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大学受験を独学で戦おうとしているあなた様に宛てる勉強法──高校中退から独学で慶應理工に合格した講師が綴ります
こんにちは、Uraと申します。
予備校講師やプロ家庭教師として活動している者です。
私は体調不良が原因で高校一年生の終わり頃に中退し、療養期間を経た後、年齢的には高校三年生の4月から本格的に受験勉強を開始しました。
授業というものがあまり好きではなかったので独学で受験を戦い、2年弱の勉強を経て(年齢的には一浪で)慶應の理工学部に合格しました。
そんな私が、私と同じように大学受験を独学で戦おうとしているあなた様に宛てて、自身の受験経験と講師としての指導経験を踏まえ、勉強法について綴っていきます。
■勉強法を勉強し過ぎない──とりあえず走り出す
勉強法をご紹介する記事において初っ端にこれを申し上げるのは恐縮ですが、最初から効率の良い勉強法を求めすぎないでください。
「あの大学に受かりたい!」と思い立ったのであれば、まずは何でもいいから参考書を買って走り出しましょう。
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ググったらおすすめされていたもの、本屋で立ち読みしたら良さそうだったもの、本当になんでもいいです。その参考書にとりあえず取り組んでみてください。
たとえ効率の悪い勉強法であったとしても、前には進めます。効率のいい勉強法を探しているだけで勉強していない状態より、遥かに前進できます。
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また、勉強法の良し悪しというのは結局のところ実際に試してみないとわかりません。仮に脳科学的に理にかなった勉強法だとしても、人は一人一人個性がありますから、あなた様に合うとは必ずしも言いきれません。
したがって、大切にして欲しいのはとりあえず走るという姿勢です。走る前に走り方に固執しないでください。まずは走り出す。そして、走りながら走り方を学んでいく。そうすることで、あなた様の勉強法は徐々に最適化されていきます。
■一度ですべてを理解しようと思わない──全体を見てからの方が細部の理解が進む
のだめカンタービレという私が大好きな漫画の中に、些細なシーンでありながらも印象に残っているセリフがあります。
オペラの練習にて、最初から細かい指示を繰り返し、第一幕の第1場から一向に進まない演出家に対して主役の歌手が放った一言──
「一度前に進めてぼんやり全体を見せてくれた方が細かいことも理解しやすいんだから!」
これは受験勉強にもそのまま同じことが言えます。
かつて私もそうだったので気持ちはよくわかるのですが、参考書を進めていて、「今やっていることを完璧に理解してから次に進みたい」と思うこともあることでしょう。
それで問題なく先に進むのであれば全然よいのですが、目の前の単元で詰まってしまったときが大変です。勉強がストップしてしまう恐れがあります。
そこで、今やっていることを"完璧に"ではなく"ざっくりと"理解して次に進む、という進め方をおすすめしておきます。繰り返すことを前提に、まずは全体を見に行くことを目指すのです。
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この勉強法を勧める理由の一つは、前述のように理解しきれなくて詰まったときに挫折するのを防ぐためです。
しかし、実は利点はこれだけではありません。"ざっくりと"進めることを繰り返し一度全体を見終えると、各単元の見え方が変わってくるのです。
全体を見てからの方が各単元が理解しやすくなったり、その単元の必要性を体感できたりするので、取り組むモチベーションが確実に高まります。
物理の名著「新・物理入門」にも次のような記述があります。
物理学の学習においては、あまりにはじめの段階で過度に論理的厳密さにこだわって、にっちもさっちもいかなくなることは賢明なことではない
現実の問題に使うことによって概念や法則にある程度なじんで後に、あらためて基本的な問題にたちかえるというのが実践的である
最初見たときには「何でこんな公式を覚えなくてはならないんだ」と気が進まなかった話題が、全体を把握した上で改めて向き合ってみると、「この公式は使い道が多いからしっかり理解しないと!」と見え方や感じ方が変わるはずです。
十分な学力が身についた後には「一問にじっくり粘り強く向き合う姿勢」も思考力を磨いていくために必要ですが、特に初学や基礎固めの段階では「まずは全体を見に行く」ことを意識してみてください。
■「自分が集中できる場所」に長くいるようにする──家で集中できないのであれば外に出る
