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私の愛したフリーゲーム

はじめに

働き始める前はお金が無かったのでフリーゲームをよくやっていました

別にゲーム史とかを調べているわけでもない自分がこんなことを語ってよいかは分かりませんが。当時日本のインディーズはおおよそフリーゲームに固まっており、素人が作ったゲームを売るという土壌はあまりなかったのではないかと思います。

そのため、今であれば当然売り物になっていたであろう素晴らしいゲーム達を無料で遊ぶことができていました。

フリーゲームは採算や知名度ではなく、自分のやりたいことの表現方法がゲームという形式をとっていることが多く。遊ぶ度に作者の思いに触れ、新たな体験をすることができたような気持ちになれていました。

自分がインディーズゲームを好きになり、自分でもゲームを作ってみようなどと思えるようになった原体験はここにあるのだと思います。

そんな訳で、全力で推したいゲームなどというタグに便乗して、思い出のフリーゲームをいくつか語りたいと思います。

Elona

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名前:Elona (Eternal League of Nefia)
作者:Noa 様
ジャンル:ローグライク
リリース年:2006年
おススメ度:☆☆
★★

未だにニコニコ動画などで実況動画が上げられる事もある、根強い人気を誇るローグライクです。

素の状態でもキャラクタークリエイト・プレイスタイル・自宅のコーディネートなど、幅広い遊び方があり、
例を挙げれば、リッチのピアニストになって町々で演奏して回ったり、ゴーレムの魔法使いになって大量の仲間と共に遺跡を更地にして回るなど、とにかく思いつきそうなことは何でもできる凄まじい自由度を誇っています。

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異名決め、完全にランダムなので良いのが出るまで粘る事も。

誰が言ったか、ゴミ箱に捨てるまでがチュートリアルという言葉が有名になるほど、操作方法やシステムの理解は異常に難しいですが。
理解したときのハマり具合は半端ではなく、良い装備が出るまで粘り続けて夜が明けていたり、家のカスタマイズで休日を一日使ってしまったりと、時間泥棒な逸話には限りがありません。

加えて非公式でヴァリアント(ゲームシステムの改変版)やグラフィックの差し替え、オリジナルアイテムやオリジナル信仰などmod的な要素も非常に多く。いくら遊んでも遊び足りないゲームでした。

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ゲームのマスコット?である妹が沢山いる館

自分はカオスシェイプという一定レベルごとに体の部位が増える種族が好きでよく使っていたのですが。一番面白かったパターンでは頭が7つに手が3本とかいう化物になってゲームの裏ボスを殴り倒すという、どっちがモンスターか分からない状態になっていました。

今考えると、ローグライクでありながらプレイ感はむしろオープンワールド的であり、猫も杓子もオープンワールドな今にこそ再評価されるべきゲームなのかもしれません。
尤も、序盤に関しては難しい、というか理不尽な位なので今風ではないと思いますが。

現在作者さんは同じ世界観でエリン宿というゲームを作っていらっしゃるようです。完成してくれると良いのですが。

モノリスフィア

モノリスフィア1

名前:モノリスフィア
作者:SilverSecond 様
ジャンル:マウスアクション
リリース年:2008年
おススメ度:☆☆

最近switchでも発売され、TRPGにもなった片道勇者や、
オープンワールド的なシステムと、洗練されたシステムでフリーゲーム中でも非常に高い知名度を誇るシルフェイド幻想譚
そして数々の名作フリーゲームを生み出したゲームエディターのWOLF RPGエディター(通称ウディタ)の制作者であるSilverSecond 様のゲームです。

じゃあその有名なやつを紹介しろよ、という気もしますが
あくまで自分がハマったゲームなので。

ゲームシステムとしては、女神様をマウスで引っ張って飛ばし(モンストのようなイメージ)、マップに散らばるアイテムを集めたり、体当たりで敵を倒すものです。

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序盤のステージ

単純かつ、ボリュームもそう多いわけでもないのですが。
単純ながらもテクニックを求められるステージやクリア後の腕前評価など、何度もやりたいと思わせるポイントが多く、ボリューム以上に遊べるゲームでした。

