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卯岡若菜
2018年9月27日 17:30
あの夏も暑かっただろうに、なぜだかうまく思い出せない。思い出せるのは、目が眩むような日差しと思考を奪う蝉の鳴き声。感情を浮遊させていた葬祭会場のしんとした空気と、指先の冷たさだ。 ほとんど話したことがないクラスメイトが亡くなった。「嘘やと思った」と別のクラスメイトが言う。嘘だとしたらタチが悪すぎるけれど、嘘の方が良かった。 同じ教室で数ヶ月過ごしただけなのに、訃報を受けてから、彼と交わし