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2024年6月13日 うれしい背中

夏至間近だからか、朝がとても早く、そしてひどく明るいですね。
いつもよりずっと早く目が覚めるようになってしまいました。
もぎたてのレモンのような明るい黄色の光が
部屋に差し込んでくるので、
数時間早く目が覚めてしまうのです。
今日など、空を薄い雲が覆っているのにこの明るさです。
日毎、暑さも増してきて、
季節の移り変わりを感じます。
家の中で追熟している梅が、完熟に近づいてきたようで
梅の甘く爽やかな香りが部屋に満ちています。
生の梅の香りはお香の梅の香りは当然ですが、
梅酒の香りとも一線を画す
芳醇なもので、うっとりするような良い香りです。
この香りも梅しごとの醍醐味のひとつかもしれません。
梅が痛んでしまう前、この週末には、梅しごとにとりかかる必要がありそうです。
梅を洗って、下手をとって、と
考えながら、通勤しているとお散歩中の
犬と出会いました。
おそらく、ジャックラッセルテリアと言われる犬種です。
小柄で、白いくるくるとした巻き毛に、ところどころ、赤茶色の模様が入っています。
ジャックラッセルテリアは運動量の高い犬だと聞きますから、とほとほと歩いている様子を見ると、
少しばかり年齢を重ねているのかもしれません。
隣のご主人を引っ張ることはなく、程よい速さで、歩いています。
歩いていると言っても、散歩が楽しいのでしょう。
ゆっくりとはいえ、少し、弾むような足取りです。
身体が上下するたびに、尻尾もぴょんぴょんとはねます。
尻尾は白く、尻尾の根元のあたりは赤茶色でした。
白い尻尾がはね、巻毛を震わせながら、
ジャックラッセルテリアは歩いています。
リズミカルな尻尾、楽しげな巻き毛、軽い足取り、
正面に回って顔を確認せずとも、
楽しいのだろうということはよくわかります。
うれしさが満ち溢れた後ろ姿なのです。
楽しげに歩きつつ、
電柱の根元に鼻を埋め、匂いを味わったり、
少しだけ鼻をあげて、空気の匂いを嗅いだりしています。
散歩を満喫しているようです。
うれしい背中です。
生きていること、
ここにあることを全力で楽しんでいる様子に、
ひどく感心しました。
うれしい背中、楽しく過ごしているということは、言葉がなくても、わかるものなのです。
人間はあれやこれやとごちゃごちゃ考えてしまうので、
これほどうれしい背中をすることはなかなかできません。
そして、その分を言葉で埋めようとしますが、その言葉が足りなかったり、多すぎたりして、まっすぐ届かないこともあります。
たまには、ああいうまっすぐなうれしさの表現をしてみたいものです。
満ち溢れる喜びを背中で表現する、ということは、
現実では大人はなかなかやれません。
でも、あれこそが、「生きている」という喜びであるように感じました。
死んでしまったら出来ないこと、
感じ得ないこと、
伝えられないことです。
生きているとはどういうことか、と
誰かに問われたら、
散歩しているジャックラッセルテリアであることとすら、言えそうです。

毎日は難しくても、
1ヶ月に一回くらいは、ああいう気持ちになれるとよいとも思いました。

そんなことを考えていると、
目の前を金からピンクのグラデーションのロングヘアーの
若い女性が自転車で走って行きます。
綺麗なカラーリングではなく
濃淡のムラがあるのですが、
それさえも、いいと思えてしまう
金からピンクの美しい髪色でした。
朝焼けのようでもあり、花のようでもあります。

彼女が楽しい朝を迎えてるかを知る由はありませんでしたが
見ているものとしては、
元気をもらいました。
朝の爽やかな風に、金とピンクが混じり合った髪がたなびく様子も
うれしい背中だ、と感じます。
意外な美しさ、考えもつかなかった色の取り合わせ、
生き生きとした雰囲気からでしょうか。

自分の後ろ姿は、自分では見えないものです。
今、自分はうれしい背中をしているでしょうか。
自分自身が嬉しく楽しいというだけでなく、
人から見た時に、何故か、妙に元気になるようなそういう何かがあるでしょうか。
背筋がピンと伸びているとか
姿勢がいいとかそういったことだけでない、「うれしい」があるのだと思います。
数量化できない何か、
生きているものだけが発している何か、
曰く言い難いもの、です。
いつかそれも解明される日が来るのでしょうか。
そうしたら、「うれしい」もアクセサリーのようにつけたり、はずしたりが
できるようになるのかもしれません。

でも、今のところは、日々をできるだけ楽しく
心地よく過ごすことしか
うれしい背中になる方法はないのだろう、と思い直します。

家に梅の香りが満ちていること、
ミニトマトが色づき始めたこと、
落ち着いた体調で過ごせてること、
美味しいものを食べたこと、
うれしい背中の犬や女性を見たこと。
日々の中でそういうちょっとしたうれしいを探して
集めて、繋いでいくことで
自分自身も時には、誰かのうれしい背中になれればよいと思います。

たとえ、有名でなくとも、立派でなくとも
人に影響を与えることはあるのです。

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千歳緑/code
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