例えば、このゲームでは特殊能力的なやつがあり、ゲーム中で使った割合で最後に評価というか茶番があるのですが。当時の自分は仕様上ほぼ使わない能力を一位にして反応を見たり。一周にかかる時間を可能な限り縮めてみたりと色々な遊び方をしていました。

余談ですが、この作者様のゲーム(特にこのゲーム)の会話シーンはキャラクター同士の茶番とか、楽屋裏みたいなのとか、昔の同人っぽいなぁーと感じる所が多く。当時の雰囲気が味わえる貴重な作品だと思います。

逆を言うと、そのノリが合わない人にはとことん合わないと思います。ゲームとしては秀逸ですが、片道勇者のように代替が効かない面白さという訳でもないので。

Ruina ~廃都の物語~

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名前:Ruina ~廃都の物語~
作者:枯草章吉 様
ジャンル:RPG
リリース年:2008年
おススメ度:

星の数程作られたRPGツクール2000製のRPGの中でもとりわけ異色な作品です。
そのプレイ感はビデオゲームというよりむしろTRPGに近く。
地図を俯瞰して探索し、知恵と力と閃きで謎を解き明かしていく楽しさは間違いなくこの作品でしか味わえないものです。

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戦闘だけでなく、探索によって経験値を得ることができる

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味のあるグラフィック

ストーリーに関してもキャラクターの魅力は言わずもがな、なんちゃってではないファンタジーの世界がきっちりと作りこまれており、一冊の本格ファンタジー小説を読んでいるような感覚になれる作品です。

また、ボリューム的にも一周は4-6時間程度(慣れれば2-3時間)とそれほど長くありませんが。
主人公の出自毎に異なったストーリーが展開され、仲間との関わり方も変わってくるという作りこみのおかげで実質4周以上新鮮な気持ちで楽しむことが可能です。

この作品に関しては、当時だから面白かったというものではなく。
今遊んでも間違いなく面白く、難易度も適度であり、類似する作品が現在においても殆ど存在しないという非常に稀有な作品です。

らんだむダンジョン

名前:らんだむダンジョン
作者:はむすた 様
ジャンル:ハック&スラッシュ
リリース年:2009年
おススメ度:☆☆

らんだむダンジョンは尋常でないボリュームを誇る名作ハック&スラッシュゲームです。
このゲームは自分がハクスラ好きになった切っ掛けのようなゲームで、当時は武器の合成素材を集めて夜遅くまで周回していました。

ゲーム的には半固定(いくつかのマップがランダムに出現)を回って多種多様な装備を集め、強敵を倒していく単純なもので、バトルのシステムもRPGツクールの標準のものです。

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強いアイテムや合成素材を探し回る

また、ストーリーに関してもギャグとシリアスが適度に混ざった王道シナリオで。あまり奇をてらわず、順当に面白い内容といった印象です。

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王道で燃えるストーリー

しかしながら、このゲームの最も凄い点はそのボリュームです。
このゲームは複数回のアップデートで幾度もストーリーが追加されており。
そのたびにサブキャラや拾われなかったネタの掘り下げが行われ、今や100時間やってもクリアまでたどりつけない、フリーゲームでは類を見ない規模のテキスト量となっています。

それに加え、ネタからガチまで幅広く取りそろえられた装備・アイテムには全てに固有の説明文が用意され、見ているだけでも軽く時間が吹き飛んでしまう程です。

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アイテム図鑑 武器・防具・アイテム全てにこれだけの説明がある

今となってはゲームバランスにせよ、アイテム収集部分のシステムにせよ、ゲームの面白さという面で見ればこれを上回るフリーゲームが無いわけではないと思います。
しかし、熱量とボリュームという面に関してはことコンシューマーゲームであってもこのゲームを上回るものはそう無いものと思います。
序盤だけでも十分に楽しめるゲームなので、ぜひやっていただきたいと思います。

しぇいむ☆おん

しぇいむおん1

名前:しぇいむ☆おん
作者:2ちゃんねる VIP板 ツンデレ喫茶制作委員会 様
ジャンル:ビジュアルノベル
リリース年:2006年
おススメ度:☆

こちらは変わり種で、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のあるスレッドの住人達が作成したビジュアルノベルです。
ちなみに自分が初めてプレイしたビジュアルノベルでもあります。

