Shunsuke Yaguchi

筑波大学 下田臨海実験センター ウニの研究者 メモや研究の紹介的なもの 本ページは個人の意見であり組織を代表するものや論文のように正確さを追求するものではありません webはこちら→ https://sites.google.com/site/yaguchisea/home

Shunsuke Yaguchi

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マガジン

  • タコノマクラの発生

  • 研究者って

    研究者ってどんな人なのか、どんなことを考えていて、どんな仕事をしているのかということを一研究者の個人的な観点から書いています。

  • バフンウニの発生

    バフンウニの発生を一覧にしてあります。

最近の記事

本日のウニ:タコノマクラ⑦後期原腸胚

だいぶ久しぶりになってしまいましたが、タコノマクラの正常発生シリーズ第7弾の後期原腸胚です。受精してから34時間経過したものになります。前回の記事同様に色素細胞が外胚葉上皮の中を遊走し全身に散らばっている様子が見て取れると思います。この写真は背腹軸方向から見ているものになりますが、色素細胞は背側の外胚葉のみに存在しており、腹側には一切見られません。これは我々が育てているバフンウニやハリサンショウウニにおいても全て同じ特徴になります。なぜ、腹側には移動できないのかという点に関し

    • 本日のウニ:タコノマクラ⑥初期〜中期原腸胚

      受精後24時間経ったタコノマクラの胚です。ここでも前回の胞胚から一気に時間が経ってしまっていますが、1日中見張っているわけにはいかないので少し間が空いています。植物局側、つまり体の後方から原腸が少しだけ陥入し始めています。また、これに先立って将来骨片を作る一次間充織細胞が胞胚腔内にたくさん移入し歩き回っています。バフンウニの胚に比べて中が非常に見やすいですね。さらに、お気付きの読者はだいぶ”玄人”ですが、体の表面に色素細胞が見られると思います。これはタコノマクラやカシパン類の

      • 本日のウニ:タコノマクラ⑤孵化前後期

        タコノマクラは初夏に性成熟して卵と精子を放出します。そのため、飼育は室温で行うことになります。今回紹介するのは室温で6時間程度飼育した桑実胚(morula)ー孵化前胞胚(unhatched blastula)になります。タコノマクラの発生の中で最も好きなステージがこの桑実胚になります。理由はわかりませんが。。。細胞が非常に透明でレンズから最も離れた場所でもすごくキレイに観察することができるからかもしれません。一方、タコノマクラは発生の同調性に少し難ありなので、同じ時間に受精し

        • 本日のウニ:タコノマクラ④16−32細胞期

          だいぶ間が空いてしまいましたが、タコノマクラ の16細胞期です。バフンウニよりも圧倒的に透明であるため、このくらいの細胞数から各割球にフォーカスをあてるのが難しくなってきます。どちらが奥でどちらが手前かの区別がつきにくいです。ただし、割球間の結合が少しだけルーズであるため、図の上から中割球、大割球、小割球と分かれているのを非常に観察しやすい種です。大割球と小割球を生み出す植物局側の細胞4つだけ、不等分裂を起こします。受精後4時間の胚です。 上記16細胞期から30分ほどたった

        マガジン

        • タコノマクラの発生
          8本
        • 研究者って
          5本
        • バフンウニの発生
          15本

        記事

          研究者って⑤

          正直者なの? このnoteは大学3年生や新たに大学院へ進む学生へ向けて研究にまつわる云々をなるべく正直に書いている。そんな中で今回は少し気が重いけれど、避けては通れない話題を書こうと思う。研究上行われる捏造に関して。 ※以下に書くことは、私個人の意見であり、研究業界全体のコンセンサスでも、ある大学やある国の政府およびどこかのジャーナルの基準でもないことを前提に読んでいただきたい。また、ほとんどの研究者は当然捏造などしていないことを申し添えておく。 今回最も言いたいことは

          研究者って⑤

          本日のウニ:タコノマクラ③4−8細胞期

          第2卵割を終えた4細胞期のタコノマクラ胚です。相変わらず透き通っていて核まで綺麗に見えますね。バフンウニのようにしっかりとしたパターンを示さない個体もいるため、写真のように少し卵割面がずれているものも見られます。この辺はバフンウニの4細胞期と比較してみてもらうと楽しいかもしれませんね。また別の機会に出しますが、ハリサンショウウニの4細胞期はもっと衝撃的です。 さらに第3卵割を終えた8細胞期です。こちらも綺麗に4細胞期が2段重なったような形で見えています。4細胞期までは経割(

          本日のウニ:タコノマクラ③4−8細胞期

          本日のウニ:タコノマクラ②2細胞期

          受精後1時間半ほど経過した2細胞期のタコノマクラの胚です。透明さは相変わらずで、2つの細胞とも核がはっきり見えます。発生初期に細胞が割れることで生じる娘細胞は割れた後に細胞の成長を伴わないため、その期間の細胞分裂は特別に、「卵割(らんかつ)」と呼ばれます。卵割によって生じる細胞は「割球(かっきゅう)」と呼ばれます。以前紹介したバフンウニや今回紹介しているタコノマクラの割球はお互いに接着しているうえ、割球表面に見られる薄い透明層に包まれているため、なかなか離れることはありません

