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「翼を掴まれた悪魔」
大変ごぶさたしておりますが、あらゆることに多忙を極め、どうにもならない体です。
書くことが息をするように不可欠な間抜けな物書き崩れにとって、かくも長き己の不在は苦痛以外にありません。
まだ当分収まる兆しもなく、中間報告のような呟きになります。
今日、漫画作家、映画監督の石井隆の訃報に接しました。
僕は中学時代、名古屋の池下の実家から近い今池にたむろしていました。
今はなき、名古屋では比べる店がない人文書店 (国内でも際立った店だと思う)のウニタ書店で、石井隆のハードコアバイオレンスな漫画を立ち読みして衝撃を受けました。
石井隆は「名美」という名前の女性をモチーフに様々な作品を描きました。
僕が読んだ漫画もそれがタイトルだった気がしますが、時に被害者、加害者、魔性の女など全く共通性のないキャラクターでずっと描かれ続けました。
記憶にあるのは、スパイか犯罪者の名美が
敵とおぼしき男に膣に銃を挿される緊迫したシーンで、ハードボイルドの極北を13歳にして突き付けられたのです。
僕自身は暴力的な作品は決して得意ではないですが、他に類する作家がいないほどの過剰さに毒気を抜かれたのかもしれません。
今のポリコレ社会では、彼の作品は許容してはもらえないでしょう。
僕の持っている彼の作品「魔楽」は、人には見せられないほど暴力的で反社会的な作品です。
持っているだけで罪悪感を覚えるほど酷い作品なんて、この世にそうそうありません。
ハードボイルドとバイオレンスとエロスが渾然一体となった精神の人外魔境、それが石井隆でした。
メジャーな映画では「GONIN」が今でも見やすいですが、バイオレンスなストーリーはさすがかと思います。
北野武の殺し屋は、北野本人での作品を超える冷血さが忘れ難い。
彼はぎりぎりのタイミングで世を去りました。
この先生きていても、その翼はもがれてしまうでしょう。
今、翼を掴まれてばたついている自分は、そんなことを思いました。
悪魔の魂よ、安らかに…は、似合わない。
煉獄の業火に焼かれるのが、彼の本望かもしれません。