ゲーム制作というのが難易度が高い作業だというのはなんとなく想像がつくかもしれませんが。チーム制作ではそれに加えて進捗の管理や設定の共有など知り合い同士であっても非常に面倒な作業が要求されます。
そんな作業を、そもそも関係性の薄い掲示板の住人間で実施し、完成までもっていったという時点ですさまじい事です。

しかもこのゲーム、クオリティが高いんです。

当然ボリュームに関しては市販のそれに及ぶべくもありませんが。
ツンデレ喫茶といういかにも記号的なタイトルを持ちながら、キャラクター1人1人をけして記号的ではない個性として描いており。
絵柄こそ若干古いものの、ツンデレという記号が使われなくなった現在でも十二分に楽しめる作品になっていると思います。

掲示板始まりで完成に至ったビジュアルノベルは何本か知っていますが、この作品はその中でも別格の出来だと思います。

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タイトルに反して、テンプレートなツンデレはあんま出ない

ちなみに自分の一押しは木野村 典乃(きのむら てんの)です。
当時は周囲の影響で自分もロリが好きなのかと思ってましたが。
今回見直して元気で素直な人が好きなだけだという事に気づきました。
まさか10年近く性癖が変わって無かったとは。

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一押しキャラの木野村 典乃

ちなみにこのゲームには続編(周辺作品?)も出ているようです。存在は知っていたものの、当時完成にまでは至っていなかったのでやっていませんでしたが。なんだか懐かしい気分になりました。

GENETOS

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名前:GENETOS
作者:Tatsuya Koyama 様
ジャンル:シューティング
リリース年:2009年
おススメ度:☆

GENETOSは次機を進化させながら進めるシューティングゲームです。

このゲームでは普通の縦スクロールシューティング同様、ショットで敵を倒しながら進んでいくのですが。敵から回収したポイントが一定を越えると自機が次世代のゲームに進化し、圧倒的な力で敵を倒すことが可能になります。

インベーダーゲームから始まり、ゼビウスのような2Dながらも戦闘機と分かるデザインへ、さらにはレイストームのような3D表現へと移行し……というシューティングゲームの進化を辿っていくコンセプトは、シューティングをあまりやらない自分にも斬新に感じられました。

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インベーダーゲームから始まる

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STGの発展を辿っていく

しかし、個人的にこのゲームの一番の本領は進化が極まった最終ステージにあると思います。

正味な話、このステージは普通のシューティングなのですが。音楽と合わせた演出が非常に素晴らしく、映像作品を見るような気持ちで何度もプレイした覚えがあります。

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進化の果てに

今は凄い映像が比較的簡単に作れる時代になってきているので、当時に比べて感動は薄いかもしれませんがそれでもぜひ一度は自分の目で見てほしいゲームだと思います。

魔王物語物語

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名前:魔王物語物語
作者:てつ 様
ジャンル:RPG
リリース年:2008年
おススメ度:☆

難易度が高く、ストーリーも分かりづらく、システム的な理不尽もそこそこ多いながら、自分が今回紹介した作品の中で最も愛している作品
それが魔王物語物語です。

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シンボルエンカウントだが、集られると大変な事に

なんでも装備できるシステムやエンカウント位置が考慮される特異な戦闘システムなど、ゲーム的な作りこみもかなり手の込んだものなのですが。

このゲームでもっとも素晴らしい点はやはりそのストーリー、というか物語にあると思います。

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ゲーム開始地点、何の説明もなく放り出される

このゲームは島を探索しながら物語を見つける、というのが主題となっており。最初から一貫してこの物語はこういう話なのだ、と語られることがありません
これはキャラクターごとのストーリーも同様であり。全てが説明されることはなく、常にちりばめられた断片をつなぎ合わせ、そのバックグラウンドや心情を想定することになります。