          本日のウニ:タコノマクラ②2細胞期

          本日のウニ:タコノマクラ⓪親

          発生から少し脱線して親個体の紹介を。 タコノマクラはみなさんがイメージする一般的なウニと違い、不正形類と呼ばれるグループに属しています。少し丸っこくてトゲトゲしている正形類のウニは五放射相称の体軸を持っており、前も後ろもありませんが、タコノマクラなどの不正形類ではその体に前後軸が存在しています。写真のタコノマクラは左側が前で右側が後ろになります。上からみるとわかりにくいのですが、ひっくり返すと肛門が後ろについているため前後の区別を明確につけやすいです。バフンウニの時に紹介し

          本日のウニ:タコノマクラ⓪親

          本日のウニ:タコノマクラ①受精卵

          久々にウニの発生シリーズの更新です。今回はタコノマクラ Clypeaster japonicus の発生です。タコノマクラはバフンウニなどの正形類いわゆるウニ型のウニ達と違って、平べったい形をしています。これらの仲間は不正形類と呼ばれています。スカシカシパンやブンブクなども不正形類に分類されます。親に関してはまた後ほど。 写真は受精後1時間の受精卵です。大きさは直径が100 µmよりちょっと小さく、バフンウニなどと比較すると卵黄が少ないため非常に透明です。卵の中心に見える核

          本日のウニ:タコノマクラ①受精卵

          研究者って④

          好きなことをしているの?研究者をしているとよく言われることがあります。 「好きなことができて良いね」「趣味を仕事にできて良いね」 周りの研究者の方々がどのように答えるかはわかりませんが、私自身はこのセリフを投げかけられるとほんのちょっとだけ違和感というか「んー」という気持ちになります。もちろん、嫌いではありませんし、好き嫌いの二択だったら間違い無く好きを答えるでしょう。しかし、好きではあるものの、研究はあくまで仕事だと思っています。生き物が大好きだから生物学者になっている

          研究者って④

          研究者って③

          今回の学術会議問題に関して思うところを少しずつ。 今回はアウトリーチについて知らなかっただけかもしれないけれど、自分が大学院生の頃はあまり言われていなかった気もするアウトリーチ。その目的として、まず、(A) 我々研究者の仕事の多くは研究費・給与も含めて税金によって支えられているため、得られた成果を少しでも社会に見える形で還元すべきであり、一般の方々にもわかりやすく発信すべき  (B) 昨今の大学と研究環境の改革により博士が職業として魅力的でなくなってきたため、次世代を担う若

          研究者って③

          研究者って②

          自由気ままで良い仕事でしょ?って聞かれることが多々あります。もちろん、複数の職業を経験したことがある人は自分も含めてそう多くはないでしょうから、他人の職業内容を詳細に知ることはなく、イメージで接するしかないのはよくわかります。そして実際にこの問いに関する答えとしては、YesでもありNoでもあります。研究者が持っている自由の実情に関して、「研究」に限定して2つほど簡単に紹介してみます。 1)締め切りがないこれが自由を表現する上でもっともわかりやすいポイントでしょう。一つひとつ

          研究者って②

          研究者って①

          多面性を持っている。いや、世界中ほとんど全ての人が多面性を持って生活している。ただ、研究を遂行していくうえで必要となる多面性は、多重人格とかそういうものではなく、ひとつの物事を捉える視点や考え方が複数ある多角的であるという意味なのです。 大学院への進学を目指したり、研究者を目指したりする学生のラボ選びの参考になるように、研究者と研究に対して最近思っていることを暇な時に小出しにして書いてみます。すでに多くの研究者の方々が色々な媒体で発信済みなので、多くの意見の一つという程度に

          研究者って①

          ヅマの部屋(2020年9月13日)の質問チャットへの回答

          本日は視聴していただいてありがとうございました。多くの質問をチャットでいただいていましたが時間の関係でお答えできなかったものも多くありましたので、こちらに回答いたします。動画をじっくり見続けているわけではないので回答漏れがあるかもしれませんし、答えになっていないとかさらなる質問があるかもしれませんが、その場合はTwitterのDM等でご連絡いただければと思います。本日はありがとうございました。 ーーここから ru ha 【質問】「ちょっと海外行ってみようかな?」から実際渡

          ヅマの部屋(2020年9月13日)の質問チャットへの回答

          食事のシェアをやめよう

          〜新型コロナウィルスと付き合うために〜基本的には医師や感染症専門の研究者の方々が頑張っておられるので、部外者はまずそれに従うのが鉄則だと思って行動しています。ので、ここに書いているのはこんな行動実験したらうまくいくかなという単なる思いつきです。 ポイント1: 家庭内や友人同士の食事の時にシェアをやめましょう。​ ポイント2:レストランや居酒屋は全ての料理を個別提供。さらに、ターンオーバー制をとるか、もしくはウェイターの方がお客さんの食べたものを片付けた手を消毒しない状態で

          食事のシェアをやめよう

          本日のウニ:バフンウニ⑮プルテウス幼生

          受精後72時間後のプルテウス幼生を背中側から見た写真です。”腕”に相当する部分はフォーカスがずれて見えていませんが、初期4腕プルテウスになります。この頃になると、食道、胃、腸と、はっきりと3区画に分かれた消化管を持つようになり、餌である珪藻を口の周辺にある繊毛を用いて積極的に取り込むようになります。また、前方向に泳いでいき、壁にぶつかるとバックして方向を変えることができるようになります。 横から見た写真になりますが、消化管がはっきりと見えています。 赤く見えるのは色素細胞

          本日のウニ:バフンウニ⑮プルテウス幼生