差添いのツバメ
そのツバメだけが、ずっと軒下の巣に収まっていた。
下に落ちるフンの掃除係に任命されていた僕は、早く巣立てよな、と思っていた。親ツバメも心なしか心配しているように見える。
巣にパンパンに収まりながら、いつまでもグズグズしているツバメ。まるで僕を見ているようで嫌な気持ちになる。僕の親もウロウロしては、あの親ツバメと同じ目をしているから。
「……でも、おまえは飛ばなきゃ置いて行かれちゃうんだぞ」
呟いた言葉が自分に刺さる。僕もきっと、置いて行かれてる。そうだよな。飛べ、進めって言われるだけで、追いつき方なんて誰も教えてやくれないんだもんな。
ある日の朝、巣を見上げると、そこには誰もいなかった。見ると、家の前の電線に子ツバメらしきツバメが留まっている。おまえ、とうとう飛べたのか。
目が合った気がした。その瞬間、ツバメは飛んだ。何だよ。何だか、僕が応援されていたみたいじゃないか。
僕は今日から、新しい学校へ行く。
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