れて追跡する。一方、監禁車両内の人物たちは、検問で加々見を夫妻の息子と偽ったのをきっかけに互いの身の上を語り合う。

wikipedia

亡くなった息子を重ねて、信じてあげられなかった過去を悔やむ気持ちから殺してないと主張する容疑者を信じることにした夫妻と、歪んだ過去の歪みから起こしてしまった殺人を機に酷い事をしてきて「ごめん」の言葉もなかった父親への復讐に走る容疑者。
現場で連行されていく容疑者に対する夫妻の「(目的の地まで連れていく約束が果たせなくて)ごめんね」の言葉の重みの集約がもの悲しくて暖かくてオエエ出所したら絶対3人であったかいご飯食べて欲しい……………になった回。好き。

#04 ミリオンダラー・ガール
白昼、女性が暴力団員に撃たれ、加害者・被害者とも逃走する事件が発生。被害者の青池透子(演 - 美村里江)には、桔梗が摘発にあたって証言者の羽野麦(演 - 黒川智花)を匿うことになった因縁のある違法カジノに、騙されて嵌った前科があった。青池が会社から横領した1億円近い現金を持って逃走し追われていると知った伊吹は、誰よりも早く彼女を確保したいと望む。

wikipedia

ずっと陽の光の当たらない日々に絶望していた彼女が横領した1億の使い道〜〜〜………
捜査が進んでいく中で絶望の最中死んだと思われた彼女の最期が配送トラックを見届けられて希望を託せた喜びに満ちたものだったことが発覚したときの〜〜〜……感情〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ………
構成的にアンナチュラル的でもあった(特に8話と似てるよね)訳だけど、死の縁で何かを成した人間の尊さみたいなものに関してはシリーズ通して本当にずっと刺さってたな〜〜〜…

MIU404 シリーズ全体の所感

志摩さんの凍った心が伊吹に溶かされてく(好き)過程と、伊吹の信じてたものが崩れていくのを支えてやりたい志摩さんと、お互い擦れつつも凶悪犯に立ち向かう中で確固たる絆を形成していくその過程を見守る物語としてのMIU404は何かね〜〜コンセプトを語るとことはやや外れたところで単純にオタクの嗜好に刺さって健康に良かった……2人の関係値を「愛し合うように喧嘩してくたばるまで食べ尽くそうぜ」ってブランディングした感電とかいう楽曲も強いしさ…
九ちゃんと陣馬さんのペアも可愛かったよな…オタク好きな奴だったな…
桔梗さんも強い女を体現しててずっと格好良かったしさ…やっぱ4機操箱推しだ…

その一方で「誰かが最悪の事態になる前に間に合わせる」物語としてのキーポイントだったであろう「スイッチが外れてしまって間に合わなかったガマさん」と「間に合ったハムちゃん」の終盤のエピソードもア゛ア゛…って感じで語彙を無くしたまま見届けてんたんだけども、シリーズ通して見える「間に合わなかった人」を見てても「愛していた人を何の理屈もないところで無闇に巻き込んで殺した奴」を自分自身同じ立場になったとしたら「明確に許せない側」の人間なのでガマさんのこと、引いては罪を犯す人間のバックグラウンドの見せ方みたいなものがすぐ隣の危うさとしてこびりついてこの先も考えさせられそうなんだなあ…
MIU404もまた心に残って離れないコンセプトだった…


2作見なくてもラストマイル単体でも面白いぞとの各位からの後押しは兼ねてより受けていて、確かに「知ってるキャラが出てきて嬉しくなる楽しみを増やす」的なニュアンスとしてであれば実際エッセンス的な要素だったとは思うんですけど2作のコンセプトを履修したしないだとラストマイルの中の文脈に対する感受度がかなり違ってた気がするので、そういう意味でも2作を見届けてラストマイルに臨めたのは本当に良かったな〜と思うなどした次第。

ラストマイル 雑感

思いつく個別ポイントで良かった点の箇条書き

・序盤のテンポ感
あらすじ系の情報を一切入れず見に行ったから序盤の何もわからない状況から宅配→到着・爆発 配送センターの長に就任・補佐につく関係値の説明 からの連続爆破→捜査開始までのテンポ感が流石に流石すぎてヒュウ〜〜〜ってなった テンポと構成のオタクなのですごく気持ち良くなってた いやまあ大事なんだけども

