第31回 災害用トイレの必要数は、し尿発生量がカギ
みなさん、こんにちは。
毎週月曜日に更新するトイレの連載です。
今年もよろしくお願いします。
けあらし
昨年末に、北陸の海でけあらしを見ました(たぶん、これけあらしですよね?)。大気の温度より海水の温度が高いときに起こる現象で、蒸気霧のことのようです。
自然現象を現場で見ることの素晴らしさを体験したわけですが、そういえば、災害も自然現象がもたらすことですよね。
もう少し丁寧に言うと、自然現象によって社会がダメージを受けることが災害です。
自然現象を起こらないようにすることは無理ですので、私たちができることは、被害を少なくするために日頃から備えることのみです。
ということで、今年も見過ごされがちなトイレの備えをよろしくお願いいたします。
災害用トイレの必要数は、し尿発生量がカギ
さて、今回のテーマは「災害用トイレの必要数は、し尿発生量がカギ」です。
災害時のトイレは、屋内対策と屋外対策があるのですが、今回は屋外に設置する仮設トイレの話をします。
必要数の考え方は2通り
災害用トイレの必要数の考え方は大きく分けて2通りあります。
1つ目は、トイレ待ち時間を考慮した必要数です。トイレの数が少ないとトイレ待ち時間が長くなり、トイレを待つ長蛇の列が出来てしまいます。
2つ目は、し尿発生量を考慮した必要数です。こちらに関しては、仮設トイレに代表されるように便槽に貯留するタイプが関係します。
災害時は断水や排水設備の損傷により下水道が使用できない可能性があります。その場合、し尿を貯留することが求められます。
し尿発生量から算定してみる
ここでは、後者のし尿発生量の考え方を説明します。
1人1回あたりの排尿量は個人差がありますが、正常で150~200ml以上と言われています。
例えば避難者500人の避難所で、すべての人が仮設トイレを使用する場合、1人が1日にトイレに行く回数を5回(本来は一人ひとり異なりますが、ここでは目安)、1回あたりの排尿量を200ml(同様に目安)に仮定すると、くみ取りをせずに3日間使用し続けられるようにするには、仮設トイレの便槽貯留量が450Lであれば10棟、便槽貯留量350Lだと13棟必要になります。
計算式の例
避難者数500人×トイレ回数5回×(排尿量200ml+洗浄水量400ml)×3日間=4,500L
4,500L÷450L=10棟
※最近の仮設トイレは簡易水洗タイプのものが多いので、1回あたりの洗浄水量を約200mlとして、2回流すことを想定しています。上手く流れないともっと流しますよね。。。なお、便槽にトイレットペーパーを投入した場合、さらに早く便槽が満杯になることが推測されます。
災害時は、すぐにバキュームカーが来てくれるとは限りませんので、貯留量から考えることが大事だと思います。
ただし、この計算には、トイレ待ち時間や性別等を考慮していません。
トイレの利用時間から考えてみる
仮に1人あたりトイレの使用に3分を要した場合、1時間に使用できるのは1棟あたり20人で、10棟あったとしても200人しか使用できません。
ですので、前回の記事「第30回 災害時のトイレの備えはこれだ!」で紹介したように、主に屋内で使用する携帯トイレや簡易トイレ、屋外で使用するマンホールトイレや仮設トイレなど、様々な災害用トイレを組み合わせることが数量確保という視点においても必要です。
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