この作品はそういう余白の残し方が尋常でなく上手いのです

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今でも鳥肌モノ

計算しつくされた余白は想像を生み、プレイヤーの頭の中で物語を完成させます。そうやって作られた物語はプレイヤーのオーダーメイドの、最も愛すべき物語となり。時として言葉を尽くして語られたものよりもずっと素晴らしい記憶として残ることがあります。

この作品の良さとはつまりそういう類のものです。

これは自ら行動し、頭を働かせる事で生じる楽しさです。そのため、マンガやアニメなどといった媒体では決して得ることができない、ゲームでしか表現しえない作品と言えると思います。

自分はゲームが大好きなので、こういうゲームでしかできないことをやろうとしている作品が大好きだったりします。

この作品の作者であるてつ 様の作ったゲームは全体的にそういう傾向が強く。出来れば全部紹介したいくらいなのですが今回は魔王物語物語だけにとどめておきます。

てつ 様のサイトであるカタテマには、これ以外にも
ゲーム外のファイルやウィンドウを利用したPCゲームならではのギミックが素晴らしい落ちモノ系パズルの『いりす症候群』や、
考察しがいのあるストーリーと素敵な音楽、他に類を見ないゲーム性のパズルシューティング『ムラサキ』など名作が沢山ありますので、ぜひ遊んでみてほしいと思います。

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いりす症候群

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いりす症候群 プレイ画面

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ムラサキ

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ムラサキ プレイ画面

番外編:NAROUファンタジー

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名前:NAROUファンタジー
作者:ウスバー 様
ジャンル:SRPG
リリース年:2017年
おススメ度:

時期的に大分離れてしまいますが、どうしても紹介したかったので追加で。

ゲーム実況の隆盛によって、動画映えするフリーゲームが流行りだした頃。ケータイ小説をきっかけとして素人が創作するという土壌が育ち始め『小説家になろう』というサイトが注目を浴びるようになっていました。
その時期の流行りはゲームの世界に入って無双する(異世界転移モノの一種です)というものでしたが、その流行りを逆手にとったコメディとして高い評価を得たのが『この世界がゲームだと俺だけが知っている(通称猫耳猫)』という小説でした。

この作品は張り巡らせた伏線を想定外の角度から拾い、読者の裏をかき続けるというスタイルで、今で言う『この素晴らしい世界に祝福を!』に近しいポジションで評価された作品です。

前置きが長くなりましたが、要するにこのゲームはその小説の作者の方が作ったゲームです。

内容的には、異世界に転移した主人公が強くてニューゲーム的な力で何度も蘇りながら絶望的な状況に立ち向かうという。割と良い方のなろうファンタジーといったノリなのですが。
実際にプレイしてみると、絶望的状況はマジで絶望的であり、何度も死に戻りを繰り返しながら状況を打破していくことになります。

それゆえに、初見殺しを全て回避し、死に戻りで得た圧倒的な力で俺Tueeeeするのは非常にカタルシスがあります。

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ステータスを引き継いで強くなる

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コミカルなストーリー

このゲームはそれだけでなく、何気ない普通の会話、フィールド上のテキスト、アイテムの内容まであらゆるところに伏線が張り巡らされており、終盤でそれが一気に回収されていく見事さは他に類を見ないものです。

表面上テンプレな内容をなぞりながらもトリッキーな解決策で読者を驚かせ、楽しませる作者様のスタイルがいかんなく発揮されたかなりの名作です。

今回紹介した他のフリゲーはフリゲー文化の文脈で語られることも多いですが、この作品は時代的にそう言うこともないので浮上しにくいです。もっとみんなに遊んでほしい。

おわりに

たまにフリーゲームという文化が廃れた、という言説を目にすることがありますが。
それはインディーズにもお金を出す文化・プラットフォームが定着したということであり、素人が作るゲームの量・クオリティは上がっているというのは、多少なりとインディーズに触れる人であれば肌で感じていることだと思います。
また、フリーで遊べるゲームの投稿サイトであるRPGアツマールなどを覗いて見ても、非常に高いクオリティのゲームが並んでおり。
フリーゲームという文化は目立たなくなったかもしれませんが、その精神は日本のインディーズ文化に引き継がれているのだと思っています。

とはいえ、たまにはこうやって面白かったゲームを懐古する時間があってもよいはずです。

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