・刈谷刑事と毛利刑事
 この2人が組んでるだけでファンサ感強くてもう嬉しい〜〜〜…
ラストマイル見たことで刈谷刑事ってMIUの頃からめっちゃ愛されてあのキャラクターになったんだなの実感が得られたの良かったな…ラストマイルの刈谷刑事癒しポジすぎるし毛利さんはコメディリリーフ場面におけるツッコミ要員としての安定感が強すぎる…出番多くて良かったな良かったな…

・エレナと孔のキャラクターと関係値
中盤までのらりくらりのハイスペ女とその使い走りの若い部下って感じで要素以上の掴み所がなかったところからの、山﨑の名簿を消したり爆弾が本当は11個説出して怖くなってきた流れからの爆弾荷物前後でお互いの素性と事情を白状して乗り越えて結びつきを深めていく一連の流れがめちゃ良だった…朝の光の中寄り添ってコーヒー飲むシーン好きすぎ
後台詞がうろ覚えだけども貴方は誰なんですかって問い詰められたときのエレナさんの「そんなこと言われても!!!……ああ、この混乱の中でこの遊びは向かないね」みたいなこと言ってるときの素と貼り付けた顔の切り替えエグくて鳥肌立った

・MIU404組 と六郎
メロンパンで匂わせてからの普通の車両でいつもの掛け合いをする志摩と伊吹の光景、オタクが見たかった景色すぎてあの…何か、すごい良かった(語彙無
昇進してる桔梗さんに絡みにいく伊吹…前線ゴリゴリの陣馬さんとかつての男子高校生だった爽太…時の流れを感じる要素が感慨深い一方で変わらずちょけあう404組が在ることもまた時間が流れてた間ずっとペアだった事実を思い知れて何かオタクの夢だったな……………
それでいて404組と絡むのが六郎だったのも良かった…
山﨑の「馬鹿なことをした」という過ぎたことへの後悔を聞くのが六郎っていう皮肉な文脈使ってくるのも六郎への愛を感じた気がするんだなあ

・UDIラボ ミコトと中堂
ラボ箱推しすぎてミコトと東海林のしょうもな談議と振り回され所長を煩わしくてキレる中堂さんを茶化す坂本さんの光景眩し過ぎてありがたかった………
「見上げた根性だ」「そんな根性ならない方がいいです」
ほんの短い対話から見えるミコトと中堂さんの人間味のコントラスト、なんかあまりにも最高の感情になっちゃった………

・羊急便の八木さんと委託ドライバー親子
この辺り、野木脚本の真髄の1つでもある泥臭い人情物語が煮詰まってて良かった…
あっちもこっちも好き勝手言いやがって云々かんぬんって社長にバチギレかましちゃう八木さんのシーン良かったよね…(劇場後方斜め後ろの女性は手を叩いて笑っててそれも良かった)
エレナと八木さんが「一緒にやめちゃいましょう!」って結託していつの間にか他の大手とも結託して五十嵐さんをぎゃふんとさせる流れの爽快っぷりは完全に気持ちよかった…

委託ドライバーの親子…序盤からずっとままならない中折れず腐らずやってきた感じが更新される度に絶対爆発物の匂わせも同時に挟まれるから何かもう移る度絶対死ぬな…どっちも死ぬな…って祈るように見てた……いちばん感情移入してたまであったからかつての自社製品に救われる形で帰還した息子を見たときの良かった…良かったなあああ!!!は今作随一の感情ピーク点だった
爆発しない代替品をちゃんと娘に送り届けられた点も含めて正直作中で一番綺麗な大団円を迎えた人たちだったと思う

各シリーズのパートナー対比とキャラ性質のカテゴライズ

ラストマイルの本丸的エピソードの所感と考察の前に何となく差し込んでおきたい自分の中の主要人物達に対する認識整理
シリーズ通して見てて主要人物達を大別するとしたら
「間に合わなかった過去の有無」
②「社会の中で使命感の果て心を殺してきた経験の有無」

