読書記録|『ひかりごけ』
人の肉を喰らった者にしかあらわれない光の輪があるという。
それは、ひかりごけのように光を反射し、発光する。
その者に異端者のしるしを刻み付けるかのように。
実在の事件をもとにした表題作「ひかりごけ」は、食人というショッキングな主題が据えられていることにまず意識がいく。
でも、本当の意味での主題は、そこにはないのかもしれない。
船長は、同乗していた船員を喰らうことを決めたときも、食人の罪で裁判にかけられたときも"我慢して"いたという。
言うに事欠いて、“我慢している”とは。