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東京理科大学 創域理工学部 物理 徹底対策

こんにちは、Uraと申します。
プロ家庭教師や予備校講師として活動している者です。

さて、本記事では、「東京理科大学 創域理工学部」を目指している受験生に向けて、物理の攻略法と対策法をどこよりも詳しく綴っていきます。

創域理工学部は「英語・数学・物理」の3科目で受験することができます(※)が、英語と数学については基礎的な問題を揃えた極めてオーソドックスな出題構成になっていて、言ってしまえば基礎力勝負です。基礎力が十分あるなら解ける、そうでないなら解けない、という単純な話です。

(※)理科1科目が「物理」「化学」「生物」のいずれかに指定されている学科、自由に選ぶことのできる学科があります。詳細は入試要項をご確認ください。

それに対して、物理はなかなかに特徴的で、基礎力はあるのに点数が思うように取れないということが往々にして起こります。つまり、同じ学力を持った受験生の間でも大きな差が出るのです。勝敗を分けるのは、創域理工学部に特化した対策をどれだけ講じるか、ということです。

そこで本記事では、「創域理工学部への合格を本気で目指しているが物理の点数が思うように伸びない」という受験生の方に向けて、大雑把な概要から細かいテクニックまで、創域理工学部の物理で合格点を取るためのすべてを約7000字に渡ってこれでもかと網羅していきます

本記事をお読みいただくことで創域理工学部の物理への突破口が鮮明に見えてくると思います。ぜひ最後までお読みください。



■試験概要

試験時間→80分
配点→100点(その他の科目(英語と数学)も100点満点(※数理科学科のみ数学が200点満点))
目標ライン→7割
問題構成→大問3題
大問ごとの配点→ほぼ均等(詳しくは後述)
解答形式→全問マーク


■出題分野の傾向

以下のパターンが多いです。

大問1 力学
大問2 電磁気学
大問3 波動or熱力学

■過去の出題分野

直近5年の出題分野と配点は以下の通りです。創域理工学部の入試は1年に2回ありますので、1回目を①、2回目を②としています。

2024①
力学 35点
電磁気 35点
波動 30点

2024②
力学 35点
電磁気 35点
波動 30点

2023①
力学 35点
電磁気 35点
熱力学 30点

2023②
力学 34点
電磁気 30点
熱力学 36点

2022①
力学 35点
電磁気 35点
波動 30点

2022②
力学 35点
電磁気 35点
熱力学 30点

2021①
力学 30点
電磁気 40点
熱力学 30点

2021②
力学 35点
電磁気 35点
波動 30点

2020①
力学 34点
電磁気 36点
原子 30点

2020②
力学 40点
電磁気 30点
熱力学 30点


■合格のための日々の勉強方針

◎力学と電磁気学をとにかく重点的に

力学と電磁気学は出ることがほとんど確定しているので何よりも重点的に勉強しましょう。

出ることがほぼ確定している「力学・電磁気学」、出るか出ないかわからない「波動・熱力学」、そして出ない可能性が高い「原子」をすべて同じ熱量で勉強するのは戦略的に正しくありません。

力学:電磁気学:波動:熱力学:原子=3:3:1:1:0.3

創域理工学部を第一志望に据えるのであれば、これくらいのバランスで勉強していくのがおすすめです。

「力学・電磁気学」と「波動・熱力学」の勉強バランスは併願校次第で調整していく必要があります(※)が、力学と電磁気学が最頻出という傾向は基本的にどの大学も同じです。最優先で徹底的に詰めていきます。

(※)具体的には例えば、理科大の理学部第一部のように大問4題構成の出題の場合、出題傾向は「力学・電磁気学」が確定、「波動・熱力学」がほぼ確定、波動か熱力学の代わりにたまに「原子」という感じので、「波動・熱力学」の勉強割合をもう少し増やすべきとなります。


◎次点で波動と熱力学を均等に

数年前の話です。創域理工学部は年に2回入試がありますが、

2021年度1回目「熱力学」2回目「波動」
2022年度1回目「波動」2回目「熱力学」

という流れを受けて、以下の戦術で入試に臨もうとする受験生が当時いました。

・波動か熱力学のどちらかだけを極めれば、それが出た方の試験に合格できる
・1回目の試験で波動が出たら2回目には熱力学が出るから、1回目の試験後には熱力学だけを勉強する

