読書メモ: マンガで教養 やさしいワイン
ワイン入門書はひと通り目を通したつもりでしたが「あれ、こんな本あったっけ?」と私のレーダーに引っかかっていなかったため古本で購入した一冊。
中身はイラスト多めの解説と、ぶどう品種ごとに10ページ程度の漫画が挟まれています。ターゲットは完全に若めの女性で、要するにぶどうの品種をイケメン男子に擬人化して乙女ゲーム風味にし、その特徴をおぼえようというコンセプトです。
あれ、これ「ワイン一年生」じゃん。
ワイン一年生は、私がワイン入門書の大半に目を通した中でも最もおすすめできる一冊で、ぶどうの擬人化というフックの秀逸さにとどまらず、エッセイ部分の書きぶりも初心者に寄り添った良書といえるでしょう。オタク文化を換骨奪胎しながらうまくワインと融合させ、万人受けする内容に仕上がってます。
「ワイン一年生」はどちらかというと萌えアニメ系の文脈を下敷きにしていて、私もあまり詳しくありませんがおそらく「ガールズ&パンツァー」や「艦隊これくしょん」などに着想を得ているであろうと思われるのに対し、「やさしいワイン」は前述の通り乙女ゲームのフォーマットに近いです。住み分けはできているとはいえ、このアイディアは丸かぶり。これはキナくさいぞと奥付を確認したら、ちょうどその横の参考文献に「ワイン一年生」が挙げられていました。
そもそも「マンガで教養」という実用書シリーズのなかの一冊という位置付けなので、企画優先という雰囲気は否めません。
評価はなんとも複雑というか、マンガ・イラストはフィール・ヤング系の偏差値45くらい、しかし擬人化のクオリティ(この葡萄は男だったらこういうタイプ)は意外と高めでわかりやすい、ワインの概説部分も過不足なくまとまっていて好感、しかし全体のコンセプトは節操ないくらい「ワイン一年生」の完全パクリ。
監修のワインエキスパートの方とイラスト・マンガ担当、編集の人とだれがどの部分までカバーしたのかわかりませんが、トータルとしてきわめて意識低い系だがワイン入門書としては悪くないという不思議な一冊で、もしかしたらお手軽教養本としては優秀なのかもしれないのでした。