プロローグ
「春休みどっか一ヶ月くらい旅行行こうぜ」
「どこ?」
「安いとこがいいよな」
「インド行きたくね?」
大学1年の11月になってもサークル探しをしていた僕と田中君は、またもや現役合格大学生のノリに敗れ、帰りの電車で自虐的トークを繰り広げていた。
「やっぱ俺らみたいな冷めた人間は無邪気なサークルのノリにはついてけないな」
「初対面の人間をニックネームで呼び合うなんてまじ理解できないよ」
「でもそんなことができる人間がこれからの大学生活では勝ち組になるんだろうな」
「サークルなんてくだらねぇよ」
「でも友達ほしいよな・・・」
大学1年の前半をサークル探しに費やし、これといった思い出がなかった僕と田中君はあせっていた。
なにかやらねば。
このままでは僕の大学生活1年目は空白の1年間として人生に刻まれてしまう。
そんなこんなで冒頭である。
とにかく「旅行をした」という実績を大学1年である間に残したかったのだ。
この有名な三島の言葉を知っていたわけではないが、僕らは『インド』という神秘的な響きに誘われ、春休みの旅行先を灼熱の国インドに決めたのであった・・・。
⇒ Chapter1「到着」へ
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