しかし、この戦術をあざ笑うかのように、

2023年度1回目「熱力学」2回目「熱力学」
2024年度1回目「波動」2回目「波動」

という出題が行われました。波動と熱力学のどちらかにヤマを張るのはリスキーです、均等に勉強しておきましょう。

◎原子は正直捨てるのも手

創域理工学部の入試において、直近で原子分野が出題されたのは2020年度入試です。

2023年度に原子分野の話を背景にした力学の問題が出題されましたが、原子のことを何も知らずとも力学の知識だけで解ける問題でした。

これを受けて「何年も出てないからそろそろ出る」と言うこともできる──万が一出たときに怖いので講師としては安全策としてこう言いたくなるのが正直な気持ち──のですが、私からは

出題される可能性が低いなら、合格の可能性を高めるためにはまずは他の分野の勉強に時間を回した方がよい

とお伝えしておきます。もっと踏み込んで申し上げると、学習状況によっては原子分野は捨てるのも手です。

学科に拘らなければ創域理工学部の受験チャンスは年に2回ありますが、その両方で原子が出題されるとは考えづらいからです。

国立大学の二次試験のような一発勝負において「捨てる」というのは怖いですが、乱れ打ちができる私立大学受験ならこのような戦略も取れます。

「学習状況によっては」というのは、具体的には、ほぼ確実に出る力学・電磁気学で合格ラインに達していないという状況などです。そのような状況では原子なんてやってる場合ではありません。

私たち講師は「限られた科目」を「多くの時間を使って」勉強すればよいので、出題頻度が低い単元であろうと時間を費やすことができます。

しかし、受験生の方は「多くの科目」を「限られた時間で」勉強しなくてはなりませんから、出題頻度の高い分野や単元から攻めていくべきです。

「やった方がいいこと」の前に「やるべきこと」をこなしていきましょう。

ちなみに、原子以外の分野で合格ラインが見えている受験生の方に向けて、原子の勉強時間の目安をお伝えしておきます。

私の指導経験からの肌感として、全くの0の状態から「個別指導2〜4時間+自宅学習5〜10時間」を確保すれば理科大レベルの原子は満点に近い点数が取れます。

大問3題構成の創域理工に特化するなら原子は捨てるのも手ですが、理科大 理学部第一部など、大問4題構成で出題してくるところの場合、原子分野の存在はなかなか無視できません。

最速で原子を仕上げたい方、次の記事からぜひご連絡ください。


◎過去問演習を十分に行う

難易度については、"条件や問われていることをしっかり理解できれば"基礎的な話に帰着できる問題が多いです。具体的には「良問の風」などのレベルが習得できていれば物理力としては問題なく戦えるレベルです。

けれども、問題文が長いせいで、その"条件や問われていることをしっかり理解できれば"という前提を作るのに苦労する受験生が少なくない印象です。過去問演習で点数が全然取れなかった生徒に、その問題の設定を2〜3分説明すると途端にすらすら解け出すということがよくあります。

私立理系受験生は国語を本格的には勉強しないので、長い文への耐性がない場合があります。したがって、十分すぎるくらいの過去問演習を行い、長文への慣れを養っていきましょう。

創域理工学部の過去問のほか、傾向が似ている「理科大 先進工学部」「理科大 工学部」「芝浦工業大学」の過去問にもぜひ取り組んでみてください。

理科大理学部第一部も傾向としては似ていますが、難易度が上がります。創域理工の物理で7割程度が取れるようになってからチャレンジするのがよいです。


◎おすすめの参考書や問題集

・初学用「宇宙一わかりやすい高校物理」

・基礎固め用「物理のエッセンス」

初学用にエッセンスを使うのは絶対にやめましょう。心折れること間違いなしです。

・問題演習用「良問の風」

同じシリーズでもう一段レベルが上がった「名問の森」という問題集がありますが、創域理工で合格点を取る上ではオーバーワークです。前述のように合格のためには長文の問題に慣れていく必要があるので、「良問の風」が仕上がったら過去問演習に進みましょう。

