ゲーム制作者にもおすすめ『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』宇田川 元一
この本を薦める理由
ゲーム開発者として働いていると、「なぜこの提案が通らないのか?」「なぜ上司は意味不明な反対をするのか?」「なぜまともに対話できないのか?」「論理的に説明してもなぜ動いてくれないのか?」「なぜ非合理的な組織やワークフローで作業しているのか?」といった疑問やフラストレーションを感じることがよくある。こうした疑問やストレスを抱えていたとき、この本を読んで納得できる部分が多かった。だからこそ、同じような悩みを抱えているゲーム制作者にもぜひ読んでほしい。
本書の概要
『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』は、組織における複雑で解決が難しい問題に対して、対話を通じて新しい関係性を築くことの重要性を説いている。著者の宇田川元一氏は、技術的な問題と適応課題の違いを明確にし、適応課題に対処するための具体的な方法を示している。
技術的な問題と適応課題の違い
技術的な問題: 既存の方法や技術で解決可能な問題。例えば、システムのバグ修正や手順の見直しなど。
適応課題: 既存の方法や一方的なアプローチでは解決できない複雑な問題。例えば、組織文化の変革や価値観の違いに基づく対立など。
対話の重要性
適応課題に向き合うためには、単なる問題解決の技術ではなく、対話を通じて新しい関係性を構築することが必要。対話によって相手の状況やナラティブ(物語、背景)を理解し、共通の土台を築くことが求められる。
対話のプロセス
対話を通じて適応課題に対処するためのプロセスは以下の通り:
準備: 相手とのナラティブの違いに気付き、その違いを認める。相手を問題のある存在としてではなく、別のナラティブの中で意味のある存在として理解する。
観察: 相手の状況やプレッシャー、責任などを理解し、相手のナラティブを探る。例えば、上司がなぜ提案に対して保留したり拒否したりするのか、その背景を理解する。
解釈: 溝を越えて橋を架ける方法を探る。自分の提案が相手にとって意味のあるものとして受け入れられるためのポイントを見つける。例えば、相手の状況に合わせた提案を考える。
実行: 実際に行動し、新しい関係性を築く。うまくいかない箇所があれば、観察を続けて調整し、適応する。
具体的な例
例えば、新しいプロジェクトを提案する際に、上司がその提案を受け入れない場合がある。この場合、上司のナラティブを理解することが必要。上司が過去に似たプロジェクトで失敗した経験があるかもしれないし、現在の業務負荷が高すぎるかもしれない。これを理解した上で、上司の状況に合わせた提案を考え、上司が納得できる形で新しい関係性を築くことが重要。
抑圧型と回避型の適応課題
抑圧型: 問題を認識していても言いたいことが言えない状態。この場合、自分のナラティブだけで正論を言っても効果がない。相手の立場に立ち、共通の正論を作ることが必要。
回避型: 問題から逃げたりすり替えたりする行動。この場合、問題の本質を見極め、適切な対話を通じて解決策を見つけることが重要。
まとめ
組織において、技術的な問題と適応課題を区別し、適応課題に対処するためには対話と関係性の構築が必要。相手のナラティブを理解し、新しい関係性を築くことで、複雑な問題に対処できるようになる。このプロセスを通じて、組織全体がより効果的に機能し、持続的な成長が可能となる。