独学の場合、予備校や塾での授業を受けない分、自習の時間が長くなります。したがって、自習の環境がより大事になってくるわけですが、その一つの要素として「どこで」勉強するかが挙げられます。
とにもかくにも、「自分が集中できる場所」で勉強するようにしましょう。「家では勉強できない」タイプなのであれば外で勉強するべきです。
カフェなどで勉強することに対して否定的な意見を耳にすることがあるかもしれませんが、私としてはカフェが集中できるのであればそれで全然よいと思っています(もちろん節度は守った上で、ですけどね)。
最悪なのは、「家では勉強できないとわかっているのに家にいようとする」ことです。私も現在進行形で日々勉強中ですが、家では勉強できないタイプなので、図書館やカフェなど、必ず外に出るようにしています。
逆に、「家でしか勉強できない」のであれば用事が終わり次第すぐに家に帰るようにするべきです。
どこでの勉強が集中できるかは人それぞれで、それ自体に良し悪しはありません。「自分が集中できる場所」を把握して、そこに少しでも長く身を置くようにしましょう。
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ちなみに、予備校のように「授業を取れば自習室が使える」というシステムではなく、自習室のみを運営しているところもあります。
私も受験生時代にそのような自習室に通っていましたが、参考書を置きっぱなしにできるのが便利でした(都度持ち運ぶと結構重いですし)。
「有料自習室」「レンタル自習室」などで検索すると出てくると思います、ご興味のある方はぜひ調べてみてください。
■信頼できる人を見つけて「この人のアドバイスを最後まで信じる!」と決める──色々な人の意見に振り回されない
大学受験を独学で戦うのであれば、勉強は主に参考書や問題集を通して行うことになります。
となると、どの参考書を選ぶかというのが大事になりますが──
どの参考書がいいのかという意見は巷にたくさん溢れています。溢れすぎなくらいで、逆に混乱してしまっている受験生をよく見かけます。
学校の先生に勧めてもらった参考書を進めてきたが、SNSで予備校講師がその参考書を酷評していた──
別のに変えた方がいいのかな──
参考書には賛否がつきものです。どれだけ優れた参考書であっても、「(特に初学用のわかりやすさを重視したものに対して)説明が厳密には正しくない」「入試頻出問題をカバーしきれていない」「この解説では不十分」など粗探しはいくらでもできてしまいます。
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予備校講師の世界は競争が激しいこともあり、自分を持ち上げるために他を貶めるタイプが一定数います。また、長い時間をかけて限られた科目を勉強してきた講師の参考書に対する評価が、短い時間で多くの科目を勉強しなくてはならない受験生のそれと一致するとも限りません。否定的な意見に影響を受けすぎないでください。
このように、誰もが認める参考書というのはなかなかないのですが、参考書関連で一つ真理としてお伝えしたいのは、「浮気をするな、一途であれ」ということです。
色んな参考書に手を出すのではなく、1冊の参考書を何周もすることが大事なのです。
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この意見自体はよくあることですが、実践しきるのは意外と難しいです。前述の例のように、情報が溢れすぎているこのご時世、自分が取り組み始めた参考書を最後まで信じ切るのはそう簡単ではないからです。
したがって、参考書を選ぶ際には「その参考書を信じ切れる理由」が大事になってきます。「この人の言うことなら信じられる」という人を見つけ、その方のおすすめを選びましょう。
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先輩でも学校の先生でも教育系Youtuberでも、誰でも構いません、その方を最後まで信じ抜きましょう。大切なのは「ブレないこと」です。
「自分の信じる方を決める」ということに関して一点だけ私から注意喚起しておきたいことがあります。ご自身の受験体験のみを根拠にアドバイスをされている方には少し気をつけて欲しいということです。
というのも、入試の形式や内容というのはコロコロと変わっていて、その方が受験された時とは戦い方が全然違う場合があるからです。部分的に参考にするのは全然オッケーです(実際、非常にためになることを伝えている方もたくさんいます)が、全面的に参照すると痛い目にあいかねません。
ついこの間、noteのおすすめにたまたま流れてきた記事でこんなことが書かれていました。
大学入試の共通テスト「数学IA」では、選択問題は場合の数と整数を選ぶのがおすすめ!