・過去問演習

過去問演習はやればやるほどよいので、メルカリなどを利用して過去の赤本も手に入れられるとベストです。

なお、創域理工学部は2023年4月に誕生していて、それ以前は名称が「理工学部」でした。過去の赤本を探す場合のご参考までに。

また、前述したように「理科大 先進工学部」「理科大 工学部」「芝浦工業大学」なども創域理工学部に挑む上で良い演習材料になります。取り組んでみましょう。


◎時には戻る勇気を

「基礎が大事」というのはどの科目でも言えることですが、物理についてはその傾向が特に強いと感じます。

先へ先へと進みたくなる気持ちはわかりますが、「宇宙一わかりやすい高校物理→物理のエッセンス→良問の風」とこなしたにも関わらず、過去問演習で思うように点数が伸びないようでしたら、思い切って「宇宙一わかりやすい高校物理」や「物理のエッセンス」まで戻ってみましょう

あの頃は「何となく」理解していた話や問題に、過去問演習という「ゴール地点」を経た上で改めて向き合ってみると、見え方や感じ方がきっと全然違うはずです。あの頃より腑に落ちることが増えていて、自分の成長も感じられることでしょう。

私は、教え子が例えば過去問演習でコンデンサーの問題がうまく解けなかったら、「宇宙一わかりやすい高校物理」と「物理のエッセンス」のコンデンサーの単元を宿題に出しています。

過去問演習は「解いて丸つけして終わり」では大した効果は見込めませんが、浮き彫りになった弱点の基礎問題に立ち返り、それを繰り返していくことで大きな成果につながります。時には戻る勇気を、ぜひ大事にしてください。

■1点でも多く取るためのあれこれ

◎必ず全問マークする

前述したように創域理工学部の物理の試験は全問マーク式解答です。試験終了5分前になったら解答途中でも一旦全問マークを済ませておきましょう。

解けなかった問題に対して、「10択なんて当たるわけがないから…」とマークをしない受験生の方をたまに見かけます。

しかし、10秒もかからずできて、たとえ数%であろうが得点のチャンスが生まれる行動を怠るのは「私は受かる気がありません」と言っているようなものです

本当に受かりたいと思っているならしっかり全問マークしましょう。この際、マーク番号で迷うのは時間の無駄なので、「全部1にマークする」といったマイルールを予め確立しておくとよいです。

なお、設問ごとに選択肢の数が違う(2〜11個ほど)ので、事前に決めておくマーク番号は4などではなく確実に存在する0か1にしておきましょう。


◎試験中の時間配分

上の「■過去の出題分野」で記載したように、大問ごとの配点は毎年微妙に変わりますが、おおよそ均等になっています。

したがって、時間配分も均等にしていきましょう。試験時間は80分なので、各大問に25分ずつ時間を使い、残りの5分で見直しや解けそうな大問に取り組みます。

◎大問の中の流れ

大問が3題であることはすでにお伝えした通りですが、各大問の中で2つ〜4つの小問に分かれています。

各大問で1つのテーマを扱い、小問(1)で簡単な例、小問(2)以降で徐々に複雑化や一般化をしていくという流れが多いです。各小問ごとに3〜8個ほど解答箇所があり、大問1題あたりで見ると10〜18問ほど答えることになります。

大問1題にかけられる時間は前述した通り25分ほどなので、1問にかけられる時間は1〜3分ほど。時間的にかなり厳しい戦いです。下の記事もご参考に、「"時間内で"点数を最大化する」という意識を強く持っておきましょう。


◎小問の途中で詰まってもその先が解けることがある

小問の中では話が繋がっていきますが、小問(1)の<エ><オ>が解けなくてもその先の<カ><キ>が解けるということがあります。小問の最後の方に瞬殺できる易問が転がっていることもあります。次の小問に移る前にその小問の最後までしっかり確認しておきましょう。

◎小問で詰まっても大問を諦めない

小問が切り替わるとほとんどまた1から話が始まるので、小問(1)が解けなかったからといって他の大問にいくのではなく、一旦小問(2)に進みましょう。

◎答えが出ても、正しくマークするまで気を抜かない

解答が全問マーク式になっていますが、意識したいのは「自分の出した解答を正しくマークする」ということです。

何を当たり前のことを…と思われたかもしれませんが、例えば自分の導いた答えが
$${v^2-\frac{2Mvv_2\cosθ_2}{m}+\frac{M^2v_2^2}{m^2}}$$
だとして、次の選択肢からパッとマークできますか?