があるような気がしたのでそこの辺りについて。

<アンナチュラル ミコトと中堂>
①間に合わなかった(恋人の死に囚われ続けた)中堂さんと
それをどうにかしたい(不条理な過去はあるけど自らの諦観性と新しい環境に救われたことで過去のしがらみはない)ミコトの対比

今作においては主要人物に②にあたる人はいない
(六郎は使命感の果てに社会の澱みに巻き込まれた被害者的なポジションなので②としたい趣旨とは外れる)

<MIU404 志摩と伊吹>
①②使命感等の果て、同僚の死に間に合わなかった過去を持つ志摩と
それらを持たずまだ腐っていない底抜けの明るさを持つ伊吹の対比
(作中で伊吹は間に合わなかった側になるもの最終局面を2人で乗り越える形)
間に合わなかった人間の最果ての描写としてガマさんのエピソードがあった

<ラストマイル エレナと孔>
①間に合わなかった過去にあたるのが今作では山﨑と筧まりか
②エレナさんは社会の中で心を殺してきた果てキャリアを勝ち取ってきた人
 事件に向き合う中、孔にこじ開けられる形で人情を取り戻した人でもある

この指標②はラストマイルの登場人物としてとりわけ意識的に設定されており、とりわけエレナと五十嵐の描かれ方では高いキャリアに付く中で奇しくも各々が山﨑・筧と接触した作中唯一であったことから見ても比較できる差別化がなされていたような気がした。

五十嵐:山﨑の飛び降り現場にいながらベルトコンベアを止めることができなかった
→そのままより高い地位へ昇るとともにビジネスの縮図として人1人を軽んじ、自身の地位や利益にこだわる人間として描かれる(エレナの功績を自分のものと偽って報告するなど)とともにストライキの際エレナに問い詰められ止め方が分からなかった心中を吐露した

エレナ:アメリカでまりなの叫びを聴いたことが結果として契機となり孔・羊急便・警察など多くの人々を巻き込み手を借りることでベルトコンベアを止めた
→仕事を辞めた
人1人の知らない人生を鑑みていては会社は回らない的な独白・1年目2年目のキャリアが順調だったもの3年目から眠れなくなり彼女の声を思い出した・貼り付けた仮面のひょうきんさが孔の言葉で瞬間たまらず剥げるシーン等からも社会で上に立っていく人達が自ずと身につけていく仮面をエレナと五十嵐の見せ方にはその仮面の有無を意識させる描写が多かった
(思えば五十嵐と山崎、エレナとまりなって名前も立場も対称の存在として作られてそう)

また、これらから見る①間に合わなかった人にあたる人物達は≒道義的責任の無意味さを感じる人たちであり、自己犠牲が無意味だとは思わない人でもあり、最果てとして「人を殺す」「自分を殺す」ことに至る人たちでもある。
この辺りを踏まえて、ラストマイルのことを今一度考えたいな~と思う

ラストマイル 考察

ラストマイル、総括すると面白かったんだけど
多分ラストシーンをはじめとした山﨑の暗号だったり山﨑と筧まりかの真意だったり他こまごまと、流れてくる情報だけを受け止めるだけだと釈然としない要素がちょろちょろあって、特にラストシーンは視聴者の所感に委ねにいってた感触がすごくあった。
(他の人はラストについてどう思ったんだろうな〜〜って見た人の数だけの所感がめちゃくちゃ気になってるもの人の感想探すより先にこの文章打ってるから後でめちゃくちゃ漁りたい)

初見ありのままの感情としてはラストシーンは「お前に届いた荷物も爆発物かも知れないね」的なホラー映画によくある次はお前だエンドなのかと思った

んだけども、自分の読み込みが足りてないだけなのかなと思っていろいろ咀嚼してみて要するところの意図を個人的にその辺りについて自分の中でこねくり回したのが以下。

2.7m/s → 70kg 0  山﨑佑と筧まりか

①「間に合わなかった過去の有無」
②「社会の中で使命感の果て心を殺してきた経験の有無」

前項

前述もしたように「間に合わなかった2人」。
アメリカでのエレナとまりかの会話場面、山﨑についてそういう人物だった、そんなことを言っていた等小出しの人物像が語られていた以外で彼らの生前の姿は死に際しか描画されなかったからある程度想像に任されていることが窺える。
(その上、自分の記憶がザルなためよりによってエレナとまりかの会話場面の記憶が朧げなのがあまりにもあれなんですけど)

