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ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティーを取り戻す 要約と所感

本の情報

基本情報

本書の話題性

著者は数多くの著名なビジネス書を手掛けている山口 周 氏。山口さんはグロービス経営大学院でも教鞭をとられており、本書は卒業生向け特別クラスでテーマの一つとして取り上げられている。

本書の要点

①私達の社会は成熟し、ビジネスはその使命を終えつつある

社会は物質的な繁栄にあふれ、物質的に足りないものは無くなって来ている。そのため物質的な不満を解消するためのビジネスはその使命を終えつつある

②市場原理社会から、精神的報酬が重視される高原の社会へ

成長率の上昇が緩やかな降下へと変わり「高原」へ着陸しようとしている。高原の社会では金銭的な報酬よりも精神的な報酬が重視される

③労働の喜びが重視される社会にはベーシックインカムが必要

高原の社会で労働の喜びが重視されるためには、セーフティーネットとしてのベーシックインカムが重要である

要約

①私達の社会は成熟し、ビジネスはその使命を終えつつある

ビジネスはその使命を既に終えている。
ビジネスの使命で言えば松下幸之助の水道哲学「水道の水のように安価ですぐに手に入るものは、生産量や供給量が豊富であるという考えから、商品を大量に生産・供給することで価格を下げ、人々が水道の水のように容易に商品を手に入れられる社会を目指す」というものが思いつく。しかし私達の世界は、既に物質的な欲求は満たされている状態だ。
その証拠に全世界的に見ても成長率は停滞している。イノベーションが経済成長の限界を突破させるというのも幻想だ。実際、インターネットの普及でさえ成長率を押し上げることは出来なかったのだ。
また市場原理には限界があり、今のビジネスに流れを任すだけでは利益が少ない課題、例えば希少な病気などの問題を解決することは出来ない。

②市場原理社会から、精神的報酬が重視される高原の社会へ

では私たちの社会はどのような社会に向かえば良いのか。それは「人間性に根ざして働く社会」そして「生きるに値する社会だ」。たとえば、前述の希少な病気の例で言えば「これを解決しないまま置いておくことは出来ない!」といった人間的な衝動に突き動かされ、その解決のための仕事、行為自体が報酬となるような世界だ。
本書では、このような社会を「コンサマトリーな(働くという手段自体が働く目的となる)社会」と表現している。対して、現状の(今までの)社会を「インストルメンタルな(金銭のための手段として働く)社会」と、表現している。
コンサマトリーな社会では「辛い労働」という感覚は無くなり、人は自分がやりたいこと、得意なことを仕事とすることになる。そうすると、(好きなことをやるので)ゾーンに入りやすくなり、仕事の生産性も上がる。

③労働の喜びが重視される社会にはベーシックインカムが必要

高原の社会において、たとえば希少な病気を解決するための挑戦をするためには、結果がどうあったとしても生きていくことに困らないことが保障されていなければならない。その為には税金をあげなければならない。日本の税率は40%程度。対して北欧の国々は60%台が多い。しかし世界価値観調査の幸福度ランキングではランキング上位の国は押し並べて税率が高い国である。仕事が出来た人はそれだけ報酬が多くもらえ、出来なかった人は少ない。同じであったら不公平。その考え方も分かるが、仕事が出来た人も出来なかった人も安心して暮らせる社会を目指すべき。

所感

正直な所感としては「そんな社会ホントに来るのか?来たら・・・そりゃいいかもしれないけど」というのが正直な気持ちではある。
ベーシックインカムの基本的な考え方は良いと思う。生きていくに困らない社会。それは理想だ。
でも納得できないこともある。「嫌な仕事」や、「誰もやりたくない仕事」は必ず残る。「人より良い思いをしたい」という醜い感情だってある。
善悪の規範だって違う。人が「これは良いことだ」という衝動に突き動かされたものが、他の人には最悪の結果を引き起こすこともある。戦争は多分そうやって起こっている。戦争があれば軍人も必要だ。
話がとりとめもなくなってしまうが、「やりたい仕事」だけではバラつきが出てどうしようも無くなることが多いと思う。そうするとやはり報酬は金銭に頼らざるをえなくなるわけで・・・。
衝動に突き動かされた社会を良くするビジネスは絶対に必要だ。すべてをそちらにシフトすることは難しいと思う。だからこそ、そういったビジネスを優遇する仕組みを今の社会にインストールしていくことが必要なのではないかと思う。いわゆるソーシャルベンチャーといったものだ。そういったものが優遇される措置を拡充していくほうが現実的なのではと感じた。

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