2023年度入試問題より

「選択肢の数が多い」「選択肢同士が似ている」──これらが原因で、「正しい答えは出せているのにマークでミスをする」という受験生を見かけます。

もちろんリラックスした状態で時間をかければ正しくマークできるでしょうが、試験特有の緊張感と早く解くことを強いられるプレッシャーの中、「素早く正確にマークする」のは簡単なことではありません。

これに対してのアドバイスとして、私は間違っている選択肢にバツをつけて見やすくすることをおすすめしています。具体的な手順は次の通りです。

自分の出した答えが
$${v^2-\frac{2Mvv_2\cosθ_2}{m}+\frac{M^2v_2^2}{m^2}}$$
であるならば、まず冒頭が$${v^2}$$になっていない選択肢にバツ(赤線)をつけます。

次に、$${cosθ_2}$$が登場していない選択肢にバツ(青線)をつけます。

これで候補を2つに絞れていますので、ここから正しい解答を選ぶことはもう容易です。

このように、自分の解答に含まれていない文字がある選択肢を消していくことで素早く正確にマークすることができます。ぜひお試しください。

◎解く前に選択肢を見ておく

解く前に選択肢を見て使える文字を確認しましょう。例えば、答えの選択肢には重力加速度$${g}$$がないのに、計算の途中で消えそうにもなかったら何かしら勘違いをしているということに気づけます。

先に選択肢を確認していないと、自分なりの答えを出してから「あれ、選択肢にない」と時間のロスにつながってしまいます。

また、数式だけでなく正しいグラフを選ばせる問題もありますが、こちらは選択肢を先に見ることがより大事になってきます。

「グラフを描け」ではなく「正しいグラフを選べ」なので、何がわかれば正しいグラフを特定できるかを見極めると効率が良いからです。

例えば、次の選択肢をご覧ください。

2024年度入試問題より

この選択肢を先に見ておくと、例えば次のような切り口で攻めていけばよいと考えれらます。

(1)$${x=0}$$における$${V}$$の値→例えば$${V>0}$$なら⓪で確定
(2)$${V}$$の値の正負→例えば常に$${V>0}$$なら⓪か④まで絞れる
(3)原点対称なのか$${V}$$軸対称なのか→例えば原点対称なら②か③まで絞れる
(4)$${x≧0}$$について、$${V}$$は$${x=a}$$で最大値や最小値を取るのか→例えば最大値を取るなら②か④まで絞れる

実際、この問題は$${x=0}$$において$${V>0}$$でして、(1)で瞬殺でした。

正しいグラフを"描く"のではなく"選ぶだけ"ということ、そのためには選択肢同士で何が違うかを先に見ておく必要があること、ぜひ意識してください。

■まとめ

試験時間は80分
大問3題構成
大問1問あたりにかけられる時間は25分程度

大問3題の出題分野は「力学」「電磁気学」「波動 or 熱力学」のパターンが多い

日々の勉強は「力学・電磁気」を最も重点的に、次点で「波動・熱力学」

出ることがほぼ確定している「力学・電磁気」で合格ラインに達していないなら原子に手を出している場合ではない。「やった方がいいこと」の前に「やるべきこと」をこなしていく

基礎的な物理力が養えたら過去問演習へ。長文問題に適応していく

過去問演習で思うように点数が取れなかったら基礎的な地点に立ち返る勇気も大事

試験では必ず全問マークをすること。マークを怠るのは「私は受かる気がありません」と言っているようなもの。

最後までお読みいただきありがとうございました。本記事の内容を参考に、理科大 創域理工学部の合格をぜひ勝ち取ってきてください。

物理の日々の学習の仕方がよくわからず、成績が伸び悩んでいてお困りの方、下の記事から体験授業(オンラインであれば無料)も受け付けておりますのでぜひご連絡ください。ご相談だけでも大歓迎です。

あなたの受験がより良いものになることを心から祈っております。
それでは!

Ura

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