読書メモ: 日本料理の仕事大観
銀座 六雁の榎園豊治氏による日本料理の教科書です。料理書・レシピ本ではなく(そういう側面もありますが)、料理人を目指す人向けの指南本というのが正しいでしょうか。
料理本や関連書籍は多少読むとはいえ、あまり詳しいジャンルではないので断言はし難いのですが、これってすごい本ではないですか?
まずはその圧倒的なボリュームに驚きます。職人としての細かな技術がかなり精緻に文章化されており、これは単に「一流の職人」であるだけでは成しえず、技術に対してきわめて客観的・科学的な態度と知性が求められます。よければ下記のリンクから、本書の目次を一覧してみてください。
そうとうに細かな技術情報と、それを貫く仕事観がシームレスに統合されていて、仕事本かくあるべしという内容です。たとえば「いかに食材に無駄を出さないか」という信念や、クオリティコントロールに対するバランス感覚などが、ひとつひとつのTips、食材の部位ごとの性質に関する解説や再利用方法などときちんと結びついているため、「なぜその作業を行うべきなのか」が非常に腹落ちします。
紙資源の大いなる無駄であるゴミビジネス書の著者たちの後頭部をぐりぐり押さえつけて、顔面がページにめり込むまで読ませたいですよ。
おそらくこのようにロジカルに説明を受け実行するような修行の現場はかなり稀ではないでしょうか。そもそも職人の世界はその技術や精神を「言語化しない」ことで差別化をはかるような構造がまだまだあるでしょうに、この内容には敬服せざるを得ません。
グルメであればぜひ押さえておくべき一冊ではないでしょうか。
こんど六雁行ってみますわ。