要するところ DAILY FASTの理念に呑まれ社会の中で使命感の果て心を殺すことができず、誰かに縋ることもできず、自力で社会の不条理に抗おうとした結果自死を図った山﨑。
それに絶望して社会に意義を唱える形で抗うのではなく壊す形で抗う道を選び、連続爆破テロに及んだ筧まりか。

2.7m/s → 70kg 0 は「己の体重をもってベルトコンベアを止めれば、人1人が亡くなれば、売上ありきで人間が大事にされない不条理なビジネス社会に物議を醸すトリガーとなれる」
山﨑からしてみれば「0」は稼働率の意図だったかもしれないけれど、事を起こして見れば物流は止まらず社会は不条理のまま動き続けた。
その後のベッドでの「馬鹿なことをした」という台詞は己の無駄で無力な行為に走った悔恨であり、メタ側面からしてみれば「人1人の無謀な抗いに意味はない=0」というダブルミーニングを孕んでいたような気がしてる。
(俗な例えになるけど安倍さん襲撃事件による暴徒は結果としてその後の社会に物議と影響を醸したけど、治安国家において道理を外れた行為が意味を持ってはならない、みたいなニュアンスとも取れるように思った)

そういう解釈をしてみれば「2.7m/s → 70kg 0」は結果として筧まりかへの皮肉としても機能するなあと思ったりなんだり。

(ここまで推察しといてあれなんですけど、個人的に筧まりかの凶行がああまで無差別的で凶悪なものになって、爆発死を選ぶまでに至った動機については何か実はちょっといろいろ考えてもやや腑に落ち切れてないので各所の考察あたってみたい気持ちはあります…)
間に合わなかった人間の最果ての最たる表現としての破壊衝動…最愛の人間が社会に食い殺されても社会は変わらず回り続けることへのやるせなさが転じた世界に対する無差別的な憎悪感情……なのかな…という気はするんですけど…彼らの人となりをもう少し知りたかったなという気持ちはままあるかも

ラストシーン

最後の爆発物の行方をエレナは報告としてあげず本社の人間に「どこにあるか分からない」と伝えて会社を去った。
この描写と全体の流れを思い出してみるにエレナのこの去り際の台詞の意図は
「お前らの物流がこの先も営利ありきで人道を蔑ろにする限り爆弾はいつどこでも爆発するぞ」
だと読み解くこともできるなと思ったもので。
ともすると前述の暗号シーンのダブルミーニングも含めつつ、世の中のどこかで今も届き続けるデイリーフォン、あれらのシーンに込められたメッセージ性って何かやっぱり「人1人の道義を外れた凶行に意味や影響なんてあってはならないけれど、それでも社会が変わらない限りその爆弾はこの世のどこにでも潜んでいるのだろう」っていう次はお前だ様式だったのかな。


3作を経て

アンナチュラルMIUラストマイルから見る野木脚本って
個人的には「この世に蔓延るありふれて救い難い不条理とその袋小路」から救えなかった誰かを下地に、そこからいかなる善性と繋がりを設ければ「まあ悪くないかな」という許容範囲の納得に至れるかまでの壮大なシミュレーションだよなあと思ったもので。

アンナチュラルMIUをシリーズ通して見ていく中でも一際メッセージ性を感じられた気がしたアンナチュラル4話。今回諸々を整理していくにあたってもこの辺りをより解像度を突き詰める形でセルフオマージュしたのがラストマイルだったんじゃないかなっていう印象が自分の中にはあったりしたわけです。

下請けの人々各々が抱える信念と、社会の縮図としては夥しい末端に過ぎないその1人も他らならない人生を抱えた人間であること。
結局のところそれが全てで、メディアを介して少しでも多くの社会人がそんなささやかでごく当たり前の事実を今一度誰もが思い知れば良い。
ラストマイルってそういう映画だったんじゃないかなと思いました。個人的に。


本編も、それを噛み締める時間も楽しくて忘れられない良い経験でした。

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