本日のウニ:バフンウニ⑪間充織胞胚
受精後22時間の間充織胞胚期です。本当は⑩の孵化前胞胚との間に孵化胞胚といって受精膜から出て、泳ぎ始めたばかりの胞胚期をはさみますが、すみません、単純に自分のパソコン内にその写真がないだけです。孵化後しばらくすると写真のように「間充織細胞」と呼ばれる細胞群が体の後方(卵の植物極側と一致)から胞胚腔の中に入ってきます。間充織細胞にはしばらく後に入ってくる別の一群もあるため、今回移入するこれらの細胞群は一次間充織細胞と呼ばれます。将来、幼生の骨を作る細胞で、⑧32細胞期の大小割球から由来しています。移入直後は写真のように集団で固まっていますが、この後、各細胞が胞胚腔の中を自由気ままに移動して、幼生期に骨を作る位置へとだんだん集合してきます。大小割球由来細胞は、孵化前〜孵化胞胚期には上皮性の構造をそもそも保っているのにも関わらず、今回のこのタイミングで間充織へと形や行動を変えるため(EMT: epithelial-mesenchyme transition 上皮間葉転換と呼ばれます)、2、30年前には我々ヒトにおける「がん細胞の転移」モデルとして盛んに研究されてきました。実際にこの細胞の行動時に内部で動く遺伝子群はがん細胞の転移時に動く遺伝子群と類似していることがわかっています。
間充織細胞は体の後方から移入すると書きましたが、つまり、ウニの子供は写真の上方向に向かって泳ぎます。その際、体表に生えた繊毛により回転しながら前進します。この時期ではまだバックできないのでひたすら前へ前へ進んで行きます。