電話口の「元気?」 に答えられない
「元気にしてる?」
親に電話をするときに言われるこの言葉に、「元気だよ」と答えることが辛いと感じ始めてから、どれくらいが経っただろう。
その結果、わたしはしばらく親と連絡が取り合えていない。「元気だよ」の一言が出せなくなって、もう三、四ヶ月ほど経ってしまった。
「便りがないのが元気の印」
そう言ったのは、息子を持つ母方の祖父母と、夫の母だ。両方とも、息子からは何の連絡も来ないのだと言っている。それでも、それが「健康の印」で「元気の証拠」。それほど心配をすることもないらしい。
ただ、そういうケースばかりでもないものだなあ、と自分自身を省みて思っている。基本的に毎週電話をかけていた頃と違い、今はメールの返信すらおぼつかない。幸い、母は「仕事で忙しい」と思ってくれているようなのだけれど。
唯一、妹にはちらりと話を通してあるから、彼女がうまく言ってくれているのだろう。まったく、大人になっても面倒な姉で申し訳ない。
* * *
「大丈夫だよ」「元気だよ」
と言うことは容易い。大丈夫なふりをすることも、また。親にも周りにも、「大丈夫だよ」「元気元気」という顔をして生きてきた。だからなのか、ふいに現われる「大丈夫じゃないよ」に気づいてしまう人には、昔からとても弱い。
「いや、しんどいわー(笑)」のように、語尾に(笑)をつけた口調でしか「大丈夫じゃない」ことを伝えられない。……というような内容の話を先日聞いて、同じだ、と思った。
本当に“大丈夫じゃない”ときほど、「大丈夫じゃない」と言えなくなる。だからこそ、“まだ一応大丈夫、だけど辛い”というレベルでSOSを発せられるようになった方がいいのかもしれない。
……なんてことを思ってはいるのだけれど、きっとわたしはまた反射的に答えてしまうのだろう。
「え、全然大丈夫だよ?」