この意見の妥当性は一旦置いておいて、そもそものお話として、本年度(2025年度)の試験では選択問題は存在しません。昨年度(2024年度)までは確かに選択問題がありましたが、新課程に移行した影響で選択問題がなくなったのです。
一応、本年度の受験生でも、浪人生は旧課程の試験──つまり選択問題がある方の試験──を受けることができますが、先の記事は高校生に向けて綴られていました。本年度の受験の形式が、ご自身の受験の形式と全く同じだと考えているのだと思われます。
その方に悪意があったとは思いません。私たちのように講師業に従事でもしていない限り、最新の入試情報など手に入れようとするわけがないからです。
しかし、今とは異なる一昔前の情報というのは、受験生の方にとっては紛らわしいことこの上ないと思います。したがって、「この人の言うことを信じる!」とするのは、入試の最新情報を踏まえた上でのアドバイスをされている方にしましょう。
■授業は受けずとも進捗管理は頼んだ方がよい──他者の目を取り入れることは大事
近年勢いを増している塾の一つに、「授業をしない塾」武田塾があります。
SNSでの広報に力を入れている印象で、その存在をご存知の受験生の方も多いでしょう。
私は武田塾と関わりがあるわけではないですが、「授業がなくても合格できる」という方針には共感するところが多いです。
中学入試や高校入試を「授業なし」で乗り切るのはかなり難しいですが、市販の参考書が充実している大学入試は「授業なし」で戦うことも十分に可能だからです。
ただし、それでも他者による進捗管理は取り入れた方がよいと思っています。
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具体的には、英単語などの単純な暗記物はテストがあった方がやる気が出ます。単に「1週間で100個覚える!」よりも「1週間で100個覚える!テストで9割以上取れないと先には進めない!」の方が「やらないとやばい」と思えるはずです。
このような確認テストは親御様やご友人に頼んでしてもらうこともできます。「英単語を1週間で100個」であれば、その100個からランダムに10個を紙に書き出してもらい、意味を言えるか確認するだけでも効果覿面です。
"ランダムに"というのがポイントです。単純な暗記ものは順番で覚えていることがあるからです。
例えば、「apple、りんご、book、本」の流れで覚えていて、「appleの意味は?」「りんご」「bookの意味は?」「本」と答えることはできるのに、単に「bookの意味は?」と問われたときに答えられないということがあります。
後者の問われ方で答えることができたらそれはもうあなた様の知識になった証です。上のような確認テストをしてもらうことで「本当に覚えているか」をチェックし、知識を着実に積み上げていきましょう。
また、プロに都度勉強方針を確認してもらうことで、「自分の勉強は間違っていない」という自信を持って迷いなく日々の勉強に取り組めます。前述の通り、情報塗れの今の受験の世界では、自分の勉強方針に自信を持ち続けるのも一苦労です。プロのお墨付きを得て迷いを払拭していきましょう。
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私は家庭教師として授業のご依頼を受け付けている他、「進捗管理コーチングプラン」もご提供しております。「授業は必要でないけど、勉強方針や進捗はチェックしてもらった方がやる気が出る」という方に向けてのプランです。詳細は次の記事にございます。
生徒様の性格や学力を踏まえ最適な学習計画をご提案し、その計画を実行しきれるように伴走してまいります。ご興味のある方は上の記事からぜひご連絡ください。
◾︎まとめ
勉強法を勉強し過ぎない──とりあえず走り出す
信頼できる人を見つけて「この人のアドバイスを最後まで信じる!」と決める──色々な人の意見に振り回されない
一度ですべてを理解しようと思わない──全体を見てからの方が細部の理解が進む
「自分が集中できる場所」に長くいるようにする──家で集中できないのであれば外に出る
授業は受けずとも進捗管理は頼んだ方がよい──他者の目を取り入れることが大事
あなたの受験結果がより良いものになることを心から祈っております。
それでは!
Ura