丸山和郁が舞い上げる土煙
私は毎年のように「この選手、東京ヤクルトスワローズに来ないかな。」とスワローズが注ぐために必要な新たな血としてドラフト候補を絞っている。偶にではあるが4年越しの時間差でスワローズが本当に獲得してきたという時がある。まぁマグレだろう。ドラフトは1位指名こそクジの場合はあるが2位指名から早い者勝ちだ。興味深い選手はスカウト目線・・・のつもりで追っかけるのである。察していると思うが素人なりにではある。最初は趣味だったが今ではその延長線上だ。2018年の事だった。夏の甲子園で前橋育英の韋駄天が何度も何度も土煙を舞い上げていた。
名前は丸山和郁
「よく走るなぁ」と思ったのが最初だったが、気付けば3試合で8盗塁が1大会最多タイの記録だった。確かに聞かない記録だった。高校では投手と外野手。「外野手としてプレーした方が走塁面が活かせるのではないかな。投手経験で培った肩を外野で使えばレーザービームが出来る選手になる」と思ったが、そうするかしないかは本人次第。彼がこの先どうするのか知りたかった。明治大学に進学するまでの間は彼の映像を繰り返し見て気付きを探した。一塁到達タイムをタイマーで測ると4秒は切っていたことに気付く。3.8秒くらいだっただろうか。とても興味深かった。打撃や守備は高校や大学で磨けるが脚の速さは天性。走塁の絡繰りから探った。長打を打った場合、二塁到達する際の一塁ベースを何処でどちらの脚で踏んでいるか、二塁ベースを何処でどの脚で踏んでいるかを探ると思ったのはシンプルな回答だった。何が言いたいかというと、ここまで読んでくれた方々に
彼は普通の選手ではない。
明らかに何かを持っている。
という事を再確認してほしいのである。で、少し話を戻しましょう。盗塁で光ったのはスタートではなくスライディングだった。勿論の事だが速い。けど「盗塁はスタートで決まる」とも言われている。その点を丸山は173cmという小柄を活かして守備を搔い潜りスライディングをして回避する。「173cmだが」ではなく「173cmだからこそ」の身軽で軽快なフットワークだろう。そしてブレーキの掛け方が絶妙と思う。足が速いと気になるのは守備だ。守備範囲に関しては大学進学後に気付いたが、守備範囲がとても広く美しく、且つ強肩で外野手の守備に求められる全てを兼ね備えている。プロ野球に恵まれた脚という確信があった。
舞台は神宮・東京六大学
明治大学に進学したこと知った。SNSには弱く誰が何処に進学したのか情報取得が遅いのだ。そして彼を見る時間は少なかった。1年生の時には怪我、2年生で代表選出されて打撃に片鱗を感じた所までは楽しみを感じた。しかし丸山が大学3年生の時に東京六大学も東都リーグも全日本大学野球もロックダウンだ。スカウトも視察が出来ない。選手の現状は大学野球部しか知らない。時間は止まった。マスク着用に抗えない時代の中、やっと見れた時は4年生になり彼は明治大学・野球部のキャプテンとして出てきた。打撃に粗さは感じたが、ドラフト候補と呼ばれる世の全ての選手に恵まれたスキルがあると信じている以上、「彼には出来る。彼にしか出来ない唯一無二の天賦の才が必ずある」と信じた。
集大成は秋の六大学野球
4年生最後の大学野球となり丸山に注目した。明治神宮球場で土煙は何度も何度も舞い続けた。打撃フォームを見るとノーステップ打法になっていた。ボールとのタイミングを合わせるためだろう。今風の知識を意識して無意識に出来ている。彼は良い。とてもロックによって野球が出来ない日々が続いていたとは思えないアピール全開だった。驚いたのはその後だった。明治大学は優勝を逃しそうになり、丸山のサヨナラタイムリーで首の皮一枚が繋がった。明大ナインは大喜び。気持ちいい勝利をして望みを残すと喜ぶ。確かに。戻ってきた丸山に手洗い祝福も丸山に笑顔は無かった。表情で物語ったのは「1勝しても優勝しなければ意味がない。喜ぶのは優勝した時。」と自分にはそのように感じた。その後、明治大学は優勝を逃し丸山の眼には涙。キャプテンシーがこんなにも強い選手を見たのは初めてだった。「その悔しさを糧にして強くなろう!」と心の中で伝えた。そして運命の日が来る。
第2巡目指名
東京ヤクルトスワローズ
丸山和郁 外野手(明治大学)
このアナウンスを聞いた時は飛び上がるほど嬉しかった。ここから彼が優勝を決定付けた後が今年である。故障もあり離脱していたが2軍で元気な姿を見せ始めてきた。彼がどう育っていくか。注目だ。近未来のスタメン外野手であってほしい。
【あとがき】
本書は読んでいただき、誠にありがとうございました。今回は東京ヤクルトスワローズについて
そして1人の選手について書かせて頂きました。
遡ると2018年が始まりと思うと長く追ってきているんだなと・・・やっと気付く。