2021年6月 読書日記(原文ママ)

最近は、やたらに図書館へ行く。過ぎ去ってしまった高校時代や、大学時代に読んだ本やら、作者のその後の著作やら求めて。

長いこと、吸血鬼に魅せられ、その考察や、果ては二次創作のようなものをすら、行ってきた。
高校時代に私にとって決定的な作品の一つとなったのが「血も心も」である。血液を奪うだけでは物足りない、貪欲な吸血鬼たちの登場するアンソロジー。久々に読んでも、その闇の魅惑は変わらなかった。
また、「一緒にいると疲れる人」(原題:Unholy Hunger)を読んで、私はやっと、母親に対する自分が何であったか、また、私に対する母親が何であったのか気づき、関係を見直さねばならないと思い至った。

また、柳 広司さんの「吾輩はシャーロックホームズである」を読み、作中の、精神錯乱の末に自分をシャーロックホームズだと思っている漱石=夏目に苦笑しつつ、自分も太宰の向こうを張っている以上、似たようなものではないかと考えた。
その後、柳作品にはまり、「シートン探偵動物記」や「最初の哲学者」などを読んだ。いづれにせよ、本歌取りの上手い作品であり、また、その本歌を知っている私からすれば、こんなに読みやすいものはなかった。シートンやシャーロックホームズは幼少期触れており、また、ギリシャ神話も私の脳みそにはおぼろげながら入っている。
夏目漱石は中学の頃、「草枕」に関心を持ち、「夢十夜」は愛読書で、何回も音読するほど気に入っている。また、大学時代は(ただ偏差値がちょうどよく、倫理の授業が得意だったという理由で)哲学を専攻している。

他にも、何かの折に調べてみたら、私の書く文と文体が似ているということで関心を持った、吉川英治も読んだ、確か題名は「玉堂琴士」とか言ったか。

他にも、読んだ本を上げれば、切りもない。
「ヒロインから読むアメリカ文学」では、次に読みたい本を見つけたし、劇団ひとりさんが書いている「影日向に咲く」や「そのノブは心の扉」も面白く読んだ。国木田独歩の「置き土産」なども、時間つぶしに読んだし、中でも私を惹きつけてやまないのはやはり、円城塔である。

大学時代、やはり梅雨のこの時期「道化師の蝶」を読んで以来、この作家の考える「文字とは、言葉とはそもそも何か」という問いに、私は「屍者の帝国」の中で、一つの大きな、重厚な答えに出会えたと思う。言葉そのものが真理であり、その言葉を通してしか私たちはこの世界を認識できないのだという、快感にも似た答えと、その答えへの壮大な「方程式」としての物語を読み終えた時、濃厚な味わいが脳内に広がったのを覚えている。

懐かしさと新しいものへの魅惑で一杯な、読書の旅である。
新しい作者開拓として、黒 史郎さんの「獣王」を読んだ。ラヴクラフト的、というべきなのか、あまりに異常な愛の世界、シュールレアリスムで自己犠牲的、また、常軌を逸した世界にぐいぐいと引き込まれ、一晩で読んでしまった。

懐かしいものとしては、高校時代の夏休みに読むともなく読んだ宮部みゆきさんの「ICO」を読み直している。ICOは、ゲームを原作としている。ICOはやったことがないが、その次作となる「ワンダと巨像」はやったことがあるという意味では、この作品は私の青春である。

以上が、ここ一か月の大体の私の読書生活だ。
もしも読んでみたければ、読んでみたなら色々な経験を得ると思う。

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