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日々をめぐることば

うすぼんやりと霞がかった写真。
そのなかに、よくよく目をこらすとあらわれる文字。


『だいちょうことばめぐり』


今日読んでいた、朝吹真理子のエッセイ。


朝吹真理子さんは、以前トークイベントで拝見したことがある。そのとき、ことばをひとつひとつ、自分のうちから拾い上げてゆくように話すひとだな、と思ったことを覚えている。本書を読みながらゆっくりと文字をたどっていくと、その姿が重なってくるようだ。

うつくしい雲母に魅入って、その鉱石をそっと口に含んであじわった幼いころの記憶。
すこし遠い存在であった祖父と、ことば少なに交流したペントハウスでの時間。

読んでいると、思わず目を閉じてそのことばのなかにつつみこまれたくなる。そして、このひとの見ている世界をまぶたの裏に浮かべたいと思う。

過去にであったひと、季節の折々に感じたこと、口にしたもの。

日常のできごとが語られているのに、どこか物語を聞いているよう。ところどころに挟まれる陰影のやわらかい写真は、そうして語られる世界をそのまま浮かび上がらせたみたいだ。

こんな文章に出会えると、ほんとうに嬉しくなる。
今日はいい時間を過ごせた。


『だいちょうことばめぐり』朝吹真理子(